あふれる地元愛。留学で培った英語力と経営学で地元に貢献する
一度弁護士になったものの、MBA(経営管理修士号)を取るために、オーストラリアに留学した珍しい経歴を持つ福永弁護士。地域の中小企業の法務を担当するなど「地域に密着した仕事をしたい」「地元に貢献したい」という思いが随所に感じられました。
お子さんと遊ぶことが、最近の癒しになっているという良いお父さんの一面も。福永弁護士にこれまで対応した事例などについてお話を伺いました。
司法試験合格後、弁護士事務所に入所するも、MBAを取得しようと一念発起。オーストラリアでMBA取得後、アイビスクラクス法律事務所を設立する。二児の父。なるべく子供と過ごす時間を確保しているとのこと。
アイビスクラクス法律事務所
目次
鹿児島では企業法務と相続は密接に関わる
―先生は普段どんな案件を扱っていらっしゃいますか?
企業法務の仕事をすることが多いですね。特に鹿児島では個人事業のような小さな企業が多いんです。旦那さんが社長で奥さんが専務や経理業務をやっていて、従業員が5~6名というケースも少なくありません。
中でも相続は、事業承継(会社を後継者に受け継ぐこと)の際に必ず出てくる問題ですから外せません。社長の旦那さんが亡くなった後の会社も、資産と同じように受け継ぐ手続きをしなければいけないからです。
ですからたぶん都会の企業法務とは少し毛色が違うかもしれませんね。私の扱う案件で相続は、事業承継と密接に関わってくるものなんです。
根気強く対応して、相続問題を解決
―先生はたくさんの依頼を受けているかと思いますが、印象的な相続の事例を教えてください。
遺産分割の際、相続人がアメリカ人で連絡が取れない事例
遺産分割をどうすれば良いかわからないという相談がありました。話を伺うと「相続人の1人に外国人がいる」とのこと。しかし、依頼者自身も連絡先を知らない。「あの人なら連絡先を知っているかも?」という程度の情報しかありませんでした。
しかもその人はアメリカ人で海外在住。日本語は使えないようでした。依頼人は英語が話せず、その相続人にコンタクト取るにもご自身では難しいという状況で、私に相談されたんです。
私はオーストラリアに留学していましたから、ある程度英語が話せます。ですので私の方で相手方に事情の説明から対応できました。けれど依頼者が相続人を把握できていない案件は、相続人が多いパターンがほとんど。だからその海外の方に連絡できたから解決ということでもなかったんです。
相続人の中に亡くなっている方がいるとか、認知症で意思表示ができない方がいるケースもあります。相続人が亡くなっている場合はその子供に相続権が移りますから、子供の所在を確認します。認知症の方には、成年後見人を立てる手続きをするところからのサポートを行いました。
相続人がたくさんいるケースだと、そのような複数の要因が重なるのでなかなか骨が折れますね…
3畳の土地の相続で兄弟の絆に溝ができた事例
他には、非常な小さな物件の相続でもめたという事例もありましたね。広さが3畳くらいの土地で、価格で言うと数千円だったと思います。
第三者から見れば「なんでこんな土地で?」と思うような小さな土地です。でもご兄弟間ではとても思い入れのある土地のようでした。なのでお互いに意地になっている様子で。そういう意味で大変な事件でしたね。
ただ争点は単純でした。その土地を取るか取らないかです。土地を手に入れるからには代償金(取得した遺産の代わりに支払うお金)を支払わなければいけませんから、メリット・デメリットを依頼者にきちんとお話しました。
依頼者の希望を聞きながら、他方で「譲歩することでこんなメリットもありますよ」と土地を手に入れるだけではない提案もしました。
結果としては私の依頼者が土地を取得。依頼者に根気強く説明することで、無事に着地した案件ではないでしょうか。
地元鹿児島に恩返ししたいと思い弁護士を志す
―弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。
もともとは裁判官を目指していました。高校2年生のときに見たドラマの裁判官がかっこよかったんです。そこから弁護士にシフトしたのは、地元に何かしらの恩返しがしたいと思ったからです。
裁判官になると2~3年で転勤になります。全国に異動しないといけないので、地元の鹿児島に定着することができませんから。
それと裁判官になると地元の人との交流がしにくくなるんですね。例えば私が鹿児島で裁判官になったとして、よく知っている友人が原告や被告になることがあるかもしれない。そうすると友人の方に肩入れする恐れがあるので、私は担当から外されてしまう制度があるんですよ。
それもあって裁判官だと地元の人との交流がしにくくなるんですよね。私はどちらかというと地域に密着したかった。だから弁護士に方向転換しました。
―ご実家は農家と伺いました。ご両親から家業を継いでほしいとは言われませんでしたか?
むしろ両親は「農家はやめとけ」って言っていましたね。やっぱり農家は大変なので。だから司法試験を受けることも反対されませんでした。でも私自身は司法試験に合格しなければ、農業をやってもいいかなとは思っていました。
法律では配慮しきれない、その家族の歴史を受け止める
―依頼を受けるにあたって、配慮していることはありますか?
相続の問題ってその方々の思いに歴史があるんです。依頼者は60代くらいの方が多いのですが、争いの種をひも解いていくと何十年も前の子どもの頃の話になるんですよ。歴史が浅い話でも、20年~30年前。若いころに相手の方が優遇されていたとか、そういう古い話が心に残っていて敵対しているんです。
しかし相続法では、全部が全部それらの思いを汲み切れない。法定相続分はあらかじめ決められた分だけを縦割りで分けるようになっています。親の面倒を誰がどれだけ見たかを配慮する制度はあるけれども、ご本人たちの思いほどには反映されません。
それを「そんな話関係ないですよ」と一蹴してしまうのではなくて、こちらで思いを受け止めながらなるべく反映できるようにがんばってみましょうとお話します。
遺産分割調停になる前に弁護士に相談を
―弁護士に依頼する段階となると、もめて裁判になるイメージがあるのですが、実際はいかがですか?
私が扱った案件の半分くらいは遺産分割調停になり、もう半分はその手前の話し合いで解決しています。遺産分割調停となるとそれだけ弁護士費用がかさみますから、依頼者にとっても話し合いで済んだ方がいいでしょうね。
それに遺産分割調停の申し立てをすると相手方に通知が行きます。裁判所から通知が届きますから、受け取った側は「攻撃された」という印象を受けてしまう。より溝が深まってしまうというわけです。だからもめて遺産分割調停まで行くのは、すでに争いが深まっている段階だと私は考えています。
遺産分割調停になる前に、弁護士を介しての話し合いで済ませた方が上手くまとまりやすいと言えますね。
―遺産分割調停を前提にせずに、早めに先生のところに相談しに行った方がお互いに良い結果になりそうですね。
本日はお時間いただきありがとうございました。大変勉強になりました!
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