「ビジネスマンの経験が、弁護士業務に活かされています」紛争を未然に防ぐ”予防法務”にも奮闘
もともとはビジネスマンとして、研究開発のお仕事をしていたという中野 博之弁護士。弁護士となってからも、そのときの経験が活かされていると言います。
「紛争を起こさないように助言するのも、弁護士の大事な仕事です」と、予防法務にも力を入れているそうです。今回は、相続の事例や弁護士としてのモットーなどについて伺いました。
大学院において理学研究科博士課程を修了後、企業の研究開発職に。触媒開発担当課長を任され、多数の特許出願や国際学会での発表を経験。大手法律事務所での勤務を経て、現在は、化学・技術の分かる弁護士として、あしたの獅子法律事務所の代表弁護士として活躍中。
あしたの獅子法律事務所 中野 博之
案件の半分は相続や離婚などの一般民事
―中野先生は、普段どのような案件を取り扱っていますか?
割合で言うと半分が相続や離婚などの一般民事、残りが企業法務という感じです。刑事事件も受ける場合があります。
相続の案件は、数はそれほど多くはないですが、ご依頼いただくのは大きい金額を取り扱うものが多いです。また、もめている案件だと、解決まで時間がかかることもあります。最近では、生前の遺言書作成、家族信託・民事信託など、生前での相続対策の案件も増えていますよ。
―企業法務とは、どのようなお仕事でしょうか?
私は知的財産を得意としているので、特許や商標に関わる訴訟手続きや無効審判請求などですね。あとは契約書のリーガルチェック、企業のトラブル相談や対応を行っています。
親の介護費用を使途不明金として訴えられたものの、証拠が不十分だった事例
―これまで印象に残った相続の案件について教えてください。
訴訟まで行った案件だと、親の財産の使い込みについて訴えられた案件が大変でした。
ほかの相続人から「親の生前のうちに預金を使いこんだのだから、遺産の取り分を少なくしてほしい」と、訴えられてしまったのです。実際には使い込みではなく、親の介護費用や病院代など親のために使用していたのですが。
依頼者さんは、亡くなった母の世話をしていた次女の方です。遠方に住むお母さんのために、何度も帰省して介護をしていました。しかし頻繁に来られないので、お母さんのお金を老人ホームの費用に充てたようです。
相手方は長女のお子さんです。長女さんは以前に亡くなっていたので、代襲相続をしてそのお子さんが相続人となっていたんです。その方は家が遠くないものの、被相続人のお世話はしていませんでした。
お母さんの預金の使い込みについて相手方から訴えられたものの、正当な使い道である証拠がすぐに出せなかったのです。依頼者さんも、後でそんなトラブルが起こると思っていなかったので、病院の領収書や細かいレシートは処分していたんです。
お母さんのためにお金を使用したのが真実だとしても、立証できないと裁判では勝てません。それで、クレジットカード会社への照会や老人ホームから明細を取り寄せるなど、こちらができる限りのことは行いました。
裁判官の心証も相当こちらに有利だっとと思うのですが、最終的に「和解をしたほうが良い」ということで、和解になりました。立証できた部分は証拠として認められましたが、証拠がない部分は認められないところもありました。
こちらの依頼者さんも早い解決を望まれていましたので、多少妥協するところはあったものの、和解でご納得いただけました。
研究職として14年間商品開発に関わった後、弁護士へ転向
―中野先生は、どうして弁護士を目指そうと思ったんですか?
実は弁護士になる前に、企業の研究開発職として14年間働いていたんです。触媒開発担当課長もしていました。要はものづくりですね。
ですが家庭の事情もあって、母のいる地元関西に戻りたいと思ったんです。会社員だと転勤もあり、しかも転勤で行きそうなところは関西から遠いところばかりでしたから。弁護士になろうと思ったのはそれが理由なんですけど、結果として弁護士になって良かったと思っています。
―弁護士になって良かった理由、すごく気になります!
1番良かったのは、依頼者さんが喜んでくれることですね。自分でも良い解決ができたとき、依頼者さんもとても喜んでくれて。それを間近で感じられるのが嬉しいです。
もちろん企業で働いていた時も、ものづくりは楽しかったし、やりがいもありました。ただ、お客さんに喜んでもらうまでに時間がかかるんです。研究して商品化するのには時間がかかりますから。
それに、法律の仕事は面白いと思っています。新しい判決を取ったら、それをきっかけに世の中が変わりますからね。弁護士会や委員会の活動を通して、法律の制定や改正に関わることもできます。
紛争を未然に防ぐ「予防法務」が大事
―中野先生は予防法務に力を入れていると伺いました。詳しいお話をしていただけますか?
はい。相続問題は特に、家族信託・民事信託や遺言書作成などの対策をしておくことが大事だと考えています。それによって、紛争を防ぐことに繋がるんです。
実際の紛争を弁護士として見ていると「生前に対策をしておけば、ここまで争いにならなかったのに」と思うことが何度もあります。親としても、子どもたちの争う姿は見たくないはずです。自分の財産についてやお子さんへの思いを、あらかじめ話をしておいたり手紙に書いておくことが大切だと思います。
一般の方は家族信託・民事信託について知らない点も多いですし、誤解している部分があります。ですが正しく利用すれば、とても役に立つ制度です。
生前の財産管理を元気なうちから子供に任せたり、死亡後の遺産の活用方法や遺産の取得者、さらにその次の取得者などを柔軟に決めることができたりするなど、遺言では実現できない柔軟な設計ができる信託契約なのです。
今、世間で問題になっているのは意思能力の低下です。認知症になって意思能力が低下すると、遺言書も書けなくなる(書いても無効になる)し、家族信託・民事信託もできなくなってしまいます。なので、早めに対策をとることが必要です。
―早くから対策をしておくことで、後のトラブルを防げるんですね。最後に、弁護士への相談を迷っている方へアドバイスをお願いします。
問題が大きくなる前に、気軽に相談に来ていただきたいですね。来ていただければ、その問題の背景や事情について広くお伺いできますから。
問題が大きくなってしまうと、最終的に裁判をせざるを得ません。費用も時間も、精神的なストレスもかかってしまいます。
できればそのような問題が起こる前に、少しでも不安の種があれば相談にいらしてください。問題が起きないよう助言するのも我々の仕事です。うちは敷居の高くない弁護士事務所だと思っています、ぜひお越しくださいね。
―ありがとうございました!
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