アルバイトをしながら弁護士になった苦労人。「お金で解決するほど相続問題は単純ではない」依頼者の心のフォローも大切に
10年近く働きながら司法試験に挑戦されていた川本 雄弥先生。法律事務所で事務のアルバイトをしながらロースクールに通い、終電間際まで図書館で勉強するという法律漬けの毎日を送っていたそうです。
そんな川本先生がこれまでに解決した相続の事例や、メンタル面のケアを大切にしていることなどを詳しく伺いました。
千葉県松戸市生まれ松戸市育ち。松戸市にあるときわ綜合法律事務所に所属。千葉県弁護士会の刑事弁護センター副委員長を務め、子どもの権利委員会などにも参加し積極的に活動をしている。趣味は音楽鑑賞。コーヒーと日本酒が好き。
ときわ綜合法律事務所 川本 雄弥
80年以上も放置されていた土地の相続登記を行った事例
―先生がこれまで解決された事例を教えてください
様々な事件を扱っておりますので、事例を挙げるとキリが無いですね。
何棟もマンションをお持ちのような地主の方がお亡くなりになり、遺言書で相続をさせてもらえなかった相続人の方々の遺留分侵害額請求権の行使をお手伝いしたこともありますし、まとまった相続財産は自宅くらいだけれども、兄弟間で到底話合いができるような雰囲気ではないため、代理人としてお手伝いさせていただいたこともあります。
変わったところでは、80年以上にわたって放置されていた土地の相続手続を行ったこともありました。何世代にもわたって放置されていたため、法定相続人が20名以上にも広がってしまい、くわえて死後に何度か民法が改正されているため、古い民法も参照しながら、裁判所と何度も検算し、相続分を算出しました。
全国にいる相続人を探してそれぞれに連絡したり、戦前の民法まで確認したりと、たくさんのハードルを粘り強く乗り越えていかなければいけない案件でした。専門家でない方が独りで対応されるのは、かなり難しいと思います。
結局、相続財産が多数ある複雑な事件はもちろん、当事者間の感情的な対立で話合いができない事件や、解決までに手間のかかる事件については、我々が弁護士としてお力になれるのだろうと思います。
その他の親戚や、感情面の問題にも配慮している
―相続問題に対応するうえで、配慮されていることはありますか?
ご依頼者の感情面にフォローしつつ、法的にきちんとした解決に至るよう気を配っています。
そもそも相続というのは、割り切ったドライな考え方さえ出来れば、所詮は財産の分け方の話、お金の話、と言い切ることができるはずなのですが、必ずしもそうはいかない。その家庭ならではの根の深い感情的な対立が事案を複雑にさせてしまうのです。
例えば親からすれば仲が良いと思っていた子ども達兄弟でも、相続の開始をきっかけに、それまで蓄積していた互いに対する様々な不満が爆発してしまう。やれ、誰が親の面倒を看ていたとか、誰が何もしていなかったとか、やれ結婚式でいくらもらったとかもらわなかったとか。
そういう不満があると「平等に遺産分割をする」というのが法律上正しくても、当事者にとってはすぐには納得できない…となってしまうケースは少なからずあろうかと思います。
つまり他の法律問題に比べて、当事者間の「過去の歴史」が事案を複雑にしているケースが多いように思うのです。
そういうケースにあっては、私は、それぞれのご不満がどこにあるのか、そしてそれが法的に主張可能なものかどうか、証拠が十分かどうかなど、個別具体的な事情をお伺いしながら、なるべくそのご不満が解消されるような解決方法を模索しようと努めています。
ご依頼者の皆さんも、感情的にならずに早く終わらせた方が良いとは頭では分かってるのですよね。でも譲れない。譲りたくない。そんな苦悩は理解したいと思います。
しかし、私も法的に無理な主張だと判断したときは、無理だとはっきり言います。希望を汲み取りつつもそういったこともはっきり助言できるのは、第三者だからだと思います。お話をきちんと聞くだけでなく、その辺りは代理人だからこそご依頼者にしっかり言うようにしています。
苦節10年。働きながらロースクールに通う
―先生が弁護士を目指したきっかけを教えてください
高校生のときに自由や権利とは何かについて関心を持ったのが、きっかけですね。
私の出身高校が(地元では有名ですが)変わっている高校でして、非常に自由な校風のところでした。千葉では私服で通える数少ない学校なんですけど、私の20年ぐらい前の先輩たちが、学校側に働きかけて民主的に改革したという歴史を持っているんです。
自分たちのことは自分たちで決めていく。そういう民主的な校風の中で、自由とは何か権利とは何かと興味を持つようになり、弁護士を目指しました。
司法試験の受験期間は10年くらい。後半は法律事務所の事務員として働きながら、ロースクールに通いました。日中は事務所で仕事をして、夜間はロースクールで授業を受け、その後は図書館で予習復習をしてから終電で帰宅するという生活をしていました。字面にするとさらっと流せますけど、あの頃に戻ってもう一度やれと言われてもお断りします(笑)。
ただ受験生活が大変だった分、家族や上司、友人、たくさんの人に支えてもらいました。その分、今度は誰かを支えられるような仕事をしたい。そんな風に社会を回していきたいという思いは、強く持っています。
気軽に会って、弁護士を見極めてほしい
―弁護士探しをしている方にアドバイスをいただけますか?
弁護士に相談するか迷ってるのだとすれば、とにかく相談した方がいいと思います。
「こんなこと相談することじゃないかもしれないですけど…」と口を開かれるご相談者も実際にいらっしゃいます。話を聞いてみると、これは早めに対応した方が良いということもありますし、弁護士に頼むほどのことでもないから自分で対応できますよ、と申し上げることもあります。
いずれにしても、どうしていいかわからないとなった時に気軽に頼ってください。「こんなこと聞いたら怒られる」と気にする必要はありません。「法律のことを何もわかってないな」と弁護士が思うことはありませんので。相続に直面して、何か困っていることがあったら、早い段階で弁護士に相談に行った方が良いと思います。
また弁護士との相性もあると思います。最近、リモートとか電話で相談をしてほしいという方もいらっしゃるので対応することもなくはないのですが、私自身は、対面で会った方が良いと思っています。
お互いに相手の人となりが全く分からないとしたら、一緒に問題解決していくのは難しいんじゃないでしょうか。なので私も直接会いたいですし、ご相談者様にも弁護士に会って見極めていただきたいと思っています。
それに何人かの弁護士に会って、その中から相性の合う人に依頼してもいいと思います。各弁護士で意見が違うと思いますし、私も必ずしもご依頼者の耳障りのいいことだけを話すわけではありません。ですからそこは直接話してからご依頼者に選んでいただきたいですね。
一方で最初の30分~1時間で親族間の根深い対立まで踏み込むことは、なかなか難しいところがある。初回の相談では、どうしても一番のお怒りの部分とか、事実だけを表面的に積み重ねていくことになります。
それでも出来るだけその方が抱えている感情面の根っこにある問題についても、お話が聞けるようにしたいなと思っています。
その意味で受任するとなったら、弁護士として当然の法律的なサポートに上乗せして、その方々の感情面のフォローをしたいというのが、私が常々考えていることです。
もし感情面のすべての要望を実現できないにしても、できないならできないなりにご依頼者が納得した解決にするために、どういったことができるか一緒に考えていきたい。ですので気負わずに何でも話してくださいね。
―ありがとうございました!
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