元裁判官のキャリアを生かし、納得のいく問題解決を実現。依頼者の「不安」を「安心」へ
「裁判官と弁護士は全然違いました」と話す村越 啓悦先生。裁判官のときは公平な判断を下すことに重きを置いていましたが、弁護士になって依頼者の話を受容的に聞くことを最も重視しているそうです。
今回は遺産相続の解決事例や裁判官時代のお話、事務所の方針などを伺いました。
元裁判官として20年のキャリアをもち、民事(通常事件から、労働事件、知的財産権、倒産等を含む)、家事、刑事と幅広い分野の法律実務を経験。平成25年に村越法律事務所を開業、地域のあらゆる法律問題を対応するホームロイヤーとして尽力する。
村越法律事務所
目次
継続的に相続案件を担当している
―これまで担当してきた案件のなかで、相続関係はどのくらいありますか?
改めて古い記録から見てみたんですが、思ったより多くなかったです。ただ定期的に相談を受ける分野ですので、年間を通して常に何件か担当しています。
相続以外の分野ですと交通事故や不貞行為などの損害賠償請求、離婚、債務整理、労働、契約に関するものなどいろいろですね。私はいわゆる地域の皆様に貢献するいわば「町医者」、すなわち法分野における皆様のホームドクター(ホームロイヤー)になりたいと思っています。
なのでせっかく頼っていただけるなら、できればお断りしたくないですね。ですが弁護士が2人のみなのでできる範囲でお受けして、ひとつひとつ丁寧に対応する方針で行っています。裁判官のときは専門性のある事件を担当した時期もありましたが、今は分野問わず幅広くお受けしています。
遺産額が多くても少なくても、紛争になりうる
―遺産相続の案件で、印象に残った事例はありますか?
遺産分割協議の無効確認を行った事例
10年以上前に片付いていたとされた遺産分割を無効として、依頼者の方に財産を取り戻すことができた事例は、大きい事件として記憶に残っています。
その昔の遺産分割は依頼者のお父さんの遺産分割協議だったんですが、当時お母さんが意思無能力状態(意思能力がない状態)だったんです。認知症で適正な判断能力がないのに、遺産分割協議書に名前を書いていた。
最初調停でやったんですけど、相手方に受け入れてもらえず訴訟を起こしました。そのなかで裁判官が意思無能力だという判断に傾いてくれて、意思無能力を前提とした和解になりました。その遺産分割協議書は無効となったんです。
―かなり昔の相続ですが、意思無能力状態だった証拠は見つかるんでしょうか?
十数年でしたら病院のカルテも残っていますので、ご本人に病院に行って取ってきてもらいました。それを丁寧に確認して、証拠となるようにしました。
遺産としては大きな遺産でしたので、相続当時得られなかった遺産を得ることができて依頼者に喜んでいただくことができました。
弁護士が介入したことで、紛糾していた遺産分割がスムーズに解決
遺産額が非常に少ない件で処理した事例があります。遺産はあまり人気のない地域の土地と、その上の古い家だけ。
亡くなったお父さんが再婚されてまして、前妻の子と後妻とその子どもの二派に分かれたんです。依頼者は後妻の方でした。当初依頼者が遺産分割の交渉していたんですが、関係が難しくなってうちに依頼が来ました。
いただいた資料から相手方は気難しい印象を受けましたので、「弁護士が入っても苦労するかな」と思いました。ですがこちらがお手紙を送ると相手もすぐ了解していただいて、割とスムーズに遺産分割協議書に印をもらうことができました。もっと難航すると思っていましたので、少し意外でした。
手紙の内容としては法定相続分としてきっちり、誰かが有利になったり不利になったりすることはありませんよと丁寧にご説明して、他に方法がないことも含め納得してもらえた感じですね。
これは「弁護士を立てるだけでそれなりの意味があった」というのを実感できた案件です。弁護士の立場が、相手方の意思決定に影響したんだと感じました。
―専門家から言われると、相手も納得しやすいんでしょうか?
この事例ではお手紙を送ったら相手方から電話がかかってきまして、了解してもらえましたね。他の事例を踏まえても、弁護士が入ることで交渉のノウハウや法律的なご説明もできますから、相手の心変わりを促すきっかけになるかもしれません。
結論を見据えて、この結論しかないとなると相手にもそれで理解していただくしかないので。こっちの言い分は正しいときちんと主張することが大事だと思います。そういう線で交渉して、納得しなかったら調停や裁判に行くしかないですね。
―村越先生は相続案件を重視していると伺いました。その理由を教えてください。
こういう少額案件を担当して思うことは、相続問題は誰にでも降りかかってくるということです。交通事故は誰でも遭うわけではありませんし、離婚も離婚率が上がったといっても、誰もが離婚するわけではありません。労働問題等、そのほかの法的トラブルも同様です。
しかし、親兄弟のいない人はありません。相続の機会は誰にでもあるのです。そして、それが紛争にならない人もありますが、紛争になる可能性は低いとはいえません。紛争にならない人も、充分な対策をしていたからかもしれないのです。
こういうことで、相続開始前の対策、相続開始後の紛争の解決は、多くの人の生活において、大変重要だといえるわけです。それで相続案件を重視しています。
家業を継ぐために、裁判官から弁護士へ
―村越先生は、どうして裁判官から弁護士になったんでしょうか?
実家が商売をしていまして、父が脳梗塞で倒れたもんですから。母が少しやっていたんですが、そうもいかなくなって「なんとかしてほしい」と言われて、家業を継ぐために辞めざるをえなかったんです。
裁判官は公務員ですから兼業はできません。今は弁護士兼、家業の中小企業の親父の二足のわらじを履いています。
前は法科大学院の教授もしていたので三足のわらじを履いていました。家業の方はそんなに時間を取られるわけではないので、弁護士中心でやっています。
弁護士には、依頼者の話を丁寧に聞くスキルが必要
―村越先生が相談者の話を聞くときに、配慮することはありますか?
依頼者から丁寧にお話を聞くのが大事だと思っています。
感情的になっている当事者の方もいますが、それでも落ち着いて話を聞くというこちらの姿勢は崩さないようにします。「ただ聞いていますよ」ではなく、大切なのは受容的に聞くことです。
こちらが聞き流している感じがあると、依頼者から信頼してもらえませんから。信頼できない弁護士は向こうも頼もうとは思わないですよね。
実は、人の話を聞くのは弁護士になってから身につけた技能かなと思います。裁判官のときはバサバサ話を切っていた方だったんですが。同じようにはいかなかったです。
あと、相続の分野でいうと日本社会が長寿化していますので、相続に接する当事者の方が高齢になってから相続に関わる場面が多いんです。なので高齢者の方からもよくお話を聞くというのが大事だと思いますね。
よく話を聞かないとわからないこともありますので、まずはお話を聞いてさしあげる。それで話をしながら問題を整理していく感じになりますね。難しい法律用語は使わないようにしています。
事務所一体となって、問題解決にあたる
―村越先生の事務所は、もうひとりの先生が所属していますよね?
はい。基本的に2人で協力してやっていますが、それぞれ自分だけ担当する案件もありますよ。
もうひとりの弁護士(野形 昌三弁護士)は理系の知識もある弁護士なので、私が足りない面を補ってくれます。新たな解決の方針が見つかることもありますね。
以前も他の弁護士と2人で事務所をやっていましたが、退職されて。早く誰か来てほしいと思っていたところに渡りに船という感じで、彼が来てくれたわけです。仲良くやっていると思ってます。
ひとりだと独善に陥りますので、弁護士が複数いるというのは意味のあることだと思っています。意見交換もしょっちゅうやっていますし。対立するということはあまりないですね。
あれこれ悩むなら、早く弁護士に相談したほうが良い
―弁護士への相談を検討している人にアドバイスをお願いします。
困ったときに自分であれこれ悩まないで、なるべく早く弁護士に相談することが大事だと思っています。そのほうが早く苦しみから救われますし、そんな簡単だったんだということも。それに実は自分は結構有利だったという場合もありますし。
「弁護士は敷居が高い」なんて思わずに、気軽にお越しいただければと思います。お待ちしています。
―ありがとうございました!
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