まずは「気軽に相談」。相続問題の上手な解決方法はその一言に尽きる
JR水戸駅から徒歩10分ほどのところにある野中・瀧塚法律事務所は、40年以上の実績のある弁護士事務所です。創始者である野中弁護士の意思を継ぎ、この地域での問題解決に努めています。
今回は同事務所の代表弁護士、瀧塚祐之弁護士に相続問題のなかでも遺産分割でのトラブルや相続放棄について、これまでの経験をもとにお話を伺いました。
遺産分割、遺言作成、相続放棄など、地域の相続問題に幅広く対応
ー40年以上の実績がある事務所だそうですね。
はい。今の事務所名は野中・瀧塚法律事務所ですが、もともとは野中法律事務所でした。
出身地である茨城県で弁護士をしたいと考えていた時に、縁あってこの事務所に入りました。その後、2016年には事務所名に「瀧塚」が入り、以来、創始者である先代が亡くなった後も、ずっと引き継いで続けています。事務所名も変えていません。今も「先代にお世話になった」という方から依頼をいただくこともありますよ。
ー相続問題を中心に、力を入れていらっしゃるのですか?
この地域の弁護士全般に言えることかもしれませんが、相続だけに特化しているわけではありません。離婚問題や交通事故などの案件も受けていますよ。
でも、相続に関連する案件は常にありますね。なかでも遺産分割の相談は多いです。ほかにも「遺言を作成して欲しい」とか、借金だけが残されているような方で「相続放棄をしたい」とか、そのような相談もたくさんあります。
被相続人の預貯金を、相続人の一人が使い込んでいた事例
ーこれまでに受けた依頼で、特に印象深かった事例はありますか?
遺産分割に関して言えば、相続人の一人が故人の財産を使い込んでいた事件があります。
故人の預貯金を生前、相続人の一人が管理していたのですが、後から調べてみると、すごくたくさんのお金が使途不明のまま使われていました。そこで、ほかの相続人から「使い込んだお金を返還させられないか」という相談をいただきました。
過去にもそういう事例はいくつかあって、このような場合、法定相続分に従って金銭を返すように請求します。
しかし、使い込んだとされる人の手元に、回収できるくらいのお金が残っていれば良いのですが、なかなかそうもいきません。このような場合、相手の所有する不動産を代物弁済(お金の代わりとなるものを引き渡すこと、この場合は不動産)で解決する方法があります。
このときは交渉や調停では済まず、不当利得返還請求にまでなりましたが、最終的には裁判手続き中に和解しました。
使い込みを疑われた相続人の立場からすれば、使い込んでいたつもりはなく、「亡くなった方の世話をしていたことに対する、正当な取り分だった」という意識でした。
ー使い込みをしているかはどのように調べるのですか?
相続人であれば、亡くなった方の預金通帳の取引履歴を取得できます。もちろん、弁護士に依頼していただけば、弁護士が手続きすることもできます。
ーもし仮に反対の立場で、使い込みを疑われてた場合はどのように対処するのでしょうか?
「どういう事情でそのようなことをしていたのか?」「ほかの相続人に納得してもらえるように説明できるか?」「どういう主張したいのか?」ということを聞くにしています。
しかし、ご本人が「正当なものだ」と主張するすべてが、客観的に見て正当なものと判断されるかというと、難しい面もあるのが正直なところです。
「亡くなった方のために使った支出なのだ」ということをいかに証明できるか。領収書であるとか、どれだけ資料が残っているかということが重要ですね。
ー口で言っても伝わらないということですね。
相手がそれで納得してくれれば良いですが、資料がないと納得してもらえないケースが多いです。そのためできる限り資料は残しておく方が良いですね。
相続放棄に関する事例
ー相続放棄のご相談も多いと伺いました。
「死んだ親にたくさんの借金があって、どうしたら良いですか?」という相談はよくあります。
このような場合、相続放棄をすることが多いです。まとめてというか、相続人5、6人分の相続放棄を順番に行うケースも結構あります。
ー一度の相続で次々相続放棄をするのですか?
例えば、まず故人の奥さんとお子さんが「相続放棄しましょう」となります。
しかし、その2人が相続放棄すると、今度は亡くなった方の親が相続人になるので、親御さんの相続放棄をして。
その親御さんが相続放棄をすると、さらに亡くなった方のご兄弟が相続人になるので、ご兄弟の相続放棄もして……と、相続放棄をする人の数がどんどん増えていきます。
ただ、相続人同士の関係によっては、相続放棄をしたことを知らせてもらえず、知らないうちに故人の借金を相続していたケースもあります。
ー気付いたら借金を相続していたというのは怖いですね。
亡くなられた方のご兄弟が相談にいらしたのですが、故人には奥さんとお子さんがいたので、依頼者はその2人が相続したものとばかり思っていました。
ところが、ある時、債権者を名乗る会社から「あなたは相続人なので、故人の借金を支払ってください」という郵便が届き、そこで初めて故人の奥さんとそのお子さんが相続放棄をしていたことを知ったと。
ー相続放棄したことを教えてもらえないのは、親戚同士、仲が悪いからですか?
このケースでは相続人同士、仲が悪かったわけではありませんが、疎遠にはなっていました。
相続放棄の相談にいらっしゃる方は、自分が相続放棄したいという希望はあっても、自分が放棄したら代わりに親や兄弟が相続人になることをご存じない方も結構います。
それを知らずに自分だけが相続放棄をしてしまうと、伝え忘れることもあり得ます。ですから相続放棄の相談を受ける場合は「ほかの相続人も、まとめて相続放棄されますか?」とお伝えしています。
早めに相談しておけば、相談だけで問題が収まる場合も
ー相続問題を抱える方と接するとき、気を付けていることはありますか?
相続に限った話ではありませんが、「依頼者が何を求めているか」をとにかく、しっかりと確認することですね。
相続問題といっても、遺産分割に対する希望もあれば、お金が使い込まれていたことも、反対にほかの相続人からお金を使い込みを疑われていることもあります。
最初の面談で時間の許す限りしっかりとご相談者の話を聞き取り、問題を明らかにしていきます。しかし、人間関係が複雑だったり、依頼者もすべてを把握しきれていないこともあります。このような時には、調べながら少しずつ詰めていきますね。
ーこれから相続を考える方へのアドバイスはありますか?
まず被相続人になる方、親御さんに対して言いたいのは、「遺言は残しておいた方が良い」ということです。
「子どもたちが仲良く、滞りなく分けてくれるだろう」と思っても、なかなかそうはいかないのが現実です。
遺産が多くなればなるほど、それを分けるというのは複雑な作業になります。分け方に希望があるなら、遺言を残しておいた方が良いです。自筆証書遺言より、公正証書遺言の方が良いでしょう。
自筆証書遺言では形式が法律上の要件を満たしておらず、それが争いにつながるというケースもありますから。公正証書遺言は公証人が作成するので、無効の心配もなく安心です。
弁護士に相談すれば、弁護士が法定相続分や遺留分を考慮してくれます。そして、ご相談者自身の希望に添った遺言を一緒に作っていくことができますから。
ー弁護士に相談するのは敷居が高く感じる方もいると思います。相続問題の場合、どのタイミングで相談すれば良いのでしょうか?
「気軽にご相談を」という一言に尽きます。ちょっと問題があるのかな?というときは、まず相談だけでも。相談だけでまとまるケースもありますから。
相談しないで後悔するよりは、相談して後悔した方が良い……、というか後悔してはいけませんね。最も良いかたちでの解決を目指します。
ーありがとうございました。
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