令和8年4月から住所・氏名の変更も義務化!なぜ登記のルールは厳しくなる?新制度「所有不動産記録証明制度」との関係を解説

令和5年(2023年)に相続登記が義務化したことは広く知られるようになってきました。2025年のいい相続の実態調査では実に約86%の方が相続登記の義務化を知っている、もしくは聞いたことがあると答えています。
一方、「引っ越しのたびに登記が必要になること」や、「結婚・離婚などで名字が変わった際も氏名変更の登記が必須になること」まで知っている人はまだ少ないのではないでしょうか。
令和8年(2026年)4月には、住所・氏名変更登記の義務化(住所等変更登記の義務化)が開始されます。
では、なぜこのように「義務化」が続いているのでしょうか。
その背景には、令和8年2月に始まった「所有不動産記録証明制度 」と密接な関係があります。
これらの制度は私たちにどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
この記事では相続登記をとりまく周辺の制度の変化をわかりやすく紐解いていきたいと思います。
目次
この記事を書いた人
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
令和5年の「相続登記義務化」は序章だった⁉
令和5年(2023年)4月から始まった相続登記の義務化。
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に、その不動産の名義を相続人へ変更する手続きのことをいいます。義務化により、相続人は「相続などによって自分が所有権を取得したことを知った日」から3年以内に登記申請を行わなければなりません。もし正当な理由がないにもかかわらず申請を怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があるなど、罰則も設けられています。
相続登記の義務化については、法務局や司法書士会による情報発信に加え、テレビなどでも特集が組まれるなど、この3年で広く知られるようになってきました。
そして令和8年(2026年)4月からは、住所や氏名に変更があった際の登記を義務づける「住所・氏名変更登記の義務化(住所等変更登記の義務化)」がスタートします。
このように義務化が続く中で「どうして国はここまで登記を徹底させたいのか?」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
所有者不明土地問題
日本の約22%の土地の所有者不明という現状をご存じでしょうか。これは九州全土を上回る広さです。日本では、これほど広大な土地で、持ち主がわからない状態が生じているのです。
空き家が放置されれば防犯や防災の面でも問題が生じます。実際に東日本大震災の災害復旧の遅れの一因になったといわれています。災害復旧が進まない、空き家が放置される、公共事業がストップする…。こうした負のスパイラルが発生するリスクがあるのです。
こうした状況を受けて、「登記簿を常に最新に保つ」ことで、土地の持ち主を100%捕捉できる仕組みを作りたいという考えが強まり、その結果、登記が義務化されることになりました。(詳しくは「【令和6年4月1日から施行】相続登記の義務化が決定!違反の場合は過料も【必須知識】」で解説しています。)
住所・氏名変更登記の義務化(住所等変更登記の義務化)とは
令和8年(2026年)4月1日に施行される「住所等変更登記の義務化」とは、不動産の所有者が氏名や住所の変更したときは、その変更日から2年以内に変更の登記の申請をすることが義務付けるというものです。
不動産の住所・氏名変更登記を自分で行う場合にかかる費用は、原則として不動産1件(1筆)につき登録免許税1,000円です。たとえば、土地と建物の両方について手続きを行う場合は、合計2,000円(1,000円×2件)がかかります。なお、スマート登記を活用した場合は登録免許税は無料です(スマート登記については後述します)。
変更登記をしないと罰則!
「引っ越し後の住所変更」はついつい後回しにしがちです。しかし、正当な理由がないのに変更日から2年以内に変更の登記の申請を怠ったときは、5万円以下の過料の適用対象となるので注意が必要です。
令和8年(2026年)4月1日の施行日より前に氏名や住所等を変更したものの登記を放置している場合も、義務化の対象となるので、令和10年(2028年)3月31日までに変更登記が必要です。
正当な理由とは?
これらに該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事項に応じて「正当な理由」を判断することとしています。
- 検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合
- 行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合
- 住所等変更登記の義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
- 住所等変更登記の義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
- 住所等変更登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合
引用:法務省「住所等変更登記の義務化について」
では、氏名や住所が変わったことを登記することを義務化した理由はどういうことでしょうか。
所有不動産記録証明制度(令和8年2月開始)
令和8年(2026年)2月に所有不動産記録証明制度を開始したのをご存じでしょうか。
これは、法務局が「ある人が全国に持っている不動産の一覧」をリスト化して証明してくれる制度です。
実はこれまで、不動産を一覧で確認できるようなリストは存在していませんでした。そのため、家族が亡くなり遺産相続の手続きを行う際には、まず納税通知書を手がかりに不動産を確認するのが一般的です。
しかし、「以前、故人から山を所有していると聞いたことがある…。」といったあいまいな情報しかないケースも少なくありません。特に、固定資産税が課税されない不動産(山林や私道、公衆用道路など)については納税通知書に記載されないため、自治体ごとに名寄帳を調査し、所有不動産を一つひとつ確認する必要がありました。。
所有不動産記録証明制度を活用すればその手間が解消され、不動産の存在を知らないまま遺産分割をしてしまうことを防ぐことが期待できます。
住所等変更登記の義務化との密接な関係
このような便利な制度ができたとしても、肝心の不動産名義人のデータの住所と氏名が違っていたら、リストに載らない不動産が出てきてしまい、意味のないものになってしまいます。そこで、住所等変更登記の義務化することで、所有不動産記録証明制度の正確性が確保され、ひいては、「所有者不明土地」の発生を予防することができます。

義務化によるメリット・デメリット
義務化によって、私たちにどのようなメリット・デメリットがあるのかを、わかりやすく表にまとめました。
| 項目 | メリット | デメリット(注意点) |
|---|---|---|
| 不動産所有者 | 最新の情報に更新してあることで正確な財産管理ができる。将来の相続人に迷惑をかけない。 | 引っ越し等のたびに数千円~の費用と手間がかかる※スマート登記を利用しない場合。怠ると「過料(ペナルティ)」の対象になる可能性がある。 |
| 相続人 | 故人がどこに土地を持っていたか一覧でわかり、名寄帳を全国から集める手間が消える。 | 相続登記を怠ると「過料(ペナルティ)」の対象になる可能性がある。 |
| 国(社会) | 土地の管理がスムーズになり、空き家問題などが解消される。 | 制度を知らない層が「いつの間にか義務違反」になるリスク。 |
「スマート変更登記」を使って登録漏れを防げる!
スマート変更登記とは法務局が職権で住所等変更登記をするサービスのことです。
事前に「検索用情報の申出」をすれば、スマート変更登記が利用でき、法務局において住所等の変更の事実(市区町村の情報等)を確認して、ご本人の了解を得た上で、職権で変更登記をしてくれます。登記漏れを防ぐことができるうえ、登記申請の負担が軽減されます。
加えて、費用面についてもメリットがあります。住所・氏名変更登記の費用は不動産1件(筆)につき登録免許税1,000円が原則ですが、スマート変更登記(職権による変更登記)を活用すれば、通常1筆1,000円かかる登録免許税が「非課税」となります。自宅と土地、私道など複数の不動産を持っている方ほど、コスト面でのメリットは大きくなります。なお、スマート変更登記の利用方法の詳細は法務省HPでご確認ください。

相続登記義務化にかかわる新制度
所有者不明不動産の解消を目的とした相続登記の義務化。本記事で紹介したもの以外にも様々な制度が施行されているのでご紹介します。
令和5年(2023年)4月
- 遺贈も単独で登記が可能に
- 相続土地国庫帰属制度開始
- 10年を過ぎた特別受益と寄与分は主張できなくなった(実質的な遺産分割の期限が設けられた)
令和6年(2024年)4月
- 遺贈登記の義務化
- 相続人申告登記開始
詳細は、「相続登記の義務化の対策方法は?相続人申告登記や相続土地国庫帰属制度など新制度をわかりやすく」を参照してください。
まとめ
登記のルールが厳しくなった理由や近年の新制度について解説してきました。「住所等変更登記の義務化」は、施行前から所有している不動産も対象となります。そのため、一度登記簿謄本で名義を確認してみるとよいでしょう。
このように、相続を取り巻く制度は年々新しくなったり、内容が変更されたりしています。せっかく自分で調べた情報も、いざ相続が発生したときには手続き方法が変わっている、ということも少なくありません。
「いかに時間を無駄にせず、効率よく価値を得るか」というタイムパフォーマンスが重視される今、司法書士などの専門家を上手に活用することが重要になっています。手続きに少しでも不安がある場合は、まず専門家へ相談してみることをおすすめします。
なお、「いい相続」では、相続手続きに強い専門家をご紹介しています。どうぞお気軽にご相談ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、専門家に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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