親が元気なうちに財産情報だけでも確認しておくと、相続問題も解決しやすい
弁護士になる前は公務員として税務に関わってきたという小泉直樹弁護士。相続問題を解決する上でも重要な財産調査を得意としています。丁寧なコミュニケーションを大切に、依頼主の希望に沿った解決を目指します。今回はこれまでの経験の中から、相続のトラブルを避けるためにできる、生前の対策についてもお話を伺いました。
財産の把握は一番大事にしなければならない
-相続相談はどのくらいありますか?
相続だけが特に多いという訳ではありませんが、相続に関する相談はよくあります。事案によって財産調査が必用なケースになると解決まで時間もかかるので、常に相続の案件に関わっている感じですね。
もともとは県の地方公務員として税務関係の仕事をしていましたので、財産調査などはそれなりに得意な分野でもあります。遺産分割にあたって最も大切なのは遺産の範囲を確定することです。遺産が確定されなければ遺産分割はできませんから。
-相続問題の場合、依頼者はどのような方が多いのでしょう。傾向はありますか?
ほとんどが「被相続人が親」というケースです。中でも親元から離れて暮らしている方からの依頼が多いです。親が遠方にいらして依頼者が名古屋にいらっしゃるような方です。親が亡くなって相続が発生したけれど、親と一緒に住んでいた親族と仲が良くないとか。そういった相談は多いですね。
しかし、相続人のうちの一人が親と一緒に生活していて、親の財産を一人で管理、把握しているケースだとなかなか情報が集まらないんです。遺産の状況をきちんと全部出しているかもわからない。そういう意味でも、財産の把握は一番大事にしなければならないと思います。糸口を見つけて調べていくのですが、財産調査はその辺で苦労します。
相続問題には感情面の問題が絡んでいる
-これまで関わった事案の中で最も印象に残っているのはどのようなものでしょうか?
交渉の過程での相手とのやり取りですかね。
相続の相談を受けると大抵、例えば長男だったり、長女だったりが同居している親を囲い込んでしまっているんですね。
親も一緒に暮らしている長男や長女の言うことを鵜呑みにしちゃって、言われた通りに遺言書を書いたり、遺言書を書かないまでもその人の言うように段取りをしてしまっていたり。
さらには家を出て暮らしている下のお子さんたちのことを、自分の子供なのにもう悪人だと思ってしまっていたり。
きょうだい間で確執があるケースがほとんどなので、争っている相手から話を聞くことができないと、 情報が全く入ってこない……。
しかも、被相続人のきょうだいであったり、相続とは直接関係のないけれど親族の長のような方がいらっしゃるとさらに複雑になります。その方が一族の問題に第三者が入ることを嫌うタイプの方だと、苦労します。
依頼者はそういう親族の長のような方を敬遠していることが多いので、弁護士として代理で話を聞かければならないのですが、「他人に話すことじゃない」と。
-そこで拒絶されてしまうと、話をまとめるのは本当に大変そうですね。
離婚もそうですが、家族の問題は感情的なものが入るので交渉は難しいですね。きょうだい間の確執はさらに根深かったりします。何もなければ弁護士に相談する必要はありませんから。相続問題には感情面の問題が絡んでいることが多いんです。
-そのような問題はどのように解決するのでしょうか?
やはり一番大事なのはコミュニケーションです。コミュニケーションがうまくいっていないから、相続争いが起こる訳ですから。また、相手だけでなく依頼者とのコミュニケーションも大切です。
例えば調停でも審判でもそうですが、こちらは法的な面で主張しようと思っていても、依頼主は感情的な問題についてもっと言って欲しいと希望する。
結果にはほとんど影響しませんから「そんなことを言っても仕方ないですよ」ということは伝えますが、「相手に言われっぱなしでは我慢できない」と納得されない方も多いですね。
あまり我慢ばかりを強いるとそれはそれで不満がたまってしまいますので、そういった主張を無下にする訳にはいきません。書面を書く時にも考慮します。
依頼者との接し方、コミュニケーションを大切に
-公務員だったと伺いましたが、どうして弁護士を目指したのでしょう?
そんなに大それた理由ではありませんが、公務員として長年勤めていて、このまま公務員で終るのも……と思ったんです。当時、司法試験で若手を積極的に登用しようという動きもあって、自分も挑戦してみたいと。
税務関係の仕事を通して、相手の人との交渉もかなり経験を積んでいましたし、そうした交渉術も弁護士として役立っています。
-司法試験の勉強は以前からしていたんですか?
いいえ。40代で初めて挑戦しました。
その前に会計士の試験に合格していました。税務関連の仕事をしていたこともあって、興味があったんです。しかし会計士というのはある意味、理不尽な制度で……。
裁判官、検察官、弁護士は司法試験に合格し、司法研修所で研修を受けて修了試験に通ればなれますが、会計士は試験に受かっても会計事務所や監査法人に就職して2年間実務を経験しないとなれないんですね。なので、改めて弁護士を目指しました。
-公務員としてお仕事を続けながら司法試験の勉強したんですか?それはすごいですね。
仕事をしながら試験勉強をしたと聞くと皆さんすごいっておっしゃってくれますが、仕事を辞めて試験勉強をするという度胸がなかっただけです(笑)
司法試験に合格してからは、2年ほど法律事務所に勤めて独立しました。
-弁護士になって気を付けていらっしゃることはありますか?
やはり依頼者との接し方、コミュニケーションを大切にしています。こまめに連絡をして状況を報告したり、依頼者の意向を確認したり、良い関係を築けるよう心がけています。
これは失敗も含めていろいろな経験を積んだからこそわかったことですが、自分では依頼者との関係がうまくいっていると思っていても、全く違っていたということもあるんですね。
そういうケースでもきちんとフォローすれば理解していただけるのですが、何が悪かったのか?と考えると、依頼者の話をどこか聞き切れていなかったんだなと反省します。
相談を受けるときも「一通り必要な話を聞き終えたから終了」ではなく、「(相談者が)どこか納得できずにモヤモヤしていることはないか?」を考えるようにしています。
気を付けていると声のトーンなどでもわかるんですね。そういう場合にはもう少し話を聞いたり。相談したことで本当に満足できているかどうかを見極め、もしまだ気がかりなことがあるなら時間を少し延長して話を聞いたり。その点は心がけています。
-土日祝日の相談や、出張相談なども受けていますね。
出張相談については全国行けないことはありません。ただ、出張費などがかかりますので、あまりにも遠方の方には「お近くで探した方が良いですよ」ということはお伝えしています。
また、土日や祝日でも予定がない場合は対応できますし、夜も対応しています。日付が変わるころまではさすがに無理ですが。
なぜなら、依頼者にとってはその方が都合が良いからです。こちらの都合を言えば昼間の方が望ましくても、依頼者も昼間はお仕事をされている方も多いですし、時間がないということもあります。
相手があっての仕事です。こちらの都合ばかりをいって相手の都合にあわせなければ何も始まりません。土日対応も、平日は時間がとれないという方は多いですからね。
-事前に土日など希望日をメール等でお伝えしていれば、対応してくださるということですね。
そうです。日曜日に相談を希望する方も結構多いですね。もしくは平日でも午後5時以降、6時以降とか。
お仕事を引退された方とか専業主婦の方とか、平日の昼間でも良いという方はいらっしゃるかもしれませんが、実際の相談数はそれほど多くはありません。お子さんを保育園への送り迎えで時間が取れなかったり。お子さんが学校に行っているか、誰かに預けられる時間でないと相談できないということはありますから。
生前、財産内容を把握しておくだけでもトラブル予防に
-相続のご相談される方は、やはり50代とか60代とかの方が多いでしょうか?
相続の相談にいらっしゃるのは年配の方が多いです。まれにお子さんがいらっしゃることもありますが、ただそれはあまりお勧めはしていません。
いわゆる当事者と相談者と 意見が違っていることもありますので。実際には最終的に本人の意思を確認しないといけないですから。
-相続でお悩みだったりこれから相続を考えなければならない方にアドバイスありますか?
お父さんお母さんが生きてる間に財産情報などを確認しておくことです。
難しいかもしれないけれど「ちゃんと確認しておけば良かった」と後悔する人も多いです。親が亡くなってからでは本当にわからない。結局「何もしなかった自分が悪かった」と、諦めざるを得ない部分が増えてしまいます。
親が生きてる間に色々と知っておくと、トラブルが起きても比較的、希望に沿った解決につながりやすいと思います。遺言書までは作れなかったとしても、財産の内容を把握しておくだけでも違いますよ。
-ありがとうございました。
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