「依頼者さんとお話するのが好きなんです」良い意味で弁護士らしくない親しみやすさが魅力
「『(良い意味で)弁護士らしくなくて、話がしやすい』と言われます」と、親しみやすい笑顔で語ってくれた山口 征樹弁護士。成年後見の申立などのお年寄りをサポートする活動を多く実施し、それに関連して相続の案件も多く取り扱ってきたそうです。
今回は山口先生に相続の解決事例や、法曹での仕事に就こうと思ったきっかけを伺いました。ぜひ、参考にしてください。
モットーは「お客様と同じ立場に立って、親身にご相談をさせていただき、お客様と同じ意識を持って解決をしていくこと」。司法書士として約10年実績を積んだ後、弁護士資格を取得。より広いフィールドでの問題解決に取り組む。
山口法律事務所
目次
身寄りのないお年寄りの成年後見や相続など、高齢者に関わる問題を解決してきた
―山口先生は、主にどのような案件を受けていますか?
最も多いのは成年後見の案件ですね。割合で言うと半分近くもあるんですよ。成年後見制度の申立だけでなく、成年後見人としての財産管理や病院への入院手続き、介護施設への入所手続きなど、身寄りのないお年寄りを法的にサポートする活動を幅広く扱っていますね。
身寄りのないお年寄りの方は、特別養護老人ホームなどの施設入居にあたって「身元引受人がいないと入居できません」と施設側から言われるんです。そして社会福祉協議会を通して、私のもとに依頼が入りますね。
ご本人がすでに認知症になっている場合は、正しい意思決定ができないとみなされ、成年後見の申立をして私が成年後見人になるんですよ。
―成年後見の案件は、相続案件に関係するんでしょうか?
成年後見は本人がお亡くなりになると終了するんですが、その後は相続という問題が発生します。そのため、必然的に相続にも一定程度関与するようになりました。
紛争を防ぐためにも、事前に弁護士に相談することが一番の近道
―先生は成年後見だけでなく、生前贈与や遺言にも注力していると伺いました。それはどうしてですか?
やはり相続人同士の紛争を防ぐためには、生前贈与や遺言書作成を行う段階で配慮が必要だと考えているからです。その配慮が足りなかったために相続発生後に紛争となる事案をたくさん経験してきました。
生前贈与や遺言によって、特定の相続人に多くの財産が受け継がれるような相続は、紛争になりやすいんです。やっぱり、遺産を少ししかもらえない相続人にとっては不満ですからね。
その一方、生前贈与や遺言書があっても「特別受益の持戻しが免除」されていたり「遺留分を侵害しない範囲の生前贈与や遺言」がなされているのであれば、後に紛争となる可能性は少なくなります。
被相続人が相続財産に特別受益を持ち戻す(加算する)必要がない旨の意思表示をすることで、持ち戻しをなくすこと
特別受益
被相続人から特定の相続人への贈与等があった場合に、その贈与等を相続分の前渡しとみて、計算上その贈与等を相続財産に持戻して相続分を算定すること
遺留分
一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分
このような配慮は、一般の方が行うのは難しいかと思います。なので法律の専門家である弁護士に相談・依頼してほしいと思いますね。
そして生前贈与や遺言を受けていない相続人にとっても、公平・適正な解決のために法律の専門家である弁護士に相談・依頼するのが一番の近道だと考えています。
法律婚か内縁関係かで、相続の内容は変わってくる
―これまでで印象に残った相続の事例はありますか?
故人の異母兄弟から、遺産を渡すよう要求された事例
夫が亡くなった案件で、奥様から「私達夫婦には子どもはいないのですが、夫の腹違いの妹から夫の遺産を渡すように要求され困っています。」とのご相談を受けたことがあります。
ご夫婦はその妹とあまり面識がなく、奥様は「できれば遺産は渡したくない」とご希望でした。
前提として法律婚の夫婦の相続権は、子どもがいないとなると残された配偶者のほか、亡くなった夫の両親または兄弟姉妹(腹違いの兄弟姉妹も含む)も相続人となります。
この場合、故人の腹違いの妹も相続人となり、1/4の法定相続分を有していました。そのため、夫の遺産から1/4に相当する財産を遺産分割として交付する必要がありました。
しかし、もし亡くなった夫が生前に「妻にすべての遺産を相続させる」旨の遺言書を作成していれば、遺言書通りに妻が夫の遺産すべてを相続することができたんです。兄弟姉妹には遺留分がありませんので。
相続では、ほんの少しのことで結論が異なることがあります。事前にご相談いただいていたなら、遺言書を作成によって対応できたはずの案件でした。
相続とは異なる観点で、内縁の妻に財産を残すことができた事例
なお同じような案件で、内縁の夫婦の夫が亡くなった案件もありました。
「夫が家計を管理していたので、夫婦の財産はほぼ夫の名義です。これからの生活もできなくなってしまいます。法律婚ではありませんが、私は遺産をもらえませんか?」と奥様から依頼が来ました。相続人として夫側の親族がいました。
内縁の夫婦の場合、残された配偶者に相続権はありません。そうなると夫の遺産は相続人がすべてを相続することになり、内縁の妻は夫の遺産を相続することができません。相続という観点からは、夫の遺産は相続人が相続することになります。
内縁関係とは言え長年夫婦として連れ添ってきたのに、内縁の妻は1円も財産をもらうことができないのです。
そのため事件対応は困難を極めました。しかし、たまたまこの案件が「内縁の夫婦で、共同してお店を経営していた」という案件であったため,相続とは異なる観点(組合契約という構成)で、内縁の妻に夫の財産の一部(約半分程度)を残すことができました。
もっとも内縁の夫婦の場合も、夫が生前に「妻にすべての遺産を相続させる」旨の遺言書を作成していた場合、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺言書通りに妻が夫の遺産すべてを相続することができます。
司法試験を9回目で合格し、念願の弁護士に
―山口先生が弁護士を目指したきっかけはありますか?
弁護士を志したのは高校生くらいかな。高校2年生くらいで文系か理系かを選択しますよね。私は数学が得意科目だったので、正直理系に進むという選択肢もありました。
しかし当時、リクルート事件など政財界を舞台とする汚職事件が発生して、大きな社会問題となりました。リクルート関係の不動産会社の未公開株が、賄賂として政財界にばらまかれたんです。いわゆる収賄罪ですね。当時の竹下登内閣は総辞職しましたよ。
そのような社会情勢のもとで汚職事件を捜査する検察官や、起訴された事件を審理する裁判官、被告人を弁護する弁護人(弁護士)といった職業にさらに興味をもつようになりました。そこから司法試験の受験を考えるようになりました。
その後、中央大学法学部に進学し、司法試験合格を目指しました。でもなかなか合格できなくて…。受験9回目(!)でようやく司法試験に合格しました。嬉しかったです。その後、司法修習を終了し弁護士となりました。
―9回も司法試験を受けたなんてすごいです。心が折れませんでしたか?
そうですね、何度も折れそうになりました。でも就職せず勉強だけしていたので、もう引き返せないというか(笑)
私が試験を受けていた当時は、合格率が3%くらいだったんです。択一試験と論文試験があって。だから私くらい受けている人も結構いましたよ。まあ記念受験の人もいたんですけど。
―念願の弁護士になって、実際はどうですか?
なったばかりの頃は大変でしたが、今は結構気楽にやれていますね。結局、依頼者の方に「これで良かったわ。弁護士さんありがとう」と言ってもらえれば良いと気付けたことが大きいですね。それまでは、独善的に結果ばかり気にしてしまっていたので。
あと、私は依頼者の方とお話するのが好きなんです。「どこのお店が美味しい」とか他愛もない話をしたり。もちろん、案件の話が終わってから。いろいろな職業の人の話を聞いたり、その人の考え方について話したり、お話しているのは自分にとっても楽しいんです。
調停をしているときも、半分くらいは待っている時間なんです。相手方の意見や裁判官の協議を待つ時間があるので。その間も依頼者さんと話していますね。黙っていてもしょうがないし、話すことはそれなりにありますから。
なので「弁護士ってもっと怖いと思っていたけど、山口先生は弁護士らしくないですね」と言われたりします(笑)それで良いと思います。依頼者さんには何でも話して欲しいですから。
まずは事実関係を十分に把握し、可及的速やかに問題解決をする
―相談に来た方と話すとき、何か配慮することはありますか?
紛争になっているときは、まず事実関係を十分に把握する必要があると考えています。相談者さんと話して少しずつ聞いていくんです。
そしてお亡くなりになった被相続人の生前の意向や、相続人の方のご希望を速やかに尊重して、適正な紛争解決の道筋を示せるような対応を心がけています。
―最後に、弁護士への相談を検討している人にアドバイスをお願いします。
紛争が起きてから困って弁護士事務所に来られるのもそうですが、相続が起きる前に前提知識として専門家に相談しておくのも大事かと思います。そうすれば生前贈与や遺言書などの対策が取れますし、紛争を回避することにも繋がります。
相談には多少費用もかかってしまいますが、うちは法テラスの民事法律扶助制度を使った無料相談もできますから、一定の条件を満たせば3回まで無料相談が可能です。ぜひ、お気軽に相談してくださいね。
―ありがとうございました!
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