相続問題の解決は、経済的利益だけでなくストレスから解放されるメリットも大きい
愛知県名古屋市の弁護士法人TRUTH&TRUST、杉本将樹弁護士は相続問題について「金銭的な解決も大切だが、早期解決も大事」と言います。相続問題の背景には人間関係のトラブルが隠れていることも少なくありません。経済的な利益だけでなく、人間関係のトラブルから解放されることも、相続問題解決の大きなメリットです。
迅速な解決が依頼者にとっての「良い解決」。抜本的な解決も大事。遺言書は「後で必要になる費用の先払い」。「相続税も視野に入れた問題解決を目指す」など。今回は独特の視点から相続問題に取り組む杉本先生にお話を伺いました。
東海圏や関西圏・関東圏と広い範囲で相続問題をはじめさまざまな相談に対応。依頼者が話しやすい環境を意識し、依頼者が理解しやすいよう丁寧な説明で問題の解決を目指す。
弁護士法人TRUTH&TRUST 杉本将樹
相続問題に縛られる精神的な負担は相当なもの。できるだけ迅速な解決を目指す
-相続の案件はどのくらいあるのでしょうか?
相談も含めると、月に3件ほどの月もあります。
具体的には遺産分割協議で揉めていたり、公正証書遺言を作成したいといった希望であったり。相続に関してはそういったケースが多いです。
それらのご相談を受ける中で、受任するものもあれば、相談だけで解決するようなケースもあります。
-相続の案件は長引くという印象がありますが、どのくらいかかるものでしょう?
遺産分割の交渉だけだと半年くらいで解決するものもあれば、交渉ではまとまらずに調停、訴訟となると2、3年かかるものもあります。それぞれの事案によって、本当にまちまちですね。
-これまでに扱った相続案件で印象に残っていることはありますか?
具体的には申し上げられませんが、例えば相続人同士、10年以上争っていた相続問題を受任して、解決したことは強く印象に残っています。それこそ、父親の代からもめていて、依頼者も相当苦労があったと思います。解決することで、そうしたストレスからも解放されると、依頼者もとても喜んでくださいました。
また、遺留分減殺請求(2019年7月1日法改正後に生じた相続からは、遺留分侵害額請求)や寄与分が認められるとか、依頼者にとって、「こだわり」の部分が認められる。こういったケースは依頼者の満足感が大きく、私としても嬉しいですね。
遺産の話とは違う、本質とは違うところからのアプローチで解決に至ったケースなども、とてもよく覚えています。
相続争いとなると、親族間のいざこざであったり、過去の恨みつらみであったり、相続の問題だけでなく、その奥には感情の問題が隠れていることが多いです。
感情の問題は、法的な理論には、直接関係はありません。しかし、そういったお話を「関係ありません」と遮るのではなく、関係のない話だと分かっていても丁寧に聞いていくうちに、その中に解決の糸口が見つかることもあります。
やはり、依頼者との対話が重要だと気付かされます。
-そうした込み入ったトラブルはどのように解決に導くものなのでしょうか?
例えば寄与分が認められたケースでは、医療関係者やヘルバーさんにお話を聞きに行きまして……。
-取材に行くわけですね!?
取材というほど大げさではありませんが、いわゆる証拠集めですね。そうして得られた情報をもとに主張書面を書いたりすることもあります。
-相続問題の中でも、どのような種類の問題だと長引いてしまうとか、特徴はありますか?
長引くというのは、種類の問題というよりは、当事者の気持ちだとか、感情です。
争っている両者がお互いに譲らず、お互いに折れないという場合です。どちらも主張を曲げないと、交渉でも調停でもまとまらず、訴訟となります。
初めの交渉から、訴訟をした場合の帰趨を想定しながらアドバイスすることが大事だと思っています。
依頼者にとって良い解決とは何かと考えると、もちろん金銭的な解決も大切ですが、早期解決も大事です。
何年も恨みつらみが募った問題に縛られている精神的な負担は相当なものですから、できるだけ迅速に解決できるよう心がけています。このあたりの塩梅は、依頼者と相談して決めていくことになります。
これからの相続問題では、相続税も視野に入れていきたい
-名古屋で弁護士をしていらっしゃいますが、出身も名古屋ですか?
出身は大阪です。名古屋大学法科大学院を修了し、そのまま名古屋で司法修習を受けました。
司法修習の際に、お世話になった太田・渡辺法律事務所、今は弁護士法人TRUTH&TRUSTと名前が変わっていますが、そこに入所して現在に至ります。
-では弁護士になってからは、ずっと名古屋やその近隣のエリアを中心に相談を受けているのですね
名古屋だけでなく東海圏や関西圏・関東圏、広い範囲で対応してます。
今の時代は、Zoom(ズーム)であったり、電話であったり、場所に限らず打ち合わせができます。
相手方との交渉も書面のやり取り等で対応することも可能なので、交渉ができるのであれば、場所は、限定せずに広く受けています。
もっとも、相談を受けて、調停になりそうであれば、その時は「出張費など費用もかさみますから、地元の弁護士に依頼した方が良いですよ」といったアドバイスもします。
-相続相談には地域性とかはあるものでしょうか?例えば名古屋特有の相続問題の傾向などはありますか?
名古屋特有か?というと難しいですが、相続財産に不動産や株式が含まれているケースは多いのではないでしょうか。
あとは、この地域は中小企業も多く、経営者の方から事業承継も含めてご自分が亡くなった後のことについての相続相談を受けることも多いですね。
-生前相談も多いのですね。
多いですね。そうしたご相談を受けている中で、今後力を入れていきたいと考えているのが民事信託です。いわゆる家族信託ですね。将来、ご自身が認知症になるなど、判断能力が弱まった時の対策です。
成年後見制度もありますが、この制度だと生前贈与できないなど、相続税対策としては難しい問題もあります。生前贈与の非課税枠が重要ですからね。
その点、民事信託であれば将来の相続税の対策も可能です。財産のある方であれば、その財産を管理する運営会社を設立する方法もあるでしょう。これからの相続問題では、相続税も視野に入れていきたいと考えています。
弁護士はどちらかというと税務関係が不得意な方も多いと思いますが、相続税のことを踏まえずに安易にアドバイスしてしまうと、後になって依頼者が困る危険性もあります。ですから、税理士としっかり連携しながら対応していく必要性があると感じています。
依頼者に接するときは「わかりやすく、喋りやすく」
-ご相談を受けるにあたって、弁護士に求められる必要な資質などはありますか?
いろいろな分野に興味を持っているということでしょうか。
弁護士という職業柄、さまざまな相談を受けています。経営者の相談を受けるのであれば経営や経済について知識が必要ですし、相続相談では不動産の知識や株の知識も求められます。家族的な感情とか、人間の心情とか、総合的にいろいろなことを知っている必要があります。
そのためには、何にでも興味を持たなければなりませんし、興味を持った分野には積極的にアプローチしていくことも必要です。
-依頼者が何に困っているかを理解するためにも、幅広い知識が求められるんですね
もう一つ、自信家な人も弁護士に向いていると思います(笑)。
自信がなければ経験は積めません。また、わからないことはわからないと、はっきり言うことも、自信がないとできません。
わからないことをあやふやにして、間違ったアドバイスをしてしまったら、依頼者に迷惑がかかります。「すぐにはわからないので、調べてからお答えします」とか、わからないことを「わからない」とはっきりと伝える勇気は大切です。
-これから相続をする人に対してアドバイスをいただけないでしょうか?
まず「我が家は大丈夫」という思い込みは危険です。
「兄弟仲が良いから」「子供がみんな仲が良いから」とか、「財産がないから」とか。生前はそう思っていても、亡くなった後に何が起こるかは誰にもわかりません。そもそも、親の財産をきちんと把握していない人も多いと思います。
なので私は、遺言書の作成というのは、とても大事だと思っています。
-費用を払ってまで遺言書を作るというのは、少しハードルが高い気がします
「後で必要になる費用を先に払っておく」と考えれば分かりやすいのではないでしょうか。
遺言書があれば金融機関の手続きもスムーズにできますし、遺言書がないと遺産分割協議書を作成する必要が出てきます。遺産分割協議書の作成を弁護士に頼めば、結局、費用はかかります。
遺産分割協議の内容を書面でまとめるだけであれば、遺言書と同じぐらいの費用でできるでしょう。しかし、もめてしまったら遺産分割協議そのものも大変なことになります。
事前に遺言書を用意しておいた方が、結果的に得策と言えると思っています。
-依頼人の相談を受ける際に気をつけていることはありますか?
わかりやすく、喋りやすく。そのふたつを意識しています。
「わかりやすく」というのは依頼者が理解できるように、丁寧に説明すること。そして「喋りやすく」というのは依頼者が話しやすい環境を作るということです。
まずは、やはり依頼者がきちんと理解できるように説明するということです。
弁護士に相談するということは、人生でもそうあることではありません。相談にいらしても何から質問すれば良いかがわからない、だから喋れないのです。
相談を受けたら、その内容を「法律的にはこうですよ」とまずは整理をして、その上で「こういう問題が起こる可能性がありますよ」と、正直にお伝えします。
そこできちんと理解ができれば、依頼者もさらに質問をすることができるのです。
-確かに、自分で問題を理解できていなければ、何を質問すれば良いのかもわかりませんね
私は弁護士を、セカンドオピニオンのようなかたちで利用するのも良いと思っています。いろいろな人たちの意見を聞いて情報を得ることで、問題解決につながることもあるでしょう。相談だけでも問題ありません。いつでも気軽に連絡をお待ちしています。
弁護士はただでさえ敷居が高いと言われているのに、威厳がありすぎる弁護士だと、相談者は萎縮してしまうかもしれません。
その点、私は年齢もまだ若いので、依頼者さんからも「話しやすい」と感じていただいていると思います。性格も、親しみやすいと思っています。
-ありがとうございました
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