「長年のいろんな思いを受け止めたい」複数の弁護士が担当に付いて、サポートを行う法律事務所
かつて弁護士過疎問題を解消するために、地方の法律事務所の所長を経験した長谷山 尚城先生。「武蔵小杉あおば法律事務所」は、その経験をもとに川崎市内でも弁護士が少なかった武蔵小杉駅前に開設されたそうです。
地域に貢献したいという熱い思いのある長谷山先生に、過去の事例や事務所開設の経緯などを伺いました。
相続問題に限らず、消費者事件・企業法務・一般民事など幅広い分野の解決実績あり。学生時代はアメリカンフットボール部に所属し、現在は東京大学のアメリカンフットボール部OBOG会事務局長を務めている。
武蔵小杉あおば法律事務所
遺産の使い込みを取り戻した事例
―先生が実際に解決した事例を教えていただけますか?
最近多いのは遺産の使い込みですね。被相続人と同居している相続人の1人が、被相続人のお金を自分の金のように使い込んでしまうケースです。例えば、お母さんの預貯金とかを管理していた娘さんが、お母さんのお金を自由に使ってしまって、他の相続人がそのお金を娘さんから取り戻すというようなケースが多いですね。
お母さんと同居していた娘さんはお金を管理しているだけと思っていても、他の相続人からはお母さんを囲い込んでいるように見えてしまいます。勝手に使い込んでいるんじゃないかと思うわけですね。
こういうケースの場合、まずは、使ったお金を誰がおろしたかを調査することからスタートします。お母さんが施設や病院に入っていれば、他の家族が使ったことが分かります。しかしお母さんが元気だった場合、ご本人がお金を下ろして生活費に使ったこともあり得ますよね。
そういう時には、引き出されたATMの位置を確認したりします。娘さんの勤務地の近くのATMであれば、娘さんの可能性が高いですし。
あとはそれまでの生活と、お金の引き出し方がどれだけ変わったかを調べます。それまでは月々10万〜20万円で生活できていた人が、娘さんの家族と同居するようになって100万円とか使うようになったらこれは怪しいってなりますよね。
そのように調査をしていき、医療費・食費などの通常考えられる費用を差し引いても金額がおかしい場合は、その分が使い込みだと主張していったりします。
もっとも、最終的にはそのお金を返せという判決が出るより前に、「あなたは生前にたくさんもらっているから、その他の遺産(例えば不動産)の取り分はなし」みたいな形で話し合いで決めることも多いです。最終的には、遺産全体の中で調整するんですね。
遺言書に関連するトラブル
―相続問題で先生が力を入れている分野はありますか?
新型コロナウイルスの影響で、公正証書遺言が作成できないことも
私が注力してるのは遺言の有効・無効を争う事案です。
ここ最近はコロナの影響で公正証書遺言を作成しようとしても公証人と面談が取れない、施設まで来てもらえないということもあります。公正証書遺言の代わりに自筆証書遺言を書いたというケースも。でも自筆証書遺言は、形式が正しくなかったりして有効ではない場合が多い。
自筆証書遺言が遺言としては形式的に無効であっても死因贈与として有効になるかが争点になったりと、ちょっとマニアックな形の案件も増えてるかなと思います。仮に遺言書としては有効でなかったとしても死因贈与と認められれば、故人の希望は叶えられることが多いですから。
公正証書遺言の方が、紛争になりにくい
―遺言を作成する際は、自筆証書遺言よりも公正証書遺言の方が良いのでしょうか?
そうですね。やはり公正証書遺言の方が、自筆証書遺言よりも争われる率は低いです。遺言を作成するときに公証人がご本人の遺言能力の確認をしますから。
もし遺言無効を争うという場合には、病院のカルテや施設の記録の取り寄せを行います。そういう記録の中には認知症テストの結果などもあるので、その結果も証拠になりますね。それに認知症の症状にも波があるので、遺言を作った時期の資料を見て遺言能力の判断をしています。
あと遺言の内容にもよるんですよね。「全財産を1人の相続人に渡す」っていう簡単な内容だとそこまで遺言能力が高くなくても大丈夫です。でも「この不動産は長男、こっちの財産は次男、この預貯金は孫に、この株式は甥に渡す」というような複雑な内容だと、本当にそこまで認知能力があるのかが不自然になることもあります。
ご本人が理解して遺言を書いていることが前提なので、あまり複雑だと無効になる可能性が高くなるわけですね
遺言書を作るときに気をつける点は、争われないようにするために遺留分に気をつけることですね。そもそも明らかに遺言が無効といえるケースはそれほど多くないので,遺言書に関連して訴訟をする場合には、遺留分が侵害されているから一緒に遺言無効を主張するパターンが多い。遺言無効が駄目だったら、遺留分の侵害を主張するわけです。
相談の多くは「自分の相続分が法律でみとめられている取り分よりも少ないから納得がいかない」というもの。それに加えて被相続人が高齢であることも多いので、認知症だったということであれば、一緒に遺言無効を主張するんですね。
ただ、一般に、公正証書遺言は無効の証明をすることが難しい。そのため公正証書遺言で、最低限その人の遺留分が保証されている場合は「公正証書については争っても無効になる可能性は少ないです。少なくとも遺留分はもらえるので、ここで手を打つというのも一つの方法だとは思いますよ」とお伝えすることもあります。公正証書遺言の有効性を争うことが難しければ、費用対効果でマイナスになってしまうこともありますしね。
弁護士過疎問題を解決したくて事務所を設立
―どうして武蔵小杉駅前に事務所を開業しようと思ったのですか?
地元である川崎市の弁護士過疎問題を解決しようと思ったからです。
私は司法修習生の時に札幌で修習していたのですが、その際、北海道の北の方にある紋別市に行きました。そこで「紋別ひまわり基金法律事務所」を1人で運営している女性弁護士と出会いました。
ひまわり基金法律事務所(公設事務所)は、弁護士過疎解消のために、日弁連・弁護士会・弁護士会連合会の支援を受けて開設・運営される法律事務所です。日弁連から開設・運営資金の援助が行われるほか、事務所ごとに日弁連・地元弁護士会・地元弁護士会連合会より推薦された委員からなる「支援委員会」が設置され、所長弁護士の活動をサポートしています。引用:日本弁護士連合会
その先生は弁護士過疎地域ならではのやりがいを熱く語ってくれて、「これだ!」って思ったんです。「私も公設事務所の弁護士になりたい」って思ったんですよ。
その後弁護士になり、まず2年間東京の事務所で修行をしました。そして夢がかなって3年半熊本県の山鹿市というところのひまわり法律基金事務所の所長を務めました。
ひまわり基金法律事務所の任期を全うした後、元いた東京の事務所に戻り、1年ほどたってから、この「武蔵小杉あおば法律事務所」を開業しました。
私は川崎市の出身ですので、市内のどこで開業するか考えたときに「どうせならあまり弁護士がいない地域で事務所を作りたい」という思いがありました。ひまわり基金法律事務所での経験がありましたから、弁護士がいないエリアで「地域の人のお役に立ちたい」と思ったんです
私が事務所を設立した建てた12〜13年前は、武蔵小杉駅周辺に法律事務所が2つくらいしかありませんでした。川崎駅前にはたくさんありましたが、市内での弁護士過疎というか弁護士偏在という問題があったんです。
それで地域に貢献できると思って、武蔵小杉駅前に事務所を開設しました。
―熊本のひまわり基金法律事務所でのお仕事はいかがでしたか?
多種多様な案件をやりましたよ。まだ3年目の新人弁護士でも、いろんな事件を経験できました。弁護士の原点って依頼者から感謝してもらえることだと思うんですけど、その地域の方に「先生が来てくれてよかった」って言葉を何回も頂いて本当にうれしかったですね。
私が行ったのはそれまで約30年間弁護士がいなかった地域。なので30年分の案件が温まっていたんですよ。弁護士に相談したくても、何十キロメートルも離れたところまで行かなきゃいけなかった地域なので、地元の方の感謝を強く感じられましたね。
長年の思いをしっかり受け止める
―相談を受ける際に、心掛けていることを教えてください。
ご相談者の思いがたくさんあると思うので、しっかり話を聞こうと思っています。相続は兄弟同士で争っていることも多いですから「50年前にあいつだけ高校行かしてもらって、自分は中学卒業しただけだ」などの不満がいろいろ出てきちゃうことが多いんです。
結局、最終的には、お金でしか解決できないところもあります。もっとも、その前に依頼者の話を聞いて、どう不満を無くしていけるのかをしっかりと考える。そうやって色々と考えた結果、私が提案した落としどころを「先生が言うなら」と信頼して納得していただけるのが理想かなと思います。
信頼関係が築けていないと、こちらがどんなに良いと思って提案しても受け入れてもらえないこともありますから。ご依頼者との信頼関係構築という意味でも、いろいろお話を聞ければと思います。
また事務所としては、事件に関しては原則、2人で対応するようにしています。法律の解釈というのは一義的に定まるものではないので、解決する方針も2人の弁護士で議論しながら立てるようにしています。どうしても1人だと見落としがありますし「こういう考えがあるんだ」と発見もありますから。
加えて担当の2人だけでなく、事務所の他の弁護士にも相談することもありますので、事務所全体4名のノウハウを生かして対応しています。
相性の合う弁護士を見つけてほしい
―インタビューをご覧になっている方に、弁護士探しのアドバイスをいただけますか?
まず、何か困ったことがあったら、早めに弁護士に相談してください。その際、一か所に絞って決める必要はありません。
最初に相談した弁護士について何か気になる点があったら、別に法律事務所を回ってみてください。弁護士の第一印象も意外と大事。それに「多少強引にでも、強く言ってくれた方が頼りがいがあるから良い」とか相性があると思うんですよ。私は依頼者の意向を大事にするタイプなので、あまり強引には事件処理を進めたりはしません。ですので、強く言ってほしいタイプの方には合わないかもしれないですよね。
相続はすぐには解決できる問題ではないです。短くても半年、長い場合には2~3年はかかってくるものですから、弁護士のキャラクターとマッチングするかどうかは大切ですね。
当事務所に相談に来たからといって、うちで依頼しなくてもいいと思うんです。相性が合わないと思ったり、別の弁護士の話を聞いてみたいと思ったら、別の事務所に相談してみても良いと思っています。そうやって、他の事務所もみた結果、最終的に、当事務所がよいと思って頂き、当事務所に依頼して頂ければうれしいですね。
女性弁護士を探している方は、当事務所には女性弁護士もおりますからご希望に応えられるかと思います。またWeb相談も行っているので、遠方だったりWebで相談したい方も気軽にご相談ください。
―ありがとうございました!
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