録音した口約束は遺言として認められますか?
質問者:S.M
日本の民法では、法的に遺言として認められるものは厳格に定められていますので、この様式が守られていないものは遺言としての効力がありません。有効な遺言とされるためには下記のような方式で書面に残す必要があります。
普通方式の遺言
遺言書の作成方式は、いくつかのスタイルが法律で定められています。その中でもよく使われるものとして「普通方式」があります。普通方式の中でもさらに種類が分かれており「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」となっています。
「公正証書遺言」とは、公証役場で公証人と証人に立ち会ってもらって作成するものです。
遺言者の意思を公証人が確認し、出来上がった原本は公証役場に保存され改ざんができないようになっているため、あらゆる遺言書の中で一番証拠能力が高いものとされます。 ただ、費用が若干かかることと、証人に内容を知られてしまうのが欠点といえるでしょう。 また、遺言書自体の存在を親族等が誰も知らない場合、闇に葬られる危険もあります。
「自筆証書遺言」は遺言者が自筆(ワープロは不可)で作成し、自宅などに保管しておくものですが、偽造などの危険がつきまとうため法律家はあまりこれをすすめていません。もし自筆証書遺言が被相続人(亡くなった人)の死後に発見された場合、家庭裁判所で「検認」という証拠保全の手続きを取らなければならず、手間もかかります。
なお、法改正により、財産目録についてはパソコンなど自筆以外で記したり、通帳などのコピーを利用することもかのうとなりました。さらに、法務局(遺言書保管所)で遺言書を保管する自筆証書遺言書保管制度も始まっています。法務局に保管した自筆証書遺言は、検認も必要ありません。ただし、保管や保管した遺言書の閲覧には費用が掛かります。
最後に「秘密証書遺言」ですが、これは自分で作成した遺言者を公証役場に持参して公証人と証人に遺言の存在を証明してもらうものです。公正証書遺言と異なり、内容を知られることはないのですが、中身を知られないかわりに法的不備を指摘してもらうチャンスはありません。また、保管は遺言者がおこなうため、紛失や改ざんなどの危険もあります。
遺言書を作る際に注意するべきこと
遺言書はただ漫然と作ると逆に紛争の火種になることがあります。たとえば、一番問題となりやすいのが遺産の分配方法が偏っていることです。 兄弟姉妹が相続人になる場合以外は「遺留分」といって、法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)に一定の権利が保証されています。これを守らない形で遺言書を作ってしまうと後から「遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)」をされ、場合によっては裁判にまで発展することもあります。
また、特別受益(生前に婚姻費用など特別の贈与を受けること)や、寄与分(被相続人の財産増加に特別な貢献をしたこと)にも配慮した形にすることが大切です。遺言書の本来の効力を最大限に発揮するためにも、文案作成の際にはぜひ法律家の手を借りることをおすすめします。
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