借地権割合を使って借地権や貸宅地の相続税評価額を計算する方法
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2019年5月17日に公開された記事を再編集したものです。
相続税や贈与税の税額を計算するには、相続財産や贈与財産の相続税評価額を計算しなければなりません。
借地権や貸宅地(底地)、貸家建付地を相続したり、贈与を受けた場合は、どのようにして相続税評価額を計算すればよいのでしょうか?
それには借地権割合を使います。
この記事では、借地権割を使って、借地権や貸宅地の相続税評価額を計算する方法をわかりやすく説明します。
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借地権割合とは?
借地権割合とは、自用地(他人の権利の目的となっておらず、自分で自由に使用できる土地)とした場合の相続税評価額に対する借地権の相続税評価額の割合のことをいいます。
「しゃくちけんわりあい」と読みます。
借地権とは?
それでは、そもそも借地権とは何でしょうか?
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権、または、土地の賃借権のことをいいます。
地上権も土地の賃借権も、平たく言えば、いずれも土地を自ら使用したり土地によって利益を得たりする権利のことです。
両者の違いを簡単にいうと、地上権は地主の承諾なく譲渡したり地上権の目的物を賃貸したりすることができますが、賃借権を譲渡したり賃借権の目的物を転貸するためには地主の承諾が必要であるといった違いがあります(なお、相続の場合は、地上権でも賃借権でも地主の承諾は不要)。
借地権と貸宅地の相続税評価額の計算方法
相続した借地権は相続税の、贈与を受けた借地権は贈与税の税の課税対象となります。
相続税と贈与税の税額は、財産の相続税評価額を使って計算します。
借地権の相続税評価額は、自用地とした場合の相続税評価額に借地権割合を乗じて(掛け算して)求めます。
つまり、借地権割合は、言い換えれば、借地権が、自用地とした場合の何%に相当する価値を持つのかということを示しています。
例えば、ある土地を自用地とした場合の相続税評価額が1億円で借地権割合が60%であるならば、その土地の借地権の相続税評価額は6000万円です。
逆に、借地権が設定されている貸宅地(底地)の場合の評価額は、自用地とした場合の評価額から借地権の評価額を差し引いて算出します。
つまり、「貸宅地の評価額=自用地としての価額−自用地としての価額×借地権割合」となります。
例えば、前述の例の貸宅地の相続税評価額は、4000万円となります。
「自用地の所有権の評価額=借地権の評価額+貸宅地の所有権の評価額」というふうに理解すると分かりやすいかもしれません。
借地権割合は、借地権と貸宅地以外にも、貸家建付地の相続税評価額を計算する際にも利用します。
貸家建付地については「貸家建付地の相続税評価額の計算方法と貸家建付地による相続税対策」をご参照ください。
借地権割合の調べ方
借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています。
借地権割合は30%から90%の間であり、都会の方が田舎よりも借地権割合が高い傾向にあります。
借地権割合等が、路線価図によって定められている地域を路線価地域、評価倍率表によって定められている地域を倍率地域といいます。
まず、調べたい土地が路線価地域なのか倍率地域なのかを調べます。
これを調べるには、次の手順で確認します。
- 国税庁ウェブサイトの「財産評価基準書」のページにアクセス
- 評価倍率を調べたい年のボタンをクリック ※相続税の場合は相続開始の年、贈与税の場合は贈与を受けた年
- 都道府県名をクリック
- 「評価倍率表」欄の下の「一般の土地等用」、「大規模工場用地用」または「ゴルフ場用地等用」のうち、該当するものをクリック(通常は「一般の土地等用」)
- 市区町村名をクリック
評価倍率表を開いたら、「町(丁目)又は大字名」欄と「適用地域名」欄を参照し、土地がある地域を探します。
土地がある地域が見つかったら、「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」欄の「宅地」の欄に「1.1」等の数字が記載してあれば倍率地域で、「路線」と記載してあれば「路線価地域」です。
倍率地域の場合は、「借地権割合」の欄に数字が書いてあれば、その数字がその地域の借地権割合です。
倍率地域にもかかわらず、「借地権割合」の欄に数字ではなく「−」と表示されている地域があります。
その場合の借地権割合は20%とします。
次に、路線価地域の借地権割合の調べ方を説明します。
倍率地域と同じく国税庁ウェブサイトの「財産評価基準書」のページで都道府県名をクリックするところまでは同じです。
次に、「路線価図」という文字をクリックします。
宅地が存在する市区町村名をクリックします。
そうすると地名の一覧がでてくるので、宅地が存在する地名の右の路線価図ページ番号をクリックします。
路線価図ページ番号が複数に別れている場合は、それぞれクリックして宅地が面した路線が掲載されている路線価図を探してください。
国税庁の財産評価基準書のウェブページの難点は、路線価図がページごとになっており、スクロールすることができません。
探しにくい場合は、一般社団法人資産評価システム研究センターの運営する「全国地価マップ」というウェブサイトの相続税路線価図のページを利用するとよいでしょう。
全国地価マップの難点は、掲載が公表から4、5か月遅れることです。
全国地価マップでは、11月下旬頃に、その年の路線価図が掲載されます。
路線価図は下図のようになっています。
各路線に数字とA〜Gのアルファベットが記されています。
数字は路線価を、アルファベットは借地期権割合を表していています。
借地権割合を調べたい土地の接している路線のアルファベットを確認します。
各アルファベットの借地権割合は次のとおりです。
- A:90%
- B:80%
- C:70%
- D:60%
- E:50%
- F:40%
- G:30%
土地が複数の路線に接している場合は、数字の大きい方の路線の借地権割合を採用します。
路線価地域であるにもかかわらず、路線価と借地権割合が定められていない路線もあります。
その場合の借地権割合は20%とします。
まとめ
以上、借地権割合について説明しました。
この記事を参考に、自用地とした場合の相続税評価額と借地権割合を元に、借地権や貸宅地の相続税評価額を自分で計算することができるようになったかと思います。
借地権や貸宅地の相続税評価額を計算するためには、まず、自用地とした場合の相続税評価額を計算しなければなりませんが、それには様々な評価減(評価額の減額)の制度の適用を受けることができ、その仕組みは極めて複雑であり、税理士に依頼しても、税理士によってまったく異なる評価額が算定されるほどです。
様々な評価減の制度を適用させて、土地の相続税評価額をできる限り低く計算し、相続税や贈与税を節税するためには、土地の評価に精通した税理士に相談することが必要不可欠です。
▼実際に「いい相続」を利用して、税理士に相続税申告を依頼した方のインタビューはこちら
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