こんな自筆証書遺言は無効!記入例でわかりやすく解説!トラブルになる恐れのある書き方も紹介
何を書くかじっくり考え、下書きをして、清書して……と、案外時間のかかる自筆証書遺言。
この記事では、一見問題のなさそうに見えるのに無効になってしまう自筆証書遺言の記入例の見本付きでご紹介します。
また、記事の後半では、無効にはならないものの、トラブルになりがちな記入例もご紹介していますので、是非最後までお読みください。
- 自筆証書遺言は原則、すべて手書きする。サインだけ手書きなどもNG
- 書き間違えたときの訂正方法も法律で決められている
- 無効にはならなくても、内容によってトラブルになるケースも
この記事を書いた人
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者が自筆して作成する遺言書のことです。費用もかからず、手軽に書くことができますが、形式に則って書くことで法的効力を持つことができます。
従来は財産目録もすべて自筆で書く必要がありましたが、法改正によって2019年1月13日からは、財産目録については手書きでなくても認められるようになりました。そのため、財産目録はパソコンで作成したり、預金通帳をコピーして別紙とすることも可能となり、さらに作りやすくなりました。
遺言書と遺書の違い
法的な効力を持つことができるのが遺言書、私的なものが遺書です。遺書は遺された人や特別な人宛てに自由な書式や形式で自分の思いを伝えることができますが、法的な効力はありません。
無効になる自筆証書遺言の記入例
遺族に向けて心をこめて書いた遺言書が無効になってしまったら、あまりにも残念です。ここでは、どんな自筆証書遺言書が無効になるのか、記入例をみながらご紹介していきます。
遺言書の本文をパソコン、ワープロで作成してある
・全て自筆でないものは無効
・サインだけが自筆なのも無効
遺言書は全て遺言者の自筆であることが必要です(「財産目録」は別紙としてパソコンで書いても無効にはなりません)。
他人が書いたと思われる部分がある
右下の署名は他人が書いたものです。全文を自筆することが自筆証書遺言のルールです。
日付があいまい
最後の署名欄の日付が明確ではありません。しっかりと日付まで記載しましょう。西暦か和暦かはどちらでも大丈夫です。相続させる財産は、別紙として財産目録をパソコンで作成しても問題ありません。
〇月末日と記載した場合、その月の最後の日と判明するため有効とされるようです。しかし、無用な混乱がおこらないよう、しっかりと日付まで記載するほうがよいでしょう。
日付・署名・押印がない
以下のようなケアレスミスには充分に注意しましょう。
- 自書した作成日が書かれてない
- 署名がない
- 押印がない
修正や変更が所定の方式ではない
・修正液で記入間違いを直したものは無効
少し見づらいですが、この遺言書は長女鎌倉一子さんの生年月日の和暦を修正テープで消した上に書いています。
自筆証書遺言を訂正する場合は、改ざんを防ぐため訂正方法が法律で定められています。具体的な方法までは法律でも定められていませんが、一般的な訂正方法は、間違えた部分に二重線を引きその部分に押印、「〇〇について何字削除(または追加・加入)」など、訂正箇所を示して、変更した旨を付記します。
2人以上の連名で署名されている
・共同で書かれた遺言は無効
この例では、夫婦の連名になっています。2人以上の者が同一の証書で遺言することはできません。共同遺言の禁止(民法975条)として法律で定められています。
書き方以外で無効となる場合
全文が自書であり、形式に則って作成された遺言書であっても、以下のような場合は無効になります。
- 遺言能力がないと判断された遺言
- 後見人側に利益となる遺言 ……など。
遺言能力とは、15歳に達しており、遺言の内容と、その遺言を書くことによってどのような効果が発生するのかがわかる能力のことです。
トラブルにつながるおそれがある書き方
自筆証書遺言として形式的には有効でも、相続人の間でトラブルになるような遺言は避けたいものです。
内容が不明確な場合
本文には、妻にすべて任せますと記載されています。
これを見た妻は「自分に財産を全て相続させる」と思い、その他の相続人は「妻が中心になって遺産分割をおこなう」と思うかもしれません。
このように、内容が人によって解釈が変わってしまうような記載はトラブルになる可能性がありますので具体的に書きましょう。
葬儀の指定がある場合
付言事項には、法的効力を望むことでない、自分が遺族に伝えたいことを書き記すことができます。
この例では、葬儀の希望が書かれています。もし、この遺言書を検認するタイミングで初めて見たとき、故人の気持ちとは違ったスタイルの葬儀が済んでしまっているかもしれません。相続人はこの遺言書を見たときに後悔に苛まれたり、他の相続人とトラブルに発展する可能性もあります。
もし、死後すぐに伝えたいことがあるようでしたら、相続の遺言書とは別に「葬儀について」と表書きしておき、死後すぐに開封すること、と書き添えておくと良いでしょう。
遺留分の考慮がない場合
妻と子供1人がいる場合、法定相続分は各2分の1です。しかし、この遺言では、妻の相続分と親族以外の方へ遺贈させると記載してあり、長男への相続分がないようです。その理由を付言で説明していますが、万が一、長男が納得できないときは、法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合の遺留分を請求するかもしれません。
悪気がなくとも結果が後味が苦いものにならないために、法定相続人の遺留分は考慮しましょう。
まとめ
自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文(日付および氏名まで)を自書して押印することによって成立しますので、ルールを踏まえて作成しましょう。
所有している財産の大小とは関係なく、相続における各相続人同士の感情の問題をいかに円満に解決するかというということに遺言書は効果を発揮します。遺言書に書かれた遺言者の意思をしっかり尊重するために、専門家にサポートしてもらうことをおすすめします。
いい相続では、相続に精通した専門家をご紹介しています。相談も初回面談も無料ですのでお気軽にお問い合わせください。
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