ビジネスマンのキャリア15年。豊富な実績と高い傾聴スキルで依頼者に寄り添う
「ゆるりとした雰囲気で話しやすい」と相談者からの信頼も厚い山下 忠弘弁護士。最近まで自治体内弁護士として働き、今年(2021年)4月に弁護士事務所を開業しました。
弁護士になる前はビジネスマンとして15年のキャリアがあるそう。「これまでの経験が弁護士業務に生かされています」と語る山下弁護士の経歴や、相続事例についてお話を伺いました。
ビジネスマンとして15年の経験を経て弁護士へ転身。法律家としては遅いスタートであるものの、試行錯誤しながら経験とスキルを積み,ここまで信頼と実績を積み上げてきた。
山下忠弘法律事務所
目次
弁護士としてのキャリアを積むために、自ら自治体内弁護士に応募
―先生は、最近まで自治体で働いていたそうですね?
そうですよ。今年(2021年)の3月まで弁護士資格を持ちながら岡山県早島町の「自治体内弁護士」として働いていました。いわゆる「企業内弁護士」と似た感じですね。
なので企業法務と同じような「コンプライアンスの推進」を目的にいろいろと対応しましたね。
具体的に言うと、自治体でも企業と同じように老後問題があったり。それと住民や業者とのトラブル、ほかにも内部統制がいまひとつ整備されていなかったので、そのあたりをお手伝いした感じです。
自治体内弁護士を3年半ほどやって3月に任期満了となりました。そして4月に山下忠弘法律事務所を開業しました。開業したばかりなんですよ。相続の依頼はまだ1件ですが、今までの多く担当してきましたから、それなりに実績もありますよ。
―自治体内弁護士は聞き慣れない言葉でした。どうして自治体内弁護士になったんですか?
もともとサラリーマンだったんですが、弁護士になるにあたって地方に開業したいと思っていました。その後、まずは東京の事務所で弁護士をスタートして、企業法務を主にやりました。他にも個人からの依頼、相続や遺言、交通事故なんかも。
しかし、東京での弁護士業務は自分に合っていない気がして。「街弁(まちべん)をしたい。地方のほうが自分の性に合っている」と思ったんです。
街弁っていうのは、いわゆる身近な地域の弁護士です。相続問題や男女問題も含め「もっと身の周りのトラブルでお役にたちたい」、その思いが強くなってきて。
でもいきなり地方に行っても足場がないので、事務所を開業する前のワンステップに「自治体内弁護士で経験を積んでおこう」と思って自分で応募したんです。
「ほどよく都会で住みやすい」岡山で弁護士事務所を開業
―そういった目論見があったんですね。東京は山下先生の性に合いませんでしたか?
地元から上京して東京の大学に通っていたんですが、合わなかったですね。人が多すぎる。
転職のときに西日本の会社にしようと思ったんですが、その会社は入社して2か月で東京の支社と合併してしまって。問答無用で「お前は東京に行け」と言われて、泣く泣く東京で働いてましたね。
―地元での開業は視野に入れなかったんですか?
そうですねえ。地元は愛媛の松山で、そこでの開業も若干考えたんですけど…ちょっと田舎すぎるというか、人口が減り続けているので。まあ難しいところです。
岡山は良い感じ。気候も温暖で、ほどよく都会でほどよく田舎。住みやすいです。
事務所はJR岡山駅から徒歩3分ほどです。駅の近くにしました。この辺は車社会なのであまり駅からの距離にこだわらない弁護士も多いんですが、高齢の方でも車以外の交通手段で来れるように。都会のように、駅から近いから家賃が高いこともありません。
―事務所を1人で開業して、苦労したことはありますか?
大変なのは事務や手続き、電話対応などすべて自分でしないといけないこと。あと法律的なところで悩んだとき気軽に聞ける弁護士がいない。自分で考えて責任をとらなきゃいけない、それは当たり前なんですけど。
岡山に来て、知り合いの弁護士が何人かできました。法律について相談したり、一緒に勉強しながらお互いに助け合っています。
意外なテクニックで紛争を素早く解決した事例
―印象に残った相続の事例はありますか?
相手方がわりと無茶な要求をしてきた事例がありました。法定相続分とは全くかけ離れた「遺産の7割、8割よこせ」っていう。交渉ではまったく埒が明かなかったんです。
でも調停になったときに、ある程度話が進んだ段階で調停委員さんが相手方を説得してくださったんですね。「その要求は無理筋ですよ」と。
調停委員…
裁判官または調停官と共に調停委員会のメンバーとして、当事者双方の話合いの中で合意をあっせんして紛争の解決に当たっています。
調停は、どちらの当事者の言い分が正しいかを決めるものではないので、調停委員は、当事者と一緒に紛争の実状に合った解決策を考えるために、当事者の言い分や気持ちを十分に聴いて調停を進めていきます。引用:裁判所ホームページ
調停委員さんってさまざまなんです。調停が成立するように中立的な立場から説得してれる人、「それは難しいと思いますよ」と説得してくれる人もいる。積極的に関与しない人もいます。
私が相手に専門家の立場でなにか言っても所詮、対立している相手方の代理人なので。あまり納得してもらえないところがある。でも、その事例では調停委員さんが説得してくれて矛を収めたんですね。
似たことが他にも1回あって、調停委員さんを味方に付けるというか「相手方と交渉するだけでなく、調停委員さんへの説得も大事にしないと」と実感しました。調停委員さんから言われると相手方も耳を傾けて「自分も悪かったな」と反省してくれることがありますね。
その案件は審判まで行かずに調停で解決して、依頼人の方も満足していただけた。交渉はしますけど、埒が明かないときは割とすぐ調停に移行するのを基本線にしていますね。
協議だと話が平行線。相手方も法律の専門家ではないのに、ネットで偏った知識を大量に仕入れていたりもする。「所詮、敵方の弁護士が言っているんだ」という見方もされてしまうし。説得したくてもうまく進まない。
問題の長期化は依頼者にとって1番のストレス、いたずらに長引かせるのは良くありません。もちろん長引かせるために妥協するのは本末転倒ですが。速やかに解決するのも依頼者にとって大きな利益、非常に意識するところですね。
ビジネスマンの経験が、依頼者への理解を深める
―どうして会社員から弁護士に転身しようと思ったんですか?
そうですね、やはりまあ「自分が誰かの役に立っている」ことをよりダイレクトに感じられる仕事がしたかったんです。
やっぱり会社員だと、利益を与えられる人との間にワンクッション、ツークッション挟まれますから。もちろん、普通にまっとうな会社だったら、役に立っているからお金がもらえるんだけど、実感しにくいですから。
―会社員が長かったからこそ、弁護士になって生かされたことはありますか?
まあ、依頼者の気持ちに共感できることですね。「働いているとこういう場合もありますよね」「それは辛かったですね」みたいに。やっぱり会社員にとって、弁護士に相談していることを会社にばれたくない人もいて「それもよくわかる」と思いますね。
―山下先生が会社員のとき、会社に不満などはありましたか?
やっぱり、不満はありましたねえ。基本的なブラック企業のような場所で働いて来ましたので。よく「給料の半分は我慢料だ」と言われたモンです。
―依頼者に接するうえで心掛けることはありますか?
ある程度、選択肢は示してあげられるようにします。こういう方法もあるし、別の方法もある。それぞれメリット・デメリットがありますと。
そして、最終的に「じゃあどの方針で行きましょうか」という話をするようにしています。最初から決め打ちするのではなく、依頼者に情報提供したうえで本人に決めてもらう。
なかなか決められない人もいるので、そのときは「これがベストだと思います」と示す場合もありますが、あくまで自身で決めてもらうことに前提としています。
主体は依頼者で、サポートする存在が弁護士ですからね。
―相続問題を扱うとき、気を付けていることはありますか?
相続問題に限って言うと相続人が超高齢化している。相続に関する紛争が増える理由はここだと思います。
もう引退した方、引退間近の方にとっては、相続が人生で最後のお金を増やせるチャンスになっているところもあるので。
―どのような理由で、遺産の取り分を主張するんでしょうか?
千差万別ですわなあ。「私のほうが介護してた」「近くに住んでいた」あげく「男だから」「長男だから」いろいろありますね。
高齢の相続人が認知症になっていたり。相続人の1人が認知症の案件もありました。そのときはなんとか成年後見人を付けてもらって、進めましたね。
やはりそうしないと相手方の権利も守られないし、後から紛争が蒸し返される恐れもありますから。
相談を検討している人へのメッセージ
―相続問題の相談を検討している人に向けて、メッセージをお願いします。
トラブルになりそうなときは早めに相談に来てください。感情的なもつれが起きる前に。時間が経つほど葬儀費用であったり、家の管理費用であったりの支出で問題がさらに複雑になってしまうんですね。そうなると余計解決が面倒になりますから。小さなことでも良いので、お話に来てくださいね。
―ありがとうございました!
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