遺産相続のトラブル「争続」を回避するには?
遺産相続においては多くの人が「財産の多い家がそれを取り合っているのだろう」「うちは何も分けるものなどないから」という誤解に基づく思い込みをしてしまっています。
それにより、何の手も打たないうちに相続が開始し、思わぬトラブル発生に慌てることになるのです。
では、相続トラブルの原因となる要素、それを防ぐための対策を考えてみましょう。
目次
「争続」となってしまう原因は何?
遺産相続でトラブルとなる要素はもちろん各家庭によりさまざまなのですが、典型的なトラブルのパターンがあります。
まずその一つとしては「財産自体が分けづらい性質である」ことです。
日本においてとても多い相続財産の構成は「大半が持ち家などの不動産であり、預貯金など分けやすい資産があまりない」というものです。
このような場合、不動産を誰かに相続させてしまえば当然、他の相続人から分割方法の不公平さへの不満が出ることになります。
不動産を売る、貸す、共有にするなど色々な方法がありますが、自分のケースではどのような方法がベストなのか、専門家に相談しながら考えていかなくてはなりません。
もう一つとしては「親の生前から抱いていた不満が親の死後、各相続人から出てくる」ことです。親の生前には仲が良さそうに見えていた兄弟でも実は数十年に渡って様々な不満をためていたことがあります。また、若い頃は仲が良かった兄弟でも年齢を重ねるごとに親の介護問題や、お互いの配偶者などを通じた不満が出てくることがあります。ただ、親の側がそれに気づいていなかったり、気づいていても認めたくない気持ちがあることから何の対策も打たないことが多いということなのです。
関係者の人数が多すぎるのもまとまらない原因
相続は、その関係者の人数が少ない方がやはりスムーズにいきます。
もちろん、兄弟の人数が少なくても上記のように仲が悪ければ膠着状態になってしまうこともありますが、人数が多ければ相互に連絡しあうだけでもひと苦労、ということになります。
一般的に相続手続きを放置する期間が長ければ長いほど「後発的に人数が増えてしまう」ことにつながります。
たとえば「相続税の申告と納税は相続開始から10カ月以内」のような手続きの期限が不動産の相続登記には存在しません。
よって、放置しようと思えば何年でも放置できてしまうという実情があります。不動産によっては10年、20年と相続登記がされないこともあり、相続人も死亡してしまって関係者の人数が二倍に増えている、ということもあるのです。
相続が発生したらすぐに遺産分割協議をしてすぐに相続登記を終える、これも次の世代のことを考えた「争族」対策といえます。
トラブルを防ぐためにできること「遺言書作成」
相続におけるトラブルを防ぐために親ができることとして最も有効なのが「遺言書の作成」です。
相続人は親がどのように遺産を分けてほしいのか、その意思がわからないためにお互いに都合の良い主張をするということがよくあります。それらを封じるためにも、親の側がまだ意思能力がしっかりしているうちに「公正証書遺言」によって意思を明確に表示しておく必要があります。
トラブルが高確率で予測される場合は自宅で作成する「自筆証書遺言」だと余計に揉め事を誘発してしまうおそれがあります。
自筆証書遺言の場合に起こりやすい問題というのは、まず「法律上の要件を満たしていない遺言書が見つかってしまった」ということです。
自筆証書遺言が法的に有効となるためには、「全文を自書する」「日付を記載する」「氏名を記載する」「押印する」など、いくつかの要件をすべて満たさなくてはなりません。
しかし、これが全部揃っている自筆証書遺言は意外と少ないのです。おそらく、弁護士などの専門家の指導を受けず、自己流に書いてしまう人が多いことによるものでしょう。
また、自筆証書遺言では「財産の特定が甘い」というのもよくあることです。特に不動産の場合に「南側の土地」など、非常に曖昧な記載がされていることもあり、それでは法務局で相続人への名義変更(相続登記)をしようとした時に申請が通らないからです。
そして、自筆証書遺言は「本当に被相続人が自分の意思で書いたのか?」ということがよく争われます。
自分に都合の悪いことを書かれた相続人がその遺言書は誰かが親に無理やり書かせた、などのクレームをつけることが少なくないからです。よって、費用はかかりますが必ず公正証書遺言にすることをおすすめします。
公正証書遺言はいったん作成しても、その後の事情により何度でも変更できますので数年おきに見直しをして作り直すということもできます。
トラブルを防ぐためにできること「親が元気なうちの家族会議」
遺言書は「親の側が一方的に意思表示する」ものでしたが、もう一つの方法としては、早い段階で家族会議を持っておくこともよいでしょう。
家族会議のポイントを確認してみましょう。
親から子供たちへの気持ちを伝える
まず親の側が子供たちへの日頃からの感謝の気持ちをしっかり述べておくことです。兄弟の間の感情的な不満は、「兄弟の方が自分より優遇されていた」などの気持ちに基づくものが多いため、親が各相続人のことをしっかり考えているということを明確にすることが大切なのです。
見込まれる相続財産の内容を明確にする
また、親子間でお金の話をしづらいということもあるかも知れませんが、これでは問題を先延ばしにしているに過ぎません。自分が死亡した際にどのくらいの相続財産が見込まれるのかということを親が書面を使って子供に説明しておかなくてはなりません。
現在、色々な出版社などから「エンディングノート」が出版されています。
もちろん、エンディングノートは公的な遺言書のような効果はないのですが、被相続人が自分の資産を整理、把握しておくために有効活用できるものですから、財産が散逸してしまって自分でも全貌をわかっていないという人は一度ぜひ作成してみるとよいでしょう。
よくある「兄弟による親の財産の使い込み」などの疑惑が生じないようにするためにも、ある時点での資産額を正しく把握することは大切なことです。
財産をどのように分けてほしいかを伝える
親自身の希望する分け方を具体的に子供達に伝えておきます。日本人はどうしても「お前たちの良いように分けなさい」などという言い方をしがちですが、それこそがトラブルの元凶になっているのです。
ただ、分け方を明確に伝えたら、なぜそのように希望するのかという根拠を併せて説明しておくことです。ここのところがはっきりしないと、せっかく希望を伝えても子供達に不満が残ることになってしまいます。
もし、特定の相続人に生前贈与などがあった場合、不公平感が残らないように調整するのも大切なことです。
家族会議の内容を書面化する
大切なことを話し合った後は、それを書面にし、後日「言った、言わない」の話にならないようにしておかなくてはなりません。
税金対策などについて
なお、相続財産が基礎控除である「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える家庭の場合は相続税対策が必要になってくることもあるでしょう。
こういったことはインターネットを使いこなす子供世代の方が新しい情報を持っていることもあり、親が一人で考えているよりも良い案が出てくることもあります。
ただ、やはり具体的な税金対策については税理士への相談が必須となりますので、できれば税理士と家族全員が揃う形での打ち合わせができることがベストです。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きや遺言書の作成を依頼した方のインタビューはこちら
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