事業承継について

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事業承継について

「事業承継」は遺産相続を考えている経営者にとって、避けては通れないテーマです。これまで守ってきた会社や店舗を次の世代へとつなぐには、多くの課題を解決する必要があります。
事業の承継や後継者について遺言に明記する場合、事業承継の際にトラブルが起きないように、公証人に作成・保管を委ねる公正証書遺言を活用するのが望ましいと考えられます。公正証書遺言であれば紛失や改ざんの可能性がないだけでなく、公正証書遺言以外の遺言(おもに自筆証書遺言)の場合に求められる「家庭裁判所による検認の手続き」も不要なので、移転登記や預金の払い出しなどの手続きをスムーズに進められます。

事業承継を始める前に

遺言による事業承継を行おうとするとき、最初にしておかなければならないのは、後継者候補の意思確認でしょう。経営者本人が「○○に後を継いでほしい」と考えていても、当人にやる気がなければ、事業の承継が頓挫してしまいます。
わが国で圧倒的に多い中小企業および個人事業主の場合、設立の際の金融機関からの借り入れに対して、経営者(代表者)自らが連帯保証人になっていたり、保有する土地・建物を担保に入れていたりするため、事業承継の問題と、親族を含めた相続の問題を同時にクリアする必要があることも多いはずです。
そのため、経営者本人が所有している財産や、会社の資産および従業員、取引先の企業との取引状況について、分かっているつもりでも、間違いがないか、もう一度正確に把握しておく必要があります。特に、中小企業の事業承継は、親族内承継が大多数を占めるのが現状です。承継問題と相続問題という2つの大きな課題を解決し、後でトラブルを招かないためにも、事前の準備がなによりも大切だといえるでしょう。

事業承継計画書

企業の事業承継対策は、ある程度の長いスパンで計画を立てて行うべきものです。どんなに優秀な経営者でも、高齢になればビジネスの判断力が鈍ってきますし、健康問題も起きてきます。そうしたときに事業承継対策をしていないと、事業が不安定になり、スムーズな事業の承継が困難となってしまいます。

事業承継がうまく進まない中小企業の例

  • 事業承継の準備をしないまま、加齢によって経営者が体調を崩してしまった

→慌てて後継者をさがしたが、適当な候補者を育成していなかった!

  • 高齢の会長が実権を握って社長への経営移譲が進まない

→社長もすでに60歳を超えているが、株式保有率も低くて後継者さがしどころではない!

  • 後継者に事業用資産の集中ができなかった

→遺言が作成されておらず、後継者である長男が事業用資産のすべてを相続できなかった!

このようなことにならないためにも、差し迫った状況になってから慌てるのではなく、数年~十数年先を見越して事業承継の準備を進めましょう。

事業承継のために大事な3つの項目

1.会社の現状把握・分析
→事業承継計画を立案するにあたっては、最初に会社を取り巻く状況を正確に把握することが必要です。会社の経営資源の状況、会社の経営リスクの状況、経営者自身の状況、後継者候補の状況、相続のときに予想される問題点などを正しく認識してください。

2.引き継ぎ計画
→いくら優秀な後継者を育成していても、ある日突然事業を引き継がせるなどということは、アクシデントでもない限りあり得ないことです。従業員はもちろん、取引先企業の理解も得なければなりません。引き継ぎ計画は周到に立てていくことです。

3.事業承継計画書を作成する
→事業承継計画とは、中長期の経営計画に、事業承継の時期や具体的な対策を盛り込んだものです。現在の状況から2年目、3年目……10年目と、いつ何をするのかを、計画書に書き入れていきます。

株式や財産の分配、生前贈与

人はいつどこで何があるか分かりません。いくら周到な計画を立てていても、事業の承継に望ましくないタイミングで経営者に万一のことがあったらどうなるでしょう。財産は残された親族が相続することになります。そのようなとき、会社運営に必要な事業用資産を複数の相続人に分配しなければならなくなったら、会社の経営に悪影響を及ぼしてしまいます。

そうならないためにも、株式等事業用資産は、後継者および友好的な株主へ相当数を集中させるのが望ましいといえます。その具体的な方法は、下記の通りです。

1.生前贈与制度の活用

生前贈与とは、生存する個人から財産を無償で他の者に分け与えることです。財産を与える人のことを贈与者、財産を受け取る人のことを受贈者といいます。存命中に相続を行うことができるため、確実に資産の集中を進められます。
ただし、生前贈与をすると、その贈与財産は原則として贈与税の対象になります。課税制度は「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2種から選べます。財産の構成や相続人の状況によって、どちらを選ぶ方が有利なのかを把握することが大事です。

  • 「暦年課税制度」

暦による1年の区切り(1月1日~12月31日)ごとに、その暦年中に贈与された財産の価格の合計に対して課税される制度のこと。年間110万円以下の場合には、贈与税は掛かりません。

  • 「相続時精算課税制度」

贈与者(親)から受贈者(子)への贈与で、贈与の際に通常よりも軽減された贈与税を納付し、相続の時に相続税で精算する制度のこと。この制度は、65歳以上(贈与した年の1月1日時点での年齢を基準とします)の親から子への贈与に限られます。

さらに、贈与財産が不動産の場合には、登録免許税と不動産取得税がかかります。

2.遺言書の活用

事業用資産を後継者である親族に集中させることを遺言書に明記して、遺産分割協議によって複数の相続人に資産が分散することを防ぎます。とはいえ、遺留分(遺族の法定相続人としての権利や利益を守るために、遺族が相続できる最低限度の相続分)については注意しなければなりません。

3.会社法の活用

会社法(旧商法)に定められた以下の制度を活用するのも、資産を後継者に集中させるのに有効な手段です。

  • 相続人などに対する売り渡し請求

会社法では、相続などで譲渡制限株式を取得した者に対して、株式会社がその株式の売り渡しを請求できます。相続による株式の分散を防ぎ、中小企業の円滑な事業承継のために設けられた制度です。

  • 議決制限株式

相続が起こる前に、後継者以外の相続人に相続させる株式を議決制限株式に変えておくことで、望ましくない人に対する株式の譲渡および売却を防げます。

  • 「黄金株」と呼ばれる拒否権付き種類株式

会社法では、当該種類株主総会の議決がなければ効力が生じない「黄金株」と呼ばれる拒否権付き種類株式の発行が認められています。この黄金株を後継者に取得させることにより、経営権を維持させることが考えられます。

このように、会社法では中小企業の事業承継に活用できるいくつかの制度が設けられています。ただし、実情に照らし合わせたときの弊害も指摘されているので、詳しいことは弁護士などの専門家に相談しながら検討するようにしてください。