親友にも自分の遺産を分けたいと遺言を書きました。友人にも相続税はかかるのですか?
何十年も仲の良い友人がいます。この人にも自分の遺産を渡したくて、遺言書に遺贈させる旨を記載しました。相続のとき、この友人にも相続税はかかりますか?
親族以外が財産をもらっても相続税はかかる
基本的な相続人は民法によって定められていますが(法定相続人)、それ以外の人に相続財産を渡したい場合には「遺言書」によって定めておけば可能です。
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」があり、包括遺贈とは財産の全部か、「〇分の1」など割合的に定めることで、特定遺贈とは「〇〇市〇〇町〇番の土地」など、具体的な財産を定めることです。
相続と遺贈、いずれにより財産を取得した者であってもそこには相続税がかかってきます。
もし、第三者に渡せば相続税を払わなくてよいとなるとそれが税を節税する手段になってしまうからです。
受贈者が法定相続人以外の場合は、相続税の計算における法定相続人の数には含めない
相続税の計算の際には、「法定相続人の数」が相続税額に関わってきます。
相続税の基礎控除を求める計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。このとき、き受遺者が法定相続人以外の者であれば法定相続人の数に含めずに計算します。
ただし、相続財産が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。
遺言書への記載は本人の承諾を得ておくのが無難
このように、受贈者(遺贈を受けた人)は単にもらうだけではなく、税務申告や納税などの負担も負わなければならないことになります。
また、相続財産を受け取ることによって本来、法定相続人になっており相続できることを期待していた親族との軋轢が生じることも考えられます。
よって、遺言書を作成する前に受贈者本人に「遺贈してもよいかどうか?」を確認しておく方が無難なのではないでしょうか。
ただ、受贈者には「遺贈の放棄」という権利も認められています。包括遺贈の場合、相続放棄と同じように自分が包括受遺者になることを知った日から3カ月ですが、特定遺贈はいつでも放棄できることになります。
包括遺贈の放棄は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して遺贈放棄の申述書を提出します。特定遺贈の放棄は家庭裁判所への申述は必要なく、遺言執行者や他の相続人に対して意思表示をすれば遺贈を放棄することができます。
しかしこれでは法律関係が非常に不安定になることもあるため、相続人等利害関係を持つ人は遺贈を承認するかどうかを回答するように受遺者に催告することもできます。
始めから遺贈を受けるつもりがない人にとっては、知らない間に受贈者にされることは迷惑になるかもしれません。
遺贈の際は遺留分に注意すること
また、本来受け取れるはずだった相続財産を受け取れなくなったり、少なくなる法定相続人にも十分に配慮するべきです。
兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」といって、一定の割合の相続権が保障されています。これは、遺族の生活保障という意味で定められているものですが、それをまったく無視して好きなように遺贈してしまうと、被相続人の死後に「遺留分侵害額請求」を行使される危険性もあります。
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害した人への取り戻し請求です。遺留分侵害額請求は被相続人が死亡した事実と遺留分を侵害する遺言書や生前贈与を知ったら、そのときから1年以内にをしなければなりません。また、相続開始や遺留分を侵害する遺言書などの存在を遺留分権利者が知らなくても、相続開始から10年が経過すると遺留分侵害額請求権が消滅してしまいます。
遺留分侵害額請求は場合によっては裁判に発展することもありますので相続人、受遺者のどちらにも多大な負担をかけてしまうことになります。
よって、被相続人が生前の自分と相続人や受遺者との関係性などを熟考したうえで、関係者全員が納得するような根拠のある配分を考えるべきといえます。
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