目次
エンディングノートはいつ・なぜできたの?
終活を進める上で、エンディングノートの存在は必要不可欠です。
「エンディングノート」という言葉が出版物としてこの世に誕生したのは2003年と言われています。ここ数年で実に様々なデザインの商品が市場に登場するようになりましたが、国内外の状況が目まぐるしく変わり、その都度求められる内容を変えた様々な種類のエンディングノートが出版されるようになったためです。そして時代は令和に移りました。エンディングノートはまさに平成に生まれ、平成に成長していった終活媒体です。
終活を意識する年代や終活そのものの内容、終活に必要な情報や手続き、相続に関係する法律など、16年という歳月と共に変化したものは少なくありませんが、それでもエンディングノートに求められているものは変わっていないと思われます。
それは、自分らしい人生を送り、最後を迎えるためのツールとして求められているということです。事故や病気で、いつ何が起こるかがわからない現代社会で、人生の最後まで自己の尊厳を保ち続けることは簡単ではなくなってきています。
最後まで自分らしい人生を送るために。
残された家族の負担を減らし、心穏やかに過ごすことができるように。
エンディングノートは、そのための準備として書くものなのです。
今だからこそ、パソコンでエンディングノートを書こう!
16年という時間の流れとともに画期的な進化を遂げたもののひとつに、パソコンが挙げられます。
今や仕事をする上でパソコンが使えることは当たり前、性能も外観もどんどん使いやすく多機能になってきています。ノートパソコンを手軽に持ち運び、カフェでさっと取り出して仕事をする光景も当たり前になり、リモートワークを取り入れる企業も増えてきています。
最近はインターネットとエンディングノートが結びつき、ダウンロード型のエンディンノートの種類が増えてきました。エンディングノートと言えば、長い間ノート型の商品ばかりでしたが、パソコンユーザーを視野に入れたダウンロード型のものが注目されてきており、魅力的な選択肢のひとつとなっています。
法律事務所や終活関連企業が監修しているエンディングノートを選べば、ノート型と変わらない充実した内容のエンディングノートにすることができます。
仕事や趣味でパソコンを使い慣れている方はもちろん、手で字を書く機会がますます減っており、手書きが苦手であるという方や、悪筆で書くことをためらっている方にもおすすめの選択肢です。
*CASE.1介護は不要、自分の意志で選んだヘルパーという選択肢*
夫を早くに亡くした佐々木美奈子さん、66才。子どもはいませんが、4才年下の弟一家が近所に住んでおり、大学生の姪を我が子のように可愛がっています。
仕事を定年まで勤め上げましたが無理が祟ったためか間も無く心筋梗塞で倒れてしまいます。幸い救急車に運ばれて一命は取り留めましたが、発見が遅れたため軽度の後遺症が残ってしまいました。ですが、長くひとり暮らしをしていたために早めの終活を意識していた美奈子さんは、「もし介護が必要になったら」という欄に自分の希望をしっかり記入していたので、希望通り、自分の貯金で週2回のヘルパーを頼むことができました。
もしエンディングノートを残していなかったら、意志表示が思ったようにできず、弟一家が介護をすることになっていたかもしれません。相手に負担をかけないことを第一に考えていた美奈子さんには辛い状況になってしまったかもしれないのです。
現在、美奈子さんはヘルパーに助けてもらいながらリハビリを継続しており、近所への散歩がひとりでできるようになるまでに回復しました。
先日家に来た弟が、「こんなのを買ったんだ」と新品のエンディングノートを見せてくれました。今回のことを知った姪が、「きちんと記録しておくのは大事だよ!おばさんが教えてくれたんだから、お父さんもお母さんも書こうよ!」と買ってくれたそうです。テーブルの上には、若い女性ならではの感性で選ばれたおしゃれなエンディングノートが3冊置かれていました。
*CASE.2 保険証だけではない、臓器提供の意志表示*
牧田加奈子さん、53才。一人息子は就職し、この春家を出たので夫婦二人暮らしです。
つい先日夫を交通事故で亡くしたばかりの加奈子さん。友人たちとのやりとりで日常的に終活のことについてお互い話をしており、今年に入ってからふたりで1冊ずつエンディングノートを買ってかなりの部分を書き進めていた矢先でした。
夫はボランティアにも積極的に参加するほど意識の高い人で、「もしも」の時のことが自分の身に起こったら「臓器提供を希望する」と度々口にしていました。ですが貴重品を整理してみると、保険証の裏面の「臓器提供意志表示」に記入・署名がありません。最近事情があって保険証を再発行していた夫は手元に保険証が届いたばかりで、封を開ける前に他界してしまったのです。
ですが加奈子さんは「エンディングノートに何か書いてあるかもしれない」と内容を確認します。思った通り、「医療・介護」に関する欄に自筆で臓器提供希望の旨を書いていたことがわかりました。
夫を不慮の事故で亡くしてとてもショックを受けていた加奈子さんでしたが、最後の最後に夫の希望を叶えることができたと思うことができ、その後の忙しい生活の中での心の支えにすることができました。
「もしも」の時のことを自分の意志で決めておくことは、自分の希望を叶えるということと、遺族に亡くなった人の希望を叶えてあげるという最後の仕事を任せることができるという意味でとても重要です。人が亡くなると、法的・物理的に様々な処理をこなさなければならず心身ともに非常に疲弊します。そんな遺族の心の支えのになるのが、エンディングノートであることが大いにあるのです。
ひとつ気をつけなければいけないのは、エンディングノートには法的拘束力がないということです。遺言書とは決定的に違います。ですから②財産についての項目を法的に確固たるものにするためには、
(1)エンディングノートを基に、
(2)⑤相続・遺言書についてを参考し、
(3)遺言書を作る
という段階を踏まなければいけません。その際、自筆証書遺言を選んだ方は注意が必要です。自分ひとりで書面を作るので費用は大幅に抑えられますが、万が一不備があった場合法的に有効ではなくなる可能性があります。
不安な場合は、公正証書遺言を選びましょう。法律のプロにしっかり確認してもらうのはとても大切です。エンディングノートを上手に活用して、遺言書作りに活かせるようにしましょう。
どんな種類があるの? 人気のダウンロード型エンディングノート3種
それでは、実際にどんな内容のダウンロード型エンディングノートがあるのか見ていきましょう。ご紹介する3種類はすべて無料でダウンロードできるものです。
◇ラプラージュ綜合法律事務所HP内 エンディングノート(無料)◇
http://lp-law.net/endingnote_startingnote.html
<.doc形式・PDF形式>
関西エリアに特化したラプラージュ綜合法律事務所が提供している、エンディングノートのダウンロードサービスです。
この事務所の特徴は、エンディングノートの他に「スターティングノート」についても説明をしているという点です。
「スターティングノート」とは「第2の人生を輝くものにするために書くノート」のことです。特に定年を迎える世代の方々をターゲットにした気持ちを前向きに保つためのもので、2013年に放映された医療ドラマ「LAST HOPE」でも使われた言葉です。この劇中では、重篤な症状の入院患者が生きる希望を持つためにとつけていたのがこのノートでした。
現在は定年時の年齢も引き上がり、エンディングノート自体の種類も豊富なってきており、スターティングノートの意義がエンディングノートに包括される形の商品が多く見受けられますが、こちらでダウンロードできるデータにはそれぞれ明確に項目を分けており、最近では却って目新しいかもしれません。
まず、エンディングノートの内容から説明していきます。
私の宣言として、「ここに私の意思表示の希望を記しておきます。判断能力が低下するなど、私の意思表示が困難になった時は、可能な限り尊重してください。また、何かを決めるときの参考にしてください」という前置きがあり、「もしも」の時のための意志表示の役割を果たしています。
私の人生史は、まさに履歴書的構成です。ですが学歴や職歴だけにとどまらず、自分の好きなものや活動内容など細かく明記できるようになっています。家族・友人の連絡先や緊急連絡先を書くのもこの欄です。
住まいについてはこのエンディングノートオリジナルの項目です。資産として持っている不動産についてはきちんと情報を残さなければと緊張しますが、案外自宅のことについては気が回らないものです。この情報があれば、遺族の手続きも進めやすくなります。
介護、医療についてはかなり詳細な項目が設けられています。介護、福祉サービスの希望(誰に介護されたいか、介護を受けたい場所などの具体的な情報)、入所したい施設やその他具体的な希望(信頼しているケアマネージャー、お気に入りのケアサービス業者、介護費用はどうするか、医療行為の希望、病気や余命の告知について(すべて告知してほしい、もしくは病名は知りたいが余命は不要、もしくは病名も余命も知りたくない、もしくは状況をみて家族に任せたいなど)、延命治療について(延命措置を希望する、もしくは状況を見て家族に任せたい、もしくは延命措置は希望しないが苦痛を緩和する措置は希望するなど)、胃ろう(経管栄養)について(希望する、もしくは希望しない、もしくは状況を見て家族に任せたいなど)、その他医療行為についての具体的希望、臓器提供について(自身の臓器を提供する、もしくは自身の臓器は提供しない、もしくは別に意思表示をしているなど)、後見人の希望、といった内容になっています。
食事については食事の生活リズムや好みなどが書けるようになっています。介護が必要になった場合の大切な情報源です。服装について書く欄もありますので、意志表示が困難な場合は生活の質を保つための手がかりにできるでしょう。
財産、管理についての欄は、遺言書について・財産の種類について・後見制度について書けるようになっています。各項目ごとに詳しく書くには少し物足りないので、資産情報を重視する方には難しいかもしれません。
その分、自分らしい最期とお葬式についての項目は、死後の希望や葬儀会社の指定、納棺時の希望などが書けるようになっていて、他のエンディングノートに比べて行き届いている印象が強いです。
さて、スターティングノートについてですが、こちらはもっとカジュアルな気持ちで書ける内容となっています。
エンディングノートの私の自分史ですでに過去と現在のことをしっかり振り返っているので、ここで書くのは未来の夢のことだけです。挑戦したいことやまだまだ続けたいことをしっかり洗い出すことで、希望を持って日常生活を送ることができるようになります。1年後・5年後・10年後・15年後・20年後の自分をしっかり思い描くことで、今何をしなければいけないのかがわかり、かえってエンディングノートの足りない部分が見えてくるかもしれません。
エンディングノートとスターティングノート。ふたつを上手に活用して、自分が思っている「本当の希望」を書き出しましょう。それは、他にはない、未来を残るあなただけのエンディングノートになります。
*こんな人にぴったり・CASE.3*
加藤由紀さん、37才、女性。2年前に夫と離婚した、幼い息子二人のシングルマザーです。
息子ふたりがまだ小学生の由紀さんですが、大手企業に勤め続けているキャリアウーマンで、ふたりを産んだ時に産休を取得しただけであとはひたすら働き続けてきました。部下を持つ管理職で、仕事も常に多忙です。
休みの日はなんとか子どもたちと一緒にいる時間を作ろうとしてますが、やはり年々体が辛くなることを痛感している由紀さん。先月受けた健康診断で思わしくない数値が出てしまった項目が複数あり、今この状態で何かあったら、息子たちはどうなるんだろうという不安が日を追って大きくなっていました。
なんとなく不安を減らしたいとインターネットで「終活」と検索しても膨大な情報ばかりでよくわからなくなってしまい困ってしまった由紀さん。そこでふと「そういえば『エンディングノート』っていう映画が公開されていたことがあったなあ」ということを思い出し、検索ワードを「エンディングノート」に変えたところ、さまざまな種類のエンディングノートが紹介されていて驚きました。いくつかの商品を比較して調べたり、情報サイトを回ってみて「私も書いてみてもいいのかもしれない」と感じ、仕事の感覚の延長で書くことができそうな「ラプラージュ綜合法律事務所」のエンディングノートに書くことにしました。.dox形式なのでパソコンでサクサク打ち込めそうな点と、他にはない「スターティングノート」という言葉がなんとなく気持ちを前向きにしてくれる感じがしたのが決め手でした。
記入していて最も良かったと思ったのが、医療・介護に関して書く欄が充実していたことです。健康診断の結果のこともあり、今の自分の気持ちや息子たちのことを考えながらしっかり時間をかけて書き進めています。同時に「スターティングノート」で未来の希望をイメージしていたことで、自分に何かあったら息子たちはどうなってしまうのかという不安よりも、息子たちのためにしっかりと生きていきたいという思いの方が強くなっていきました。現在は自分の身体のことも考えて、仕事の仕方を変えプライベートとの両立を目指そうと、エンディングノートとスターティングノートを見ながら転職も視野に入れてさまざまなことを調べ出しました。
◇自分史・エンディングノートの無料ダウンロード 百人百想◇
http://www.100sou.jp/100sou-endingnote.html
<.doc形式・PDF形式>
二部構成のダウンロード型エンディングノートです。
随時更新されることを前提作成されたデータなので補筆・加筆・減筆可能な書式データになっており、書く人が自由に編集して使うことができます。
一部の「私の自分史」は、エンディングノート基本項目①自分についてに該当し、以下の内容になっています。
誕生・幼少・小学・中学・高校・学生・仕事の7つに自分史が分類されており、年齢ごとにしっかり自分の過去を振り返ることができます。家族の欄も両親兄弟・配偶者子供孫・友人・ペットとひとりひとり細かく書くことができるようになっています。
周りの人をしっかり振り返ったら、自分のことも見つめましょう。好きなもの一覧はもちろん、人生の中で影響を受けたものや人、旅の記録、資格や免許、受賞歴、社会活動だけでなく、家系図や家紋を書く欄もあります。
写真やデータディスクを貼付できるスペースもあり、データベースに万が一のことが起こった場合の保険としても利用できます。
二部は「私の記録 〜家族へ伝えること」というタイトルになっていますが、エンディングノート基本項目②〜⑤を網羅しています。医療・介護、終の家・生活、葬儀、お墓・埋葬、仏壇・法要、遺言書・財産、連絡先、遺影、家族へのメッセージと網羅的に作成されています。
なかでも葬儀は希望・規模・世話役の有無・宗派・費用・喪主・葬儀社・祭壇・戒名、お墓・埋葬は墓石の諸情報と納骨について、仏壇・法要は細かい希望の選択肢、遺言書・財産は各項目ごとに非常に細かく書き込めるように工夫がされており、内容量が豊富なイメージです。
特にこのエンディングノートは、個人情報の塊です。別立てにしておいて、一部のエンディングノートとは別に保管しておいても良いのではないかと思います。
*こんな人にぴったり・CASE.4*
瀧本宗二さん、72才、男性。嘱託職員期間も含め65才までサラリーマンとして勤め上げ定年退職し、現在は地域のボランティアに不定期に参加しています。1人暮らしですが、ひとり娘の家族3人が徒歩圏内に住んでいます。
5年前に、同い年の妻を交通事故で亡くしてしまいました。突然のことだったのでどうすれば良いか分からない状態でしたが、娘から、妻がエンディングノートをつけていたことを聞きます。仕事やボランティアでなかなか家にいなかった瀧本さんへと、妻が娘に預けていたものでした。
実際にエンディングノートを見てみると、クレジットカードや保険・公共料金の支払い方や所有資産のこと、また、臓器提供や延命治療拒否の意志表示のことなど実に細かく書き込まれています。瀧本さんは、こんな風に記録や手がかりを残しておくものがあるのかと驚きました。仕事ばかりの人生で家のことは妻に全て任せきりで、エンディングノートのことはなんとなくそういうものがあるという認識しかなかったのです。
結局葬儀の手配や形見分けや遺品の処分、各種手続きを娘主導でひとつずつ終わらせることができた瀧本さん。娘から「エンディングノートがなかったらこんなにスムーズに片付けることができなかったわ。お母さんには本当に感謝しているの。私も見よう見まねで、最近旦那と一緒にエンディングノートを書き始めたのよ」と言われ、妻と話をする時間を作ることができなかったことを反省するとともに、若い自分の子どもたちがもう終活を意識していることに非常に驚きました。
色々調べてみると、ダウンロードしてパソコンに書き込むことができるエンディングノートがあるということがわかりました。仕事人間の瀧本さんは、手書きが大の苦手で、ノート型のエンディングノートに二の足を踏んでいましたが、パソコンならできるのではないかとこの「百人百想」のエンディングノートを使うことにしました。
仕事でバリバリ使ってきたためパソコンはお手の物の瀧本さん。思ったよりも書くスピードが早いため、娘夫婦にはもうそんなことまで書いたのかと驚かれました。
ボランティアに参加するようになったのは去年から。エンディングノートの「地域活動」の欄に触発されてのことです。
◇葬儀ベストネットHP内コンテンツ「エンディングノート」◇
http://sougi.bestnet.ne.jp/endingnote/index.php
<PDF形式・印刷の場合はA4サイズ39P>
葬儀社・ペット葬儀社・家族葬・訃報・お葬式・葬儀辞典・葬儀マナー・しきたり・ホテル葬・香典返し・社葬などをご案内する葬儀のポータルサイト「葬儀ベストネット」がプロデュースしたエンディングノートダウンロードサービスです。
PDFのみのサービスなので、印刷して書きます。36の項目毎に印刷が可能で非常に使いやすく、様々なジャンルを網羅しているのが特徴です。自分にとって必要だと思う箇所のみをピックアップすることができ、コンパクトなエンディングノートを作成したいと思う方にぴったりです。
項目は以下の通りです。
・遺言のこと
・感謝のメッセージ
・看病・介護と死について
・病院・日常生活
・人生・自分史
・趣味・好み・こだわり
・思い出アルバム(フリー)
・思い出アルバム(我が家)
・ペット
・葬儀の希望
・埋葬
・供養
・家紋
・家族・親族リスト
・家系図
・友人・知人リスト
・関係会社・団体リスト
・ご近所リスト
・記念日リスト
・預貯金
・銀行口座・自動引落し
・不動産
・住居
・ローン
・株式
・税金
・クレジットカード
・年金・健康保険・生命保険
・損害・傷害保険
・会員大会・会員権手続き
・車
・携帯電話
・パソコン・タブレット
・インターネット回線
・ブログ・SNS等
・形見分け・寄付
通常のエンディングノートなら3〜4項目がひとまとめになっているイメージですが、このタイプではあえて細分化し、それぞれ記入できる情報欄を通常の2〜3倍に増やしています。不要な項目はダウンロードせず、必要だけれど1Pでは足りない項目はその分コピーすれば良いので、実に無駄のない、自分だけのエンディングノートを作ることができます。
エンディングノートの基本項目はすでに挙げた5つですが、もちろんすべてを満たしていなければいけないわけではいけません。使う人の事情によって不要な項目もあるでしょうし、いくつかの項目をまとめた方が使いやすい人もいるでしょう。既製品ではなく自分のスタイルに合わせてエンディングノートをカスタマイズしたい方、明確な目的を持ってエンディングノートを書こうと思っている方にぴったりです。
*こんな人にぴったり・CASE.5*
奈良良一さん、45才、男性。IT関連企業の代表取締役社長。デザイン会社を経営している2才年上の妻と、猫2匹と都内のマンションで暮らしています。5才上の兄は研究員として長年アメリカに住んでいます。妻に兄弟姉妹はおらず、お互いの両親はすでに亡くなっています。
先日学生時代の友人と集まり、年齢の関係からか自然と終活の話になりました。親の介護をしていたり、墓じまいをしたりと皆それぞれに終活を始めていることを知った奈良さんは、いろいろと話を聞くうちにエンディングノートを書くことが重要だとわかり、帰宅後早速さまざまな種類の商品を検索し始めます。最初はノート型に絞って探していましたが、会社を経営している自分の希望に合うノートがなかなか見つからず困っていました。そこで自分と同じ経営者の友人にメールで相談したところ、ダウンロード型のエンディングノートがあるということを知り、「葬儀ベストネット」という会社のエンディングノートを教えてもらいました。資産を多く持っている自分にぴったりだと思い、不動産やカード情報などから書き始めることにしました。
同じ経営者の妻にも「こういうものがあるみたいだよ」と教えたところ興味を持ったようで、今は毎週土曜日の夜の1時間にふたりで一緒に書くようになりました。お互いに両親が他界していることや子どもがいないこと、兄弟は夫の兄だけだが生活基盤が違うこと、お互いの会社のことなど共通点が多く、ふたりで書いた方がより内容がクリアになるようで、「これで何かあっても安心できるね」と穏やかな気持ちで書き進めています。
ダウンロード型のエンディングノートのここがポイント! ここに注意!
さて、現在使用できるダウンロード型エンディングノートのうち、代表的なものを3種ご紹介しました。
ダウンロード型エンディングノートは気軽に始められるのが魅力ですが、便利であるがゆえに、ノート型エンディングノートとは違った気をつけるべきポイントがあります。メリットと合わせて見ていきましょう。
ポイント①修正・加筆が簡単にできる
ノート型エンディングノートの場合、書く素材に気をつけなければなりません。消しゴムや修正テープで消すことができるとはいえ、書き直しが重なれば重なるほど見栄えが良くなくなってしまいます。
エンディングノートは、内容が変更になることを前提に書く必要があります。病気や財産に関することはもちろん、歳を重ねると、書いた時点で自分自身が希望していたことが変わってきていたということはよくあるのです。
その場合、書き直しに最も適したツールがパソコンなのです。範囲を選択して不要な文章をパッと消したり、単語の移動や貼り付けなどがあっという間にできてしまいます。
特にWordなら、音声入力機能や文章校正機能などが文章作成をサポートしてくれます。
ポイント②環境が整っていれば、どこでも入力することができる
これはノート型やアプリ型にも言えることですが、ダウンロード型の場合、ノートパソコンを持っている方なら仕事の合間に少しずつ入力できるのがメリットです。つまり、仕事道具の他に必要なものが生じたりせず、ノートパソコン1台でほとんどの作業が完結します。もちろん調べ物もできるので、慣れている方なら作業のはかどり具合が大分違うのではないでしょうか?
ネット環境が整っていることが必須条件ですが、慣れた道具を使えるのは大きなメリットになります。
ポイント③改竄されにくい
パソコンで手軽にデータや文章を作成できるということは、詳しい人が使えば簡単にコピーを作成することができてしまうということ。エンディングノートには「財産」という重要な項目があるため、万が一この中の「クレジットカード」の情報が持ち出されたり、データの一部が改竄されてしまったら…想像するだけでもぞっとします。
パソコンで大切なデータを作る場合は、セキュリティ対策をきちんととることが重要です。Wordの機能の中には、パスワードを利用した暗号化があります。
これに加えて「ED(強力な暗号技術とパスワード推測防止の2つの機能でデータを安全に保護)」「アタッシュケース(パスワードだけでなく任意のファイルを解除キーとして、ファイルやフォルダを暗号化・復元できるソフト)」「TrueCrypt(暗号化された仮想ディスクを作成・利用するソフトウェア)」などといったファイルに鍵をかけることができるセキュリティアプリを利用すれば、大切なデータを守ることができます。
その代わり、重要なのがパスワードの管理です。もともと、パスワードのような諸情報をきちんと家族に知らせるために残すのがエンディングノートの役割の一つです。書き始める時に、情報の共有はしっかり行っておきましょう。
ポイント④デジタルデータを使うことができる
音声データ・音楽・動画・写真・Webデータといったデジタルデータを活用すれば、ノートタイプにはない多彩な表現のエンディングノートを作ることができます。
文字だけでは伝えきれないものも、デジタルデータがあれば選択肢が大幅に広がるでしょう。
ポイント⑤データは必ず保存しておく
エンディングノートに限らず、パソコンで作業する場合はデータの保存に気を配る必要があります。
予期しないトラブル(停電や突然のシャットダウンなど)でデータが飛んでしまったりすることはもちろん、機器自体のトラブルも視野に入れておくべきです。
まさに「もしも」の時のためにUSBや外付けハードディスクなどにコピーを作成し、こまめにバックアップして保存をするようにしましょう。
ポイント⑥情報の共有
データの保管場所を自分しか知らなかった場合、いざという時に家族が見つけることができずに困ってしまうケースが少なくありません。セキュリティ上オープンにできませんが、少なくとも家族には情報を伝えておきましょう。
ポイント⑦必ず一度は印刷しておく
パソコン機器は、何かトラブルがあった時にデータ自体を破損してしまうことがあるのが不安です。
「もしも」の時のために備えて、書いた内容を一度は印刷して保管しておくことをお勧めします。印刷することで、意外と見えていなかった箇所に気づくことができるものです。
保管場所は、必ず家族には伝えるようにしましょう。これは、ノート型エンディングノートでも同じです。
終活を始めてみよう! 〜まずはエンディングノートを書くところから
ダウンロード型エンディングノートについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
手軽に始められそうなイメージですが、どれも内容が非常に充実しており、本格的なものばかりだったかと思います。
終活の根本的な要素となるエンディングノートは、とにかく書き始めることが重要です。なかなか意識が向かないという方も、手書きが煩わしいと思っている方も、まずはパソコンで調べてみるところから始めてみましょう。
非常に便利で多彩なデジタルデータをエンディングノート作成に活用できれば、あなただけのオリジナルエンディングノートを作ることができます。
特にパソコンの発展の様は日進月歩。すでに様々なサービスを享受できている私たちですが、これから先さらに「終活」「エンディングノート」に特化したデジタルサービスを使うことができるようになるかもしれません。
パソコンで手軽に、気軽にエンディングノート作成をスタートすることができれば、エンディングノートや終活自体のイメージも大きく変わっていくのではないでしょうか?
エンディングノートは、何才からスタートしても良いもの。今このときの気持ちをしっかり記録しておくことが、いつかあなたが「もしもの時」を意識するようになったときに、何かの指針を与えてくれるかもしれないのです。
まずは、できるところから。是非、ダウンロード型エンディングノートで終活を始めてみましょう。