「事件は常に動いている」と柔軟な対応で早期解決へ。約20年の実績をもつベテラン弁護士
札幌市に弁護士事務所を構える橋本智弁護士。自らを「古いタイプの弁護士」と言いつつも、穏やかな笑顔で受け答えを行う姿が印象的です。これまで相続、離婚などの一般民事全般を多く担当してきたそうです。
今回は、遺産相続問題の解決事例や弁護士に依頼するタイミングなどを伺いました。ぜひ、参考にしてください。
北海道生まれ札幌育ち。「東京の満員電車はきつい」と札幌市中央区に事務所を開業。
「弁護士だからといって正義を振りかざしたくない。目の前の依頼を真剣にこなすだけ」と職人気質な一面も。
橋本智法律事務所
目次
高齢者住宅の入居者から、相続の依頼を受けることが多い
―相続の案件はどのくらい受けていますか?
相続案件は個人の依頼者から相談される場合と、顧問先や関わっている高齢者住宅の入居者から依頼されることが多いですね。相続全般…遺言、後見あるいは遺産分割など幅広く対応していますね。
―遺産相続以外だと、どのような案件を受けているんですか?
刑事事件は少ないかもしれません。相続、離婚、交通事故などの一般民事やそのほかにも保険会社などですね、金融機関の破綻が多かった時期はそういった案件も受けていました。
遺言書があっても紛争になった事例
―先生がこれまで担当した相続案件のなかで、印象に残っているものはありますか?
遺言書でもめるケースは結構ありますね。遺言書そのものに不備があったり、遺言書がきちんとできていても取り分で納得しない相続人がいたり。
遺留分以上の取り分を要求してくる場合
遺言書の不備がなくてもめるのは、「これだけ遺産があるのに私の取り分が少ない」という場合ですね。一定の相続人には遺留分(最低限遺産を取得できる取り分)が保証されているんですが、納得しないケースです。
相手が納得しないときは、遺留分にいくらかプラスして解決に持っていくこともあります。
依頼者と話をして「あんまりもめたくないから少し多めに払っても良いですよ」か「それは無理です」なのか。そのへんの見極めや本人の希望をしっかり聞くようにしています。それからどう対応するか決めますね。
勝てるからってみんな裁判やるわけではないので。「勝てるかもしれないけどもめたくない」「早く解決したい」という人もいますからね。
でも早く解決したいからと言って譲歩しすぎるのは、「それはどうなの?」と言わなければいけません。一般の方がわからないことは、専門家として適切な意見を言うようにします。
金額はさじ加減が難しいですね。気持ちが変わって、その水準では満足できないと思うようになることもある。この金額までもらえたら解決というところから始めても、金額が上がることもありますから。
遺言書の通りに預金を下ろせない
あとは、遺言書通りに口座から遺産を払い戻す段階で、銀行が独自の内部規定を作っていてなかなかお金を引き出せないというのがありますね。遺言書には何の問題もない。
それなのに銀行が「すべての相続人の同意書を取ってください」とか「すべての相続人の戸籍謄本を取ってください」とか言ってくるんです。本来は必要ないはずなんですが。要は銀行も他の相続人から文句を言われたくないからです。
戸籍なら無理したら取れるけど、同意書はとれない可能性もあるので、遺言書でお金を受け取るつもりの人も困ってしまう。
その場合、弁護士が介入して銀行へ対応したり、相続人への対応を行いますね。
案件の進展によっては、必要に応じて対応を変えていく
―案件を進めていく最中に、気をつけることはありますか?
事件は常に動いているので、最初はこういう見立てだったけど、やっているうちにだんだん変わってくる場合があります。そういうときに必要に応じて対応を変えていくのが重要だと思います。
動いていないようでも、気づかなくて実は動いていたというのもあるので。そういうときに対応をフィットさせていく。なので「最初に言ったことがすべてではない。方針が変わることもあります」ということは依頼者に伝えますね。
あることで相談を受けてたら、問題が派生したり飛び火することもあります。最初の説明で足りなかったことも出てくるので、その都度説明して「わからないことはありますか?」と聞くようにしています。自分が言ったつもりでも「聞いてません」と言われたら困りますから。
なので依頼者からは、なるべく本当のことを話してもらいたいと思っています。隠しごとがあるとお互い後で困っちゃう。それこそ方針を変えなきゃいけなくなることもあるので。お互いの信頼関係のうえでの解決ですから、依頼者とは密にコミュニケーションを取るようにしています。
自分だけの事務所でも、周りの弁護士がいるので孤独ではない
―橋本先生は札幌でお一人で事務所をやっていますよね。大変に感じることはありますか?
そうですね。でも大きい事件のときは他の事務所の弁護士と一緒にやります。自分にあまり経験がない事件だったら、その分野が得意な弁護士を呼んできて頼むこともありますね。弁護士会の委員会で知り合った弁護士や同期なんかとやります。
なので、ひとり事務所といっても孤独ではないです。必要に応じてセッションしたり。東京の事件だったら、同期や、うちの事務所で修習した弁護士に対応をお願いすることもあります。
―東京の案件を、札幌の先生が依頼されることもあるんですか?
依頼者はこっちだけど、裁判管轄が東京のときがあります。あるいは企業案件で本社は札幌だけど、事が起きたのが東京でっていうこともあるし。
そういうときは自分で行くか、電話会議もします。裁判も電話でできる場合があるんですよ。東京地裁での裁判を全部電話で和解まで持っていったこともあります。前より出張は減りましたね、たまには行きたいと思うこともあるんですが。
最近はリモートで裁判もします。全部の裁判所でできるとは限りませんが、オンライン会議とか、そういったのと似た感じです。
後から弁護士を付けるくらいなら、先に付けておいたほうが良い
―弁護士に依頼するのは、どのくらいのタイミングが良いですか?
早いに越したことはないです。でも実際は、弁護士に相談しようと思ってから相当ひっぱる人が多い。周りが心配になって相談に行かせたいのに本人が動かない。
さっきも言ったけど、事件が止まっていれば良いんだけど、止まっている保証がないのでどんどん進んじゃうことがある。それで本人が対応していなかったり、誤った対応をしていると、困難な方向に進んでしまっていることがあります。
本人が違う方向性で話を進めちゃうと、ひっくり返すのが大変なんです。「今までの話はなんだったの?」相手も思いますから。交渉の方向性を変えるくらいならまだ良いけど、取り返しのつかないことも中にはあります。
なんにしても相手に弁護士がついているときは、こっちが弁護士を付けるかは別としても、まず相談したほうが良いと思います。
「自分で交渉したい」「弁護士に払うお金がない」という気持ちもわかります。でもアドバイス聞いてからでも良いと思うんです。解決への方向性を聞いて「やっぱり自分でやってみる」でもかまいませんから。
あとは手続きや交渉で迷ったタイミング。「これやっていいのかな?」と思ったら相談しましょう。やる前に来てください。
周囲の体験談は鵜呑みにしないほうが良いです。「友達に聞いたらこう言われました」と言われても、それは友達の話であって、あなたが同じようになれる保証はない。
早い段階で知人の成功体験や、法的根拠に乏しい助言を聞いてしまうと「自分もそれで行ける」と思ってしまうんです。でもひとつとして同じ案件はありませんから。
―役に立つお話が多くて参考になりました。ありがとうございました。
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