不動産の相続登記トラブル

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不動産の相続登記

相続財産の中に含まれていることが非常に多いのが「不動産」ですが、不動産は名義を持っている人が亡くなったらそれを相続する人に名義の書き換え(相続登記)をすることになります。
相続登記には期限がないのですが、それだけに手続きを放置してしまう家庭も多く、未登記だったことが原因でさまざまなトラブルを引き起こすこともあります。


相続登記をしないとどうなる?

たとえば被相続人が死亡してから10年以上相続登記をしないで放置している事例も見られますが、具体的には次のような不都合が生じてきます。

相続人が死亡してさらに相続が発生する

たとえばまだ相続人が2人か3人という段階で遺産分割協議と相続登記をしていれば手間も費用も最小限で済んだものの、子供のうち1人が死亡した場合はそのまた子供(被相続人から見て孫)が全員、遺産分割協議に加わらなければならなくなります。
つまり、最初は2人で話し合うべきだったものが3人、4人(あるいはもっと多いことも)に増えてしまうこともあるのです。その中で1人でも反対者がいれば遺産分割協議自体が成立しないため相続登記をすることができなくなります。
もし遺産分割協議がどうしても成立しなければその先の段階としては弁護士を立てて、家庭裁判所に調停などを申し立てるしかありません。
数年に渡り調停、そして裁判まで行ってようやく決着を見ることもあります。

相続人の中に「認知症」を発症する人が出てくる

さらに深刻なのは相続人のうち1人が認知症などで判断能力がなくなった場合です。この場合、「成年後見人」を選任した上でその人が代理で遺産分割協議を行うか、認知症の本人が死亡した後にその相続人が遺産分割協議を行うしかなくなってしまいます。
認知症の人の子供が無条件に遺産分割協議を代理できると誤解している人もいますが、親が未成年の子供の法定代理人になれるのとは異なり、子供の場合は親の成年後見人にならない限りは当然に代理することはできません。
しかも認知症の本人と成年後見人が共に相続人である場合、双方の利益がぶつかり合うことになってしまうため、さらに(成年後見人がいることを前提として)遺産分割協議のための「特別代理人」を選任しなければならないのです。

相続登記をしないと売却できない

被相続人の名義のままになっている不動産は、たとえ第三者に売却したくてもそのままの状態では売ることができません。必ず名義を相続人の全員または誰かの名義に変えていなければ売買の「売主」になることはできないのです。
これは、その物件を担保に入れて銀行などから借金をしたい場合も同じことです。
あまり知識を持たない不動産業者が間に入っていると、まだ相続登記が終わっていないのに買主と売買契約書を交わしてしまうこともありますが、これは非常に危険です。
必ず遺産分割協議が完了し、できれば相続登記まで済ませてから売買契約を行わなくてはなりません。

昔の抵当権などの存在に気がつかない

これも実務的に結構多いケースですが、所有権の相続登記が数十年放置されていると同時に、旧所有者が誰かにお金を借りて不動産を担保に入れていたが、当時つけられていた抵当権が消されていないというものです。

これは、所有者側に相続が発生しているのみならず、抵当権者側にも相続が発生しているためなおさら話がややこしくなります。
このような場合、依頼者は所有者の相続人であるわけですが、亡くなった抵当権者の相続人も探さなければならないこととなり、誰が当事者なのかを特定するだけでもひと苦労です。そして相続人を特定することができたとしてもその人が状況の調査や抵当権抹消登記に協力してくれないことも考えられますので、最終的には訴訟などに持ち込まれることもあります。
あと数十年早くすべての手続きをしていれば数万円程度の出費で済んだものが、弁護士報酬などの訴訟費用を入れて100万円、200万円といった出費になってしまうこともあるのです。

物件の特定が難しくなることもある

相続発生から長期間が経過してしまった場合、物件そのものがどれだったかということ自体、曖昧になってしまうこともあります。

被相続人の名義になっていた物件を特定する場合、通常は被相続人の遺した権利証や登記簿謄本、そして市区町村で取得する固定資産税評価証明書などを手がかりにします。
また、登記簿のいわゆる「乙区(抵当権などが登記される場所)」の後ろについている「共同担保目録」から小さな物件を特定できることもあります。共同担保目録とはその抵当権が担保に入れている物件を一覧にしたものですが、登記簿を取得する際に「共同担保目録付で」といって請求すると出てきます。

ただ、それだけでは見つけきれない物件もあるのです。

特に見落としがちなのが、所有権全部を持っている物件ではなく、他の人と「共有」で持っている土地などがある場合です。このようなものは評価額があまりにも低いため固定資産税が課税されていないこともあり、上記の評価証明書に記載されてきません。

田舎の山林や原野などで、地域の人全体で少しずつ持分を持っていることもあります。
昔の不動産登記法では、共有の不動産については権利証が全員分発行されるわけではないため、誰か一人の手元にあることになり、それがより物件を特定しづらくしている原因なのです。(現在は「登記識別情報通知」という暗証番号のような方式に変更されているため、共有で登記した不動産も共有者全員に登記識別情報が割り当てられていることになります。)
このようなケースでの物や当事者の特定をより明確にするためにも、早期に手続きしておくに越したことはないということです。

人数が増えた場合は、費用が高額になることも

上記のように時間の経過とともに相続人が増えてしまった場合、全員の実印をもらう手間や時間もそうですが、費用面でも多大な負担がかかることがあります。
たとえば、誰かがどうしても遺産分割協議の内容につき納得しない場合は弁護士に依頼して調停、裁判といった手続きになりますが、相続が開始してすぐに手続きをしておけばせいぜい20万円、30万円程度で済んだはずの費用が、弁護士報酬などをすべて含めたら100万円超えてしまうことも十分に考えられるのです。
よって、目先の数十万円を惜しんだことが、後々の大きな損失につながることもあるということを覚えておかなければなりません。


相続人の誰かが勝手に登記して売ることができるか?

共同相続人のうち、相続した不動産を売りたい人と売りたくない人が混在している場合、実質的に売ることは不可能です。
時々、ネット上などでもみられる知識で誤っているものがあります。

法定相続人のうち一人が自分の持分だけ登記してしまって勝手に売ってしまうことがある。

→ 誤り。

これは登記先例でも否定されているのですが、全員の法定相続分を一人の相続人が相続登記することはできますが、一人の持分だけを相続登記することはできません。

法定相続分のうち一人が全員の相続登記をしたうえで勝手に売ってしまうことがある。

→ 誤り。上記の通り、一人の相続人が全員の法定相続分で登記するところまではできても、その不動産全体を勝手に売ることはできない(=相続人全員の関与が必要)。
これらを整理すると、次のような結論になります。
「法定相続人の一人が法定相続分で相続人全員分の相続登記を行うことはできるものの、不動産全体を売却や担保に入れるなどはできず、自分の持分のみにつきそれらを行うことができる。ただし、実際に親族ではない第三者がひとつの不動産のうち持分だけを買い取ったりすることはあまり考えられないため、実質的には売ることができないと考えるべきである。」


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