母は父の死亡直後、父の相続税の申告をする前に死亡しました。父の相続税申告にあたって母が取得した財産に対して配偶者の税額軽減は適用されますか?
質問者:T.I
配偶者の税額軽減は、配偶者の片方が亡くなった際の相続税を安くするために大変効果的な方法です。 ただ、やはり夫婦は亡くなる時期が近くなることも多く、質問のような事態になることも十分考えられますが、結論から言えばその場合でも配偶者の税額軽減を利用することができます。
配偶者が相続開始直後に死亡した場合
たとえば夫の死亡後、相続税申告に備えて遺産分割協議をしようと思っていた矢先に妻が死亡し、この夫婦に子供が2人いたとします。 まず前提として確認しておかなければならない点としては、このような場合はいったん妻は夫の法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)という立場になっています。時々誤解している人もいるのですが、「妻は死亡してしまったのでもう相続人ではなくなった」というわけではありません。 時系列で整理するとこのようになります。
①夫の死亡による相続 法定相続人は妻と子供2人(ただし、この妻以外との間の子供や婚外子がいればその子も相続人となる)
②妻の死亡による相続 法定相続人は子供2人(ただし、この夫以外との間の子供や婚外子がいればその子も相続人となる)
仮に、夫婦どちらにも上記2人以外の子供がいないとすると、夫の遺産について遺産分割協議に参加しなければならないのは父の相続人としての立場での子供2人です。同時にその2人は母の相続人としての立場でも遺産分割協議の権利義務があります。 この場合、第1次相続である父の遺産について、もし母の死亡後に子供2人の話し合いで母の取り分として確定させた分があれば、それは配偶者の税額軽減において考慮するべき配偶者の相続分として認めることができます。言い換えれば、配偶者の税額軽減を使うことができるということです。(相続税基本通達19の2-5)
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配偶者はまだ存命であるが、認知症の場合
父が亡くなった時点で母はまだ生きているが、もう認知症で話し合いができないという事例も多いでしょう。 そのような場合は上記とは異なり子供2人で取り分を決めるというわけにはいかず、「成年後見人」の選任が必要になります。 成年後見人とは、認知症などで判断能力がなくなった人の財産、権利を守るために法的な行為を代理する人で、家庭裁判所が一定の申立権者の申立てに基づいて選任します。
申立ての時点で「この人を後見人にしてほしい」という候補者を挙げますが、必ずしもそれが通るとは限らず、認知症の本人の利益を考慮して最適な人が選ばれます。
また、もし上記のケースで子供が成年後見人に選ばれた場合は、子供自身も相続人であるため利益が衝突しますから、「特別代理人」という「遺産分割協議のためだけの代理人」を選んで、実際にはその人が協議に参加しなければならないことにも注意が必要です。
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