実際は相続税がかからないのに申告手続きはしなければならない場合があるって本当ですか?
質問者:H.K
相続税にはさまざまな軽減のための措置が施されています。 ただ、それらを利用した結果として相続税額がゼロになったとしても相続税申告自体はしなければならないこともあるのです。
基礎控除以下の相続財産であれば申告はいらない
相続税は、「基礎控除」といって、一定の金額以下の相続財産しかないのであればそもそも申告自体が要らないことになっています。 具体的な基礎控除の金額は「3000万円+(法定相続人の数×600万円)」に設定されており、たとえば相続人が3人のケースでは4800万円となっています。
不動産、預貯金、現金、株式、車などすべてをカウントしてみて基礎控除を超えているか否かを判断しなくてはなりませんので、もしボーダーライン上にあると感じた場合は必ず税理士にしっかり計算してもらい、正確な金額を算出できるようにすることが大切です。
ただ、不動産がある程度の金額になる等、国側が金額の把握をしやすい家庭の場合、税務署から「おたずね」の文書が届くこともあります。 この場合は税務署サイドでもおそらく相続税がかかる家庭だろうとマークしている状況ですので、きちんと申告する、あるいはおたずね文書に正しく回答するといった形で慎重に対応しなくてはなりません。
▶相続税の基礎控除|計算方法や申告の必要の有無
「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の評価減の特例」などの場合
相続財産自体は基礎控除を上回っているものの、相続税の計算段階である条件に当てはまるケースにつき一定額を差し引くことがあります。
その一つが「配偶者の税額軽減」です。 配偶者が相続する場合、それが法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)または1億6000万円までであれば相続税がかからないというものです。
また、こちらも大幅に相続税が軽減される方法ですが「小規模宅地等の評価減の特例」という制度があります。 これは、一定の条件に該当する宅地を相続する場合はその土地の評価を最大で80%減額できるというものです。
これらの特定を適用できると考えられる場合であっても申告書自体の作成・提出は行い、税務署に適用の要件等を確認してもらわなくてはならないのです。
なお、これらの特例を利用する際には申告書の中の「別表」という用紙を使って「配偶者の税額軽減の計算書」「小規模宅地等についての課税価格の計算明細書」を作成します。 ここには特例を受ける人の氏名や適用を受ける宅地、限度面積の要件等を記載することになります。 この用紙を申告の際、同時に提出することで「特例を適用する」意思表示をし、税務署に対して金額を明確にして適用が可能かどうかの判断をしてもらうことになります。
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