【事例】お墓の購入費用は誰が出す?相続財産から出しても良い?(60歳男性 遺産3,800万円)【行政書士執筆】

「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、お墓の相続について、60歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、玉野行政書士事務所の行政書士・玉野 由美さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、宅地建物取引士、相続診断士〉
行政書士は、「一枚の書類で人の人生を支える」存在です。
制度と想いのあいだに立ち、現場に寄り添いながら、ただの「書類」を超えて、「依頼者の心」に触れる手続きを紡ぎます。
特に相続では、「想いをつなぐ」ことを何より大切にし、気持ちに寄り添う実務を心がけています。「書類」ではなく「想い」をつなぐ相続を大切に。依頼者の心に、ご家族の背景に寄り添った書類づくりを大切にしています。
▶玉野行政書士事務所
お墓の購入費用は誰が出すべき?
相談内容
父の死後、実家のお墓を誰が管理するかという話になっています。墓地や仏壇の費用は遺産から出していいのでしょうか?兄弟で揉めないようにするにはどうすればよいですか?お墓の管理は自分がするつもりですが、お墓代をすべて出すのは負担が大きいです。
- プロフィール:60歳男性
- お住まい:長野県
- 相続人:母、長男(相談者本人)、二男、長女の4名
- 被相続人:父
| 財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
|---|---|---|
| 不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) | 1,500万円 |
| 預貯金 | 2,000万円 | |
| 生命保険 | 契約者:被保険者:父 受取人:母 |
300万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 お墓の費用負担は相続人同士で話し合うのが一般的
ご相談の内容、とてもよくわかります。
お父様のご逝去後、遺産の分割と合わせて「お墓の費用をどうするか」は、多くのご家庭で話し合いになる大切な内容です。
一般的にお墓や仏壇の費用は、相続人同士で話し合い、遺産の中から支出する場合が多いと感じています。
つまり、「相続財産から出してはいけない」という明確なルールがあるわけではありません。
今回のように、既にご長男である相談者様が“祭祀承継者”(お墓や仏壇を管理しご先祖を弔う方)になる意思を示されているのであれば、相続人の皆様で話し合い、遺産から一定額を祭祀費用として支出することは、現実的で円満な方法だと言えます。
ここで大切なのは、できれば費用の負担のあり方を遺産分割協議書にも明記することです。
将来の誤解や争いを避けるためにも「何にいくら使うのか」「誰が管理するのか」を、書面に残すことが安心につながります。
アドバイス2 お墓は祭祀財産で相続財産とは区別される
気を付けて頂きたいことは、法律上、お墓や仏壇などは「祭祀財産」と呼ばれ、他の財産とは扱いが異なる点です。
民法897条では、これらの財産は原則として祭祀承継者が引き継ぐこととされています。
つまり、相続財産としての“分割の対象”ではなく、財産として「誰にどう分けるか」の協議の、話し合いの外側にあるのです。
とはいえ、今回の相談者様のように「これからお墓を購入する」という場合、その費用をどこから捻出するかはやはり相続人全員の合意が大切です。
形式的には“遺産分割の対象ではない”が、実際の相続の現場としては「相続財産から費用を出してよいかどうか」を相続人全員で話し合う余地があります。
アドバイス3 お墓の購入費用は相続税の課税対象外
一般的な税務の視点から見ると、お墓の購入費用は相続税控除の対象になりません。国税庁のHPを見ても「墓地、仏壇、仏具などの祭祀財産は、相続税の課税対象から除かれる」とされています。
ですから、相続財産の中からお墓を購入しても、課税上の不利益は基本的にありません。安心してご家族の話し合いを進めて頂ければと思います。
最後に、お墓や仏壇は“モノ”であると同時に、ご家族の想いが宿るものです。
相続という人生の節目に、家族でしっかりと話し合い「想いの整理」をしておくことが、次の世代へとつながる穏やかなバトンになるのだと思います。
そして、そのお手伝いを、私たち行政書士はさせていただいております。
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この記事を書いた人
〈行政書士、宅地建物取引士、相続診断士〉
行政書士は、「一枚の書類で人の人生を支える」存在です。
制度と想いのあいだに立ち、現場に寄り添いながら、ただの「書類」を超えて、「依頼者の心」に触れる手続きを紡ぎます。
特に相続では、「想いをつなぐ」ことを何より大切にし、気持ちに寄り添う実務を心がけています。「書類」ではなく「想い」をつなぐ相続を大切に。依頼者の心に、ご家族の背景に寄り添った書類づくりを大切にしています。
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