相続の確定申告は不要だが、相続税申告と準確定申告は必要な場合とは?
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2019年8月22日に公開された記事を再編集したものです。
この記事では、相続に関する税申告について説明します。
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相続の確定申告は不要
確定申告とは、一年間の所得(儲け)に対する所得税と復興特別所得税の税額を申告して納付する手続きです。
相続財産も確定申告の対象となると勘違いされている方がいますが、相続財産については確定申告は必要ありません。ただし、相続人が取得した相続財産から生じた所得にかかる所得税の確定申告は必要になる場合があります。
相続の際に必要となることがある税の申告
相続の際に必要となることがある税の申告には、主に次の3つがあります。
- 亡くなった人の相続税の申告
- 亡くなった人の準確定申告(亡くなった人の亡くなった年等の所得税の確定申告)
- 相続人が取得した相続財産から生じた所得にかかる所得税の確定申告
また、次の場合には、必須ではありませんが、申告すると控除が受けられます。
- 一定の寄付金を支払った場合
以下、それぞれについて説明します。
相続税の申告
財産を相続した場合には、所得税でなく、相続税が課されますが、相続税には基礎控除があり、相続税の課税対象となる遺産額が基礎控除額以下の場合は、相続税がかからず、申告は不要です。
基礎控除額は、以下の計算式によって計算することができます。
3000万円+600万円+法定相続人の数 |
法定相続人とは、相続することができると法律で定められた人のことです。
法定相続人の数え方について詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
なお、配偶者の税額軽減(「配偶者の税額軽減の特例を活用して相続税を目一杯安くする方法と注意点」参照)や小規模宅地等の特例等、申告要件のある規定を利用した結果として税額がなくなる場合は、申告が必要です。
つまり、相続税の申告の要否は、税額の有無ではなく、課税対象の遺産額が基礎控除額を超えるかどうかによります。
相続税の申告について詳しくは、「相続税の申告が不要なケース、自分で申告する方法と申告期限」をご参照ください。
準確定申告(亡くなった年等の所得税の確定申告)
納税者が亡くなった場合は、自分で確定申告を行うことができないので、相続人が代わりに確定申告を行います。
この確定申告のことを準確定申告といいます。
準確定申告について詳しくは「準確定申告が不要なケースとは?必要書類の書き方もわかりやすく説明」をご参照ください。
相続人が取得した相続財産から生じた所得にかかる所得税の確定申告
相続人が財産を相続した場合において、相続財産から所得が生じたときは、所得税の確定申告が必要となることがあります。
相続財産から所得が生じるケースには、主に次の2点があります。
- 相続財産から収益が生じた場合
- 相続財産を売却して譲渡所得が生じた場合
以下、それぞれについて説明します。
相続財産から収益が生じた場合
財産を賃貸して、そこから一定額以上の所得が生じた場合は、確定申告が必要になります。
被相続人(亡くなった人)が賃貸していた財産を相続して、そのまま賃貸した場合、相続開始までの収益については被相続人の所得として準確定申告で申告します。
そして、相続開始後の収益については相続人の所得として相続人が確定申告します。
相続人が複数いる場合は、相続開始後から遺産分割までの間の収益については各相続人がそれぞれの法定相続分に応じて取得し、各相続人がそれぞれの所得を確定申告します。
遺産分割後の収益については、遺産分割協議によってその財産を取得することになった相続人が、その財産の賃料を取得することになります。
なお、被相続人の賃貸事業を相続人が引き継ぐ場合は、確定申告以外にも必要な手続きがあるので、相続に精通した税理士に一度相談しておくことをお勧めします。
相続財産を売却して譲渡所得が生じた場合
譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます(ただし、事業用の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による所得は、譲渡所得にはならず、事業所得等になります。)
ここでは、特に、土地や建物についての譲渡所得について説明します。
譲渡所得の金額は、次のように計算します。
収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
収入金額は、通常土地や建物を売ったことによって買主から受け取る金銭の額です。
取得費には、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれます。
なお、建物の取得費は、購入代金又は建築代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。
譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用のことです。
修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。
そして、特別控除額は、次のようになっています。
- 収用等により土地建物を譲渡した場合 ・・・5,000万円
- マイホームを譲渡した場合 ・・・3,000万円
- 特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・2,000万円
- 特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・1,500万円
- 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合・・・1,000万円
※長期譲渡所得の場合に限ります。 - 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 ・・・800万円
特別控除額の最高限度額は、年間の譲渡所得全体を通じて5,000万円です。
譲渡所得税の税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得とで異なります。
譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得に、5年以下の場合は短期譲渡所得になります。
長期譲渡所得の場合は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)、短期譲渡所得の場合は39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)です。
例えば、30年前に1000万円で取得した不動産を3000万円で譲渡しその譲渡費用が100万円だった場合は、長期譲渡所得なので税率は20.315%となり、譲渡所得税額は、「3000万円−(1000万円+100万円)×20.315%=385万9850円」となります(特別控除がない場合)。
贈与・遺贈(遺言によって財産を取得させること)・相続によって取得した財産を譲渡したときにも譲渡所得が生じ、譲渡所得税がかかります。
換価分割の場合も、遺産分割前とはいえ相続財産を譲渡するわけですから、同様に譲渡所得税がかかります(「換価分割にかかる税金と換価分割の長所・短所、代償分割との比較」参照)。
贈与・遺贈・相続によって取得した財産の課税譲渡所得金額は、贈与者・遺贈者・被相続人(亡くなった人)がその財産を取得した際の取得費を用いて計算します。
取得費が分からない場合などには、取得費を売った金額の5%相当額とすることができますが、この場合には、相続人などが支払った登記費用などを取得費に含めることはできません。
また、長期譲渡所得となるか短期譲渡所得となるかについては、贈与者・遺贈者・被相続人の所有期間と、受贈者(贈与を受けた人)・受遺者(遺贈を受けた人)・相続人の所有期間を通算して判定されます。
なお、相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。
この特例のことを取得費加算の特例といいます。
詳しくは、「取得費加算の特例を受けて譲渡所得税を軽減させる方法」をご参照ください。
また、譲渡所得が生じていなくても譲渡所得とみなされ、譲渡所得税がかかる場合もあります。
詳しくは、「みなし譲渡として譲渡所得税が課税されてしまうケースを丁寧に解説!」の「みなし譲渡所得とは?」の項目をご参照ください。
一定の寄付金を支払った場合
一定の寄付金を支払った場合は、相続税申告時に申告すると寄付した相続財産の相続税が非課税となり、さらに所得税申告時に申告すると所得税の控除を受けることができる場合があります。
詳しくは「遺産を寄付したいと考えているなら知っておくべき大切なこと」をご参照ください。
まとめ
以上、相続に関する税の申告について説明しました。不明な点は、一度、税理士に相談することをお勧めします。
▼実際に「いい相続」を利用して、税理士に相続税申告を依頼した方のインタビューはこちら
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