父はいくつか賃貸物件を所有していますが、司法書士の方に法人に物件を移した方が得をすると云われたらしいです。本当ですか?
本記事の内容は、原則、記事執筆日(2019年7月2日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
質問者:M.S
個人名義で賃貸物件を所有している人は、その事業を法人化することによって所得税や相続税の節税につながることがあります。その手順を確認してみましょう。
まず、法人を設立する
法人の設立は、旧商法のもとでは資本金1,000万円を確保しなくてはなりませんでしたが、現在は最低資本金制度そのものがなくなっているため、100万円以内などの少額でも設立することができます。 自分で法人登記を申請するとなると申請書の作成方法なども調べなければならないため手間がかかりますが、司法書士に依頼すれば実費込みの30万円以内くらいで手続きを代行してもらうことができます。(具体的な費用は事務所によって異なるため、かなりばらつきがあります)
もし依頼した場合、依頼者側では会社の印鑑を作成し、司法書士の指示に従って決めるべきことを決定していくだけです。 ポイントとなるのは「この法人の株主は被相続人(亡くなった人)自身ではなく、妻や子供など相続人にする」ことです。こうすることにより被相続人の財産を増やさないようにすることができます。同時に、代表取締役や取締役などの役員も相続人を選任します。
◎建物を法人に譲渡する
土地、建物のうち建物のみを設立した法人に譲渡します。譲渡する際の価格は個人の過去の申告の帳簿価格としますが、買い取り資金がないことから長期の分割払いとします。
◎以降の賃料は法人が受け取る
法人設立後は賃料を法人が受け取ることになりますが、ここから役員への報酬を支払うことになります。つまり法人が受け取り、個人である相続人(上記で役員に選任した者)にお金が流れる図式となりますので、ここで生前贈与したのと同様の効果が得られることになります。 受け取った役員の側は給与所得控除を使うことができますのでその分所得税を抑えることができます。 また、家賃収入のすべてを報酬として支払ってしまうため会社側も法人税がかかりません。
◎生命保険も効果的に活用する
たとえば生命保険の解約返戻金を有効活用すれば大規模修繕等に対応することもできます。 また、死亡保険金には「法定相続人の数×500万円」という非課税枠もあり、相続税節税にもなります。 現在では法人専用の保険商品もあり、商品によって一部、半額、全額などを経費扱いにすることができるようになっています。
ただ、年間の手取り家賃がどのくらいかにより個人と法人のどちらが得になるかが分かれてきますので、法人化を検討する際は必ず税理士に相談するようにしたいものです。
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