【よくある質問】父が亡くなり母と子供3人が相続人ですが、母は認知症で正常な判断ができません。どうすればいいでしょうか?
父が亡くなり母と私を含め子供3人が相続人となるのですが、母はすでに認知症で正常な判断ができません。母の扱いはどうすればいいでしょうか?
遺産分割協議は、法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)全員で行わなければならず、それは相続人の中に認知症や行方不明の者がいても変わりません。
したがって、成年後見人と呼ばれる「遺産分割協議を代わりに行える法律上の代理人」を選任します。
認知症の相続人がいたらどうするか
高齢化社会に伴って、被相続人(亡くなった人)が死亡した際にすでに相続人のうち1人もしくは数人が認知症にかかってしまい、判断能力がないという事例も急増しています。
そのような状態になってしまえばもはや遺産分割協議をすることはできず、その人を抜かして行ったり、その人の子供が勝手に協議を行えば無効となります。
その場合、成年後見人と呼ばれる「遺産分割協議を代わりに行える法律上の代理人」を選任しなければならないのです。
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成年後見人をつける際は慎重に
成年後見人を選任する際は、一定の「申立権者」が家庭裁判所に所定の申立手続きを行った上で最終的に裁判所の判断で適切な後見人が選任されることになります。
申立てにあたって「後見人候補者」を挙げることにはなりますが、その人が選任されるとは限らず、裁判所が必要と認めれば「専門家後見人」といって、弁護士や司法書士などが選ばれる可能性もあります。
その場合は、被後見人(認知症などの本人)の財産に応じて報酬が発生することにも注意が必要です。
また、いったん成年後見人が選任されると、目的となる行為(たとえば遺産分割協議)が終了しても、原則として被後見人が死亡するまでは成年後見人の仕事は継続します。
主な仕事は被後見人の財産管理ということになりますが、定期的な裁判所への報告書提出など、それなりに負担もありますので事務処理がある程度できる人を選ばなければなりません。
法定相続分の確保は必須条件
成年後見人がいる場合でも、もしその人が相続人の1人であれば被後見人との利益が衝突することになります(利益相反)。 そのような時には、遺産分割協議のために利害関係のない別の代理人(特別代理人)を選任しなくてはなりません。特別代理人は、裁判所によって定められた業務以外の代理をすることはできず、その業務が終了した際には代理人の役目を終え委任は終了します。
また、成年後見制度の趣旨はあくまで「被後見人の財産が侵害されないように、利益を守る」ということになります。よって、遺産分割協議の内容としては、「被後見人の法定相続分を必ず確保する」ということが重要なポイントになります。つまり結論から言えば、認知症の母には相続分を与えず、子供にだけ相続させたいという場合には成年後見人を選任しても思った通りに分割することは難しいということです。 どうしてもそのように分割したいのであれば、母が死亡した後に子供だけで遺産分割協議をするしかないと考えられます。
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