相続の手続きはなぜ大変?よくある困ったこと3つの事例とその解決方法
相続手続きは大変だと聞いたことがありませんか?
大げさだと思う方もいるでしょう。
「相続の手続きって言っても、死亡届を出して、銀行などの解約手続きをして、遺産を分けるだけでしょ?」と。
簡単に話をまとめてしまうとその通りなのですが、実際のところは、なかなかスムーズに進まない場合が多いのです。
どうして、相続手続きは大変と言われるのか、そして、どのようなことで困るのでしょうか。
この記事では、相続でよくある大変で困ったというお困りごと3つを紹介します。それぞれの対策方法も説明しますので、是非参考にしてください。
- 遺産の全容がわからないといろいろなところを探して調べるので手間も時間もかかる
- 分けずらい財産は不動産や事業や株。話し合いや事前に対策することが肝要
- 現金で払う相続税。その資金準備も忘れずに対策
目次
この記事を書いた人
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
相続財産がわからなくて困った!
高齢になった両親と離れて暮らしていると、お互いが元気で暮らしているか、ということは話しても、財産がどこにどのくらいあるのかまでは話していなかった(話せなかった)という方は少なくありません。
親に財産の話をしたら「遺産目当てで自分の死を待っているのか?」と思われてしまうかもしれないという不安や、「縁起でもないことは話せない」など、死にまつわることは口に出しにくく、自分の親だからこそ話せないという方もいるでしょう。
しかし、対策を先送りしているうちに相続が始まってしまったということも実際に起こりえます。
親の急死で財産の全貌がわからない
突然親が亡くなった場合、日頃、お金に関しての話をしていなければ、どの金融機関に口座があるのか、どんな財産があるのかを探さなくてはなりません。
残された家族は気持ちの整理ができないまま、このような作業に追われることになります。
先述で、相続手続きは「死亡届を出して、銀行などの手続きをして、遺産を分けるだけ」とありましたが、実は、その手続きのための準備も骨が折れることなのです。
▼依頼するか迷っているなら、まずはどんな手続きが必要か診断してみましょう▼相続財産がわからなくて困った!を解決する方法
殆どの方が複数の金融機関と取引していることが多く、中には残高が残ったまま放置されている口座もあるかもしれません。
また、現金をタンス預金(へそくり)として分かりにくい場所に置いている人もいるでしょう。
同居をしていればある程度は大事なものをどこにしまってあるか検討もつくかもしれません。しかし、別々に暮らしていて、全く手がかりがないようであれば、家中をくまなく探して相続財産を調べます。探し方には次のような方法があります。
故人の取引のありそうな金融機関を探す
残念ながら、全ての銀行に一括照会をする方法はありません。それぞれの銀行に問合せをします。
問合せ先をある程度絞るためには、実家に届く金融機関からのダイレクトメールや、カレンダーなどの粗品からどこの銀行と取引がありそうか目星をつけます。
また、長年暮らしてきた土地であれば、その地域にある金融機関一つ一つを訪ねて確認するという方法もあります。
調査は士業に代行してもらうこともできる
どの金融機関に預金があるか分からない場合、ネット銀行なども含めて、行政書士などの専門家に依頼して調査を代行してもらうこともできます。
▼めんどうな相続手続きは専門家に依頼しましょう▼財産がわからなくて困らないようにするための対策
やはり、どのような財産があるのかを生前に聞いておくかまとめておいてもらうのが王道です。
遺言書を書いてもらう
専門家のサポートの元、遺言書を書いてもらうことを提案をしてみましょう。
しっかりと財産の一覧をつけることになりますし、親の希望する相続方法を書き記すことができます。何より相続人ではない第三者で、士業の専門家であれば守秘義務があるので、自分の財産の話をするのに抵抗が低いでしょう。
なぜ専門家のサポートがあった方がいいのか
遺言書は自分で書くことはできます。しかし法的効力を持たせるには、細かい決まりがあります。
折角書いた遺言が無効にならないためにも専門家のサポートがあった方がよいでしょう
エンディングノートを書いてもらう
事前にどのような財産があるのか聞いておくのが一番なのですが、親が家族にも明かしたくないようなそぶりであれば、せめて「何がどこにあるか」だけでも書いておいてもらうよう頼んでみましょう。
市販のエンディングノートを活用すると何を書けばよいか整理されているのでとても便利なのですが、抵抗があるようなら大学ノートなどでもかまいません。
分けられない遺産に困った!
分けにくい遺産として代表的なものは不動産です。もちろん不動産を売却して現金化してしまえば分けやすいですが、片親がそのまま住み続けるのであればそうもいきません。また、買い手を探すことは簡単ではありませんし、売れたあとも手元に入金があるまでは時間がかかります。
不動産以外で分けにくいものは、事業をしている方であればその会社の経営や株です。誰が引き継ぐのかで揉めることもあるかもしれません。
▼何をすればいいか迷っているなら、今すぐ調べましょう▼分けられない遺産に困った!を解決する方法
不動産や自社株のように、複数の相続人できっちりと分けることが難しい遺産をどのようにするかは頭の痛いところです。
この点は、相続人の間でしっかりと話し合ってトラブルに発展しないようにすることが重要です。
遺産分割協議書を作る
分けられない遺産については遺産分割の話し合いの場を持って折り合いをつけるしかありません。この場合は、後日言った言わないの水掛け論にならないように、きちんと遺産分割協議書作成しましょう。
▼まず、どんな相続手続きが必要か診断してみましょう。▼分けられない遺産に困らないための対策
できることなら財産を渡す側である親が「遺言書(できれば公正証書遺言)」を生前に作成し、誰に引き継がせたいのかを意思表示することが重要です。
その財産を相続する対象にならなかった相続人に対してのフォローも大切です。
不公平感や不満がないように、代わりに渡せる遺産があればそれを相続させることを併記したり、生命保険をかけたりしておくのが相続人間での紛争を防ぐためのポイントです。
相続税の納税資金がなくて困った!
不動産も預貯金も株式もまんべんなくあればよいのですが、遺産のほぼすべてが不動産というケースも珍しくありません。
相続税は相続開始を知った翌日から10カ月以内に申告・納税まで行いますが、納税は「現金で一括納付」が原則となります。
つまり手元に現金がなければ相続人は自分自身が貯めてきた預金を取り崩して払わなければならないおそれもあるということなのです。
相続税の納税資金がなくて困った!を解決する方法
相続税の納付期限は伸ばすことができます。ただし以下の要件の全てを満たす必要があります。
- 相続税額が10万円を超えること。
- 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
- 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。(ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。)
- 延納申請に係る相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。
引用:国税庁ホームページ「No.4211 相続税の延納」
なお、延納期間中は利子税の納付が必要です。
▶詳しくは「延納によって相続税を分割払いにする方法と利子税の計算方法」へ
▼めんどうな相続手続きは専門家に依頼しましょう▼相続税の納税資金がなくて困らないための対策
この点は、生前の対策がとても重要です。
相続税を納税するための現金を準備するための対策方法として知られているのが、生命保険をかけるというものです。
アパートなどの収益不動産をもっている場合は、生前に贈与してもらい、その収益を納税資金にあてるという方法も考えられます。
生命保険がどうして相続税対策になるのか
死亡保険金は遺産分割の対象にはならないという特徴があります。
死亡保険金は受取人が指定されていて、指定された人がもらえるものなので、他の相続人の同意などが不要なため比較的スムーズに入金されます。加えて保険金は、法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)一人につき500万円までを課税対象額から控除することができますので節税を兼ねることもできます。
▼どの程度相続税がかかるか計算してみましょう▼相続手続き一覧と流れ
ここまで説明してきた相続のお困りごとですが、そもそも相続手続きとはどんなことを言うのでしょうか。
役所関係の手続きから預貯金口座の解約、不動産の相続登記、生命保険金の請求などを一覧で時系列でご紹介します。
ただし、故人の遺産の種類や総額などによって、必要な手続きは異なりますのでご注意ください。
相続開始日からの期限(目安) | 一般的な手続き | 手続き場所 |
---|---|---|
7日以内 | 死亡診断書の受け取り | 病院など |
死亡届と火葬許可申請書の提出 | 役所 | |
14日以内 | 国民健康保険・後期高齢者医療制度・介護保険の資格喪失の手続き(※故人が勤務先の健康保険に加入している場合は5日以内) | 役所 |
世帯主変更届の提出 | 役所 | |
年金受給停止の手続き | 年金事務所など | |
公共料金や各種サービス等の名義変更・解約などの手続き | 各会社 | |
金融機関への連絡、手続き | 各金融機関 | |
3ヵ月以内 | 遺言書の有無の確認、検認 | 自宅/法務局/公証役場など |
相続人の調査、戸籍収集 | 役所 | |
相続財産の調査 | 自宅/金融機関など | |
遺産分割協議開始 | – | |
相続放棄・限定承認の申述 | 家庭裁判所 | |
生命保険の受け取りの手続き | 各保険会社 | |
4ヵ月以内 | 被相続人の所得税の準確定申告 | 税務署 |
10ヵ月以内 | 遺産分割協議書の作成 | – |
遺品整理 | 自宅など | |
預貯金・有価証券・不動産等各種名義変更手続き | 金融機関/法務局など | |
相続税の申告 | 税務署 | |
1年以内 | 遺族年金請求書の提出 | 年金事務所など |
未支給年金請求書の提出 | 年金事務所など | |
高額医療費の請求申請 | 役所/健康保険組合など | |
葬祭費、埋葬料の支給請求 | 役所/健康保険組合など |
まとめ
この記事では、相続が発生して困ってしまうケースをご紹介しました。もっと具体的な相続事例を知りたい方は、ぜひ、「みんなの相続事例集」をご覧ください。
相続手続きは、何をいつ、どこですればいいのかを調べることから始めるため、思った以上にスムーズにすすまないものです。
しかも、手続きは十人十色。「自分の場合はどの手続き、どの書類が必要なのか」を検討しなくてはなりません。
加えて、相続手続きは主に財産に対する手続きなので、相続人が複数いると手続き先では相続人全員が同意しているのか?ということが重要視するため、自分一人で完結することができないことがとても多いのです。
そのため、書類一つ作るのにも、相続人全員の押印や署名、戸籍の添付などが必要とされるため、決して効率的とは言えず、ストレスを感じることが少なくないでしょう。
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▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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