医療と不動産の知識を生かして相続問題を解決。「人間的に合う弁護士を選んでください」
大阪の弁護士事務所に修行した後、地元名古屋で事務所を開業した水口 哲也先生。「先生にこんなこと言ったら怒られるかも」と思わず、リラックスして相談に来てほしいと話されていました。
今回はこれまで解決した事例や、弁護士探しのポイントなどを伺いました。
他分野で培った知識をいかして相続問題を解決する
―普段はどういった分野の問題に対応されていますか?
最も割合として多いのは、不動産関連ですかね。もちろん離婚・労働問題などの一般民事も多く扱ってますよ。あと公共事業の民営化に伴う契約書関連や、医療過誤なども対応しています。
相続に関しては常に依頼いただいている状況ですね。相続は不動産・医療分野とも関わる問題ですから、他の案件で培った経験が生かせる分野だと思います。
例えば遺言書の有効・無効を争う場合に、医療カルテや主治医の意見書を証拠に遺言書の無効を主張されることがあります。そういうときに医療過誤の案件で培った知識に基づいて、医学文献などから引用して反論できるのが強みだと思います。
それに不動産相続についても不動産業者とのつながりもありますし、不動産の煩雑な処理についても承知しています。間口がものすごく狭いといった売りづらい物件についても、そういったものに強い業者のご紹介もできますよ。
遺産分割協議の一部無効を争った事例
―先生が実際に解決された事例を伺えますか?
遺産分割協議の一部無効を争ったことがあります。そのときの相続人はお兄さんとご依頼者である妹さんの2名でした。
すでに合意された遺産分割協議があったんですが、そのなかに一番大きな財産が含まれていなかったんですね。でもその財産をすべてお兄さんが相続するような話になっていました。
それはおかしいということで、遺産分割協議のやり直しを求める裁判となりました。結果、高等裁判所でその遺産分割協議書は錯誤無効(誤解していたことによる無効)と判断されて、遺産分割協議のやり直しをすることに。
すでに合意している部分はそのままに、協議からもれていた遺産を兄と妹で分割し直す形で和解ができました。
最終的に、こちら側に有利な結果で解決できたかなと思います。
弁護士に依頼することで、相続トラブルを回避
―相続でもめないようにするためには、どうしたらいいでしょうか?
紛争を防ぐには、事前に公正証書遺言を作成すること
やっぱり公正証書遺言を書いて対策しておくことが第一ですよね。ご本人が亡くなる前に何とかしてもらわないと。
相続問題のほとんどは兄弟ゲンカの先にあることですから、仲が悪いとどうしようもない。なのでお父さん・お母さんの代で決着してもらわないと、どうやってももめますね。そこは弁護士ではどうにもならないのが正直なところですね。
弁護士も争いの仲裁はします。けれど、もめ事がエスカレートしていると1回の相続に10年かかったりするんですね。でもまだそれほど悪化していない初めの段階で解決できれば、2〜3カ月で解決できることもあり得るんですよ。
10年コースにならないために我々も動きますが、なかなか上手くいかないことも多い。双方に弁護士がついて「この辺りで手を打ちましょうか」とまとまれば良いとよく思います。ただそれも簡単ではないことも多いですね…。
ですから弁護士に依頼して、きちんとした公正証書遺言を作成しておくことをお勧めしています。遺留分に配慮できていて、後で遺言が無効と判断されないように対策された遺言を作っておけばそもそも問題も起こらないですから。
しかし遺言書を作成する気にならない方が多いのが現実です。やっぱり自分の死んだ後のことを考えたくはないですし、自分の子どもたちは仲が良いから作る必要はないという願望を持っている方が多い。
そういう意味では、遺言書は願望と逆方向なんですね。だから皆さん遺言書って書かれないんですけど、本来はやらなければいけない。「元気だからまだ早いんじゃないか」「お金がかかるし…」と思ってらっしゃったり、弁護士に依頼する心理的ハードルもあるかと思います。
でも遺言書を作成するかどうかで、天と地ほどの違いがあります。作成した方が良いのは確実ですね。
本人の認識能力に応じて、遺言の具体度を変える
―もめないように遺言書を作成するポイントってありますか?
その事案によるかなと思います。
例えば、認知症などでご本人が遺言能力があるかあやしいときは、簡明な内容にするのがポイントです。遺留分などの問題が後で起きるのはしょうがないこととして、「遺産は全部、この相続人にあげる」という形の内容にしてしまうことですね。
遺言の有効・無効の争点は、書いた本人が理解できるか内容かどうか。内容が簡単であれば、本人が理解できる可能性が高いですから。
逆にご本人がしっかりしていれば、むしろ遺言書の内容は詳細にします。遺留分に配慮したり遺言作成に至った想いなどを反映して、具体性のある内容にするんですね。そうすると、もし遺言書の有効性を争う裁判になったときに、有利に働く可能性が高まりますから。
このようにご本人の理解力などに合わせて、できるだけ問題が起こらないような対策をします。
でも中には、弁護士から見てしっかりされていると思っていた方なのに、後から認識能力に問題があると記載された、医療カルテ・介護保険の認定調査票が出てくることがあります。そういうものを裁判時に持ち出して、遺言書が無効にされてしまうこともあるんですね。
なので遺言書作成の際に、カルテなども確認しておきたいなと思いますね。
緊張を解きほぐして、依頼者の本心を聞き出す
―相談を受ける際に、配慮されていることはありますか?
まずはリラックスしてもらうことですね。以前は大阪の事務所で弁護士をしていたんですが、大阪は名古屋の倍の数の弁護士がいるんですね。となると知り合いに弁護士がいることが珍しくない。弁護士がけっこう身近な存在なんです。
一方で名古屋は弁護士が遠い存在で。弁護士のところに来るのは、一大決心みたいなところがあるんです。なのでいらっしゃった方が緊張している。固くなっていると話しづらいですし、「こんなこと言ったら怒られるんじゃないか」と仰る方もいる。
でも私は、その言いにくいことも聞き出さなくちゃいけなくて。そこを聞き取らず、事実があいまいなままに裁判をして負けるなんてこともあり得ます。リラックスしていただくことが問題解決の入口として、気を付けていることですね。
対して出口は、どういう解決をしたいかを決めることです。最初に出口を考えずに問題に着手すると失敗しますから。
まずはご相談者の希望を聞き、そしてそれが実現できるのかを法的に検討します。もしできないときにどうするのか、代理の手段はご相談者が納得できるものなのかも考えていきます。
中には「どうしたいのかもわからないけど、とりあえず相談に来ました」という方もいらっしゃいます。そういうときには、その方の希望はどこにあるのかを整理するところから始めます。
出口があやふやな状態で進めてしまうと、失敗することが多いので気を付けています。
弁護士を選ぶ軸は、人間的な相性
―弁護士探しのアドバイスをいただけますか?
重視するポイントは、人間的な相性に尽きると思うんです。もちろん優秀かどうかも大事だと思いますよ。ホームページで学歴を見たりコラムが充実しているか確認したりすれば、ある程度はわかるかもしれません。
でもそれが弁護士のすべてではないですし。弁護士の得意不得意もありますから。
弁護士に事件を依頼して解決したとしても、ベストな弁護士だったかはわからないと思います。弁護士も「うまく解決できたな」と思う案件があったとしても、本当にそれがベストな解決だったかどうかはわからないのが正直なところですから。
これは専門家が見てもわからないことなので、一般の方からはベストな解決をできる弁護士かどうかは、尚更わからないと思います。
だから優秀かどうかは大事なことではあるんですが、それよりも人間としての相性の方が大切だと思っています。
「この先生、良い人だな」と思える弁護士であれば、たぶんちょっとやそっと失敗しても許せると思うんですよね。
なので大切なのは人間的な相性。でも、それって会ってみないとわからない。だから一番良いのは知り合いに紹介してもらうことだと思っています。
ではそのつながりがない人がどう探すかというと、無料法律相談で実際に話してみる。そこで弁護士との相性を見極めるわけですね。
人間的に合う弁護士に依頼するのが、一番良いと思いますね。
―勉強になるお話をありがとうございました!
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