非嫡出子の法定相続分や遺産分割は?認知や相続でもめないためのポイント
非嫡出子とは、結婚していない男女から生まれた子どもをいいます。例えば事実婚などの内縁関係や、不倫関係により生まれた子どもが非嫡出子となります
この、非嫡出子の相続は、嫡出子(結婚した夫婦の間に生まれた子ども)と何か違うのでしょうか?相続割合が減らされたり、不利になることはあるのでしょうか。この記事で詳しく解説します。
非嫡出子とは
非嫡出子とは、前述のとおり婚姻関係のない男女間で生まれた子どもです。母親と非嫡出子の親子関係は確実ですが、法律上は父親との親子関係がないため、父親が亡くなっても遺産相続には参加できません。
非嫡出子は父親の実子であっても、法律上は他人として扱われるため、財産を遺したいときは認知する必要があります。
嫡出推定とは
母親から生まれた子どもが必ずしも夫の子とは限りません。だからといって、実際にDNA鑑定をしないと嫡出子として扱えないというのは不便です。そのため、妻が婚姻中に妊娠して生まれた子どもは、生まれた時点から嫡出子として扱われます。これを嫡出推定といいます。
推定される嫡出子に該当するのは、以下の3つです。
- 婚姻期間に妻が懐胎した子ども
- 婚姻届けを提出した日から200日後に生まれた子ども
- 結婚解消・取り消しがあった日から300日以内に生まれた子ども
ただし、夫が推定される嫡出子に疑問をもった場合、夫は嫡出否認の調停の申立または訴えを起こすことができます。ただし、この申立または訴えができるのは、出生を知った時から1年以内に限られます。
2024年4月1日から嫡出推定制度の改正民法が施行されます。これにより「離婚後300日以内に生まれた子の父は前夫」という規定が見直され、再婚後に生まれた子の父は「現夫」とされます。これは再婚後に妊娠した子供の父親を明確にし、子どもの利益につながるという考えに基づいています。
また、これに伴い女性の離婚後100日間の再婚禁止期間も撤廃されます。
推定されない嫡出子
推定されない嫡出子とは、結婚している男女間に生まれたけれど、夫の子どもであるという推定がされない子どもをいいます。いわゆる「授かり婚」などです。
婚姻届の提出前にすでに妊娠しており、結婚後200日以内に子どもが生まれた場合は夫の子どもであるとは扱われないことになります。しかし、男女が民法上の結婚をしていれば出生届は受理され、嫡出子として扱われます。
推定の及ばない嫡出子
嫡出推定の期間内に生まれたものの、父子関係が不明確な子どもが推定の及ばない嫡出子です。 例えば、父親が長期の海外出張をしている間に妊娠した場合や、結婚解消の数年前から別居し、夫婦の実態が失われていた場合などです。
このような場合、妻が妊娠したのは夫の子どもではないのは明らかですが、夫婦が民法上の結婚をしていれば、子どもは嫡出子としての身分を得られます。
▼どの程度相続税がかかるか計算してみましょう▼認知とは
認知とは、法律上の親子関係を成立させるものです。この親子関係は一度認知すると、子どもが死亡するまで生じます(特別養子縁組を除く)。
認知された子どもは、以下の権利を得ることができます。
- 養育費を求める権利
- 相続する権利
- 面会交流ができる権利
認知の方法
認知には大きく分けて5つの方法があります。
任意認知
任意認知とは、父親が自身の意思によって子供を認知する方法です。父親が本籍地のある役所に認知届を出すことで認知ができます。
胎児認知
母親が妊娠中に父親の意思でおこなう認知を胎児認知といいます。こちらは出産するまでは母親の同意が必要です。
裁判認知(強制認知)
強制認知は父親が明らかになっているのに拒否する場合に、強制的に認知させる制度です。認知を請求するためには、調停を申立てする必要があり、調停が成立しない場合に認知の訴えを提起することになります。
遺言認知
父親が亡くなった後に遺言によって子どもを認知させる方法です。なんらかの事情で生前認知できない場合に、せめて自分の遺産だけでも相続させてあげたいというときに使えます。
遺言認知で認知された子どもには相続権が発生しますが、相続人が増える以上、相続争いが始まるかもしれません。
死後認知(死後の強制認知)
認知をしてほしいが既に父親が死亡している場合に、死後認知という手続きができます。父親の死後3年以内に父親の最後の住所地を管轄する検察庁の検察官を相手として訴えを提起します。
この手続きでは、死亡した父親の遺族を探し、その人にDNA鑑定の協力してもらい父子関係を証明していかなければなりません。
▼あなたに必要な相続手続き、ポチポチ選択するだけで診断できます!▼非嫡出子の法定相続分
父親に認知されると法律上の父子関係が成立するため、非嫡出子の相続割合は嫡出子と同じになります。かつての民法では非嫡出子の法定相続分を嫡出子の1/2とされていましたが、2013年12月5日に民法が改正されました。
法定相続人
- 配偶者は常に相続人となる
- 第1順位:被相続人の子供
- 第2順位:被相続人の親
- 第3順位:被相続人の兄弟姉妹
法定相続割合
- 配偶者と子供が相続:配偶者1/2、子供1/2
- 配偶者と被相続人の親が相続:配偶者2/3、親1/3
- 配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
非嫡出子の相続分が嫡出子と同様にならないケース
前述のとおり、2013年9月5日から非嫡出子と嫡出子の相続分は同じとなりましたが、以下の2つの場合は旧民法が適用されるため、嫡出子の1/2となります。
- 2001年7月1日から2013年9月4日の間で発生した相続
- 遺産分割協議または審判等により各自の取得分が確定している
遺産分割協議後に非嫡出子の存在がわかった場合
父親が非嫡出子の存在を伝えずに亡くなった場合、遺産分割協議が終わった後に発覚する場合があります。原則として、遺産分割協議は相続人全員で参加となっているため遺産分割協議は無効となり、やり直しになります。
「もう一度遺産分割協議をやり直すなんて面倒」と思っても、相続人全員の署名がされていない遺産分割協議書では相続手続きに応じてくれません。
▼めんどうな相続手続きは専門家に依頼しましょう▼非嫡出子の相続に関するトラブルの予防策
非嫡出子がいる場合は、相続トラブルを避けるために生前の段階から対策しておくことをおすすめします。相続トラブルの予防策として、以下が挙げられます。
生前に非嫡出子を認知する
非嫡出子の認知は遺言でもできますが、できれば生前に認知をおこない配偶者や嫡出子にもその存在を伝えておいたほうがよいでしょう。現在の家族関係が悪化する可能性もありますが、いずれバレることになるなら早いほうがよいと思われます。
遺言書を作成する
遺言書を作成して、あらかじめ遺産の分け方を指定しておけば、嫡出子と非嫡出子が遺産を巡って争う事態は避けられる可能性があります。また遺言で非嫡出子を認知しても良いでしょう。
遺言執行者に行政書士などの専門家を指定しておくと、遺言の内容を確実に実現してもらえます。
▼まずはお電話で相続の相談をしてみませんか?▼この記事のポイントとまとめ
以上、非嫡出子の相続について解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 認知された非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じ
- 遺産分割協議を終えた後に非嫡出子の存在が明らかになった場合、遺産分割協議がやり直しになる
- 相続トラブルにならないためにも、生前のうちに対策をしておいたほうがよい
遺言で非嫡出子の認知も可能ですが、後々のトラブルを防止するためにも生前のうちから配慮しておくことをおすすめします。
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