遺言とは違う遺産分割をしたら贈与税の対象となるものでしょうか?
遺言では自分が全財産を受けるよう書かれていましたが、これをやめて兄弟3人全員で話し合い分けることにしました。すると、私から兄弟への贈与になり贈与税の対象になってしまいますか?
このケースでは、全財産を相続するはずだった長男が遺贈により受けた権利を放棄して最初から兄弟3人で遺産分割協議をしたとみなします。
よって、いったん相続してから各自の財産を他の相続人に渡したとの扱いを受けるわけではないため、贈与税は発生しません。
遺言書と異なる遺産分割協議ができる
遺言書があった場合、遺言書は法定相続に優先しますが、もし法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)の間で「この遺言書と異なる内容で遺産分割する」という合意が形成できればそのように分割しても構いません。
実際、遺留分(それぞれの相続人に保障された最低限の相続分)をまったく考慮しない遺言書が見つかったため、遺留分を確保する意味で遺言書と異なる内容の遺産分割協議を行うケースもあるでしょう。
また、「遺言書の通りに相続すると相続税額が高すぎるため、調整が必要」ということもあります。
実際、被相続人(亡くなった人)はそこまで考えずに遺言書を作ることも多いからです。 要するに、相続人全員が合意さえできれば問題はないことになります。
▶遺言書の種類と書き方、その効力。種類別作成方法と注意点【行政書士監修】
完了した遺産分割からさらに財産を移転すると?
では、税務的な面を見てみましょう。
いったん、遺産分割協議が完了し、相続関係が確定した状態からその財産を他の相続人に移転させるとそこに「贈与」があったものとみなされます。
つまり、移転した部分について「年間110万円の基礎控除」を超えれば贈与税の対象になるのです。
もちろん、最初の遺産分割協議書の内容が登記されていれば決定的ですが、相続登記がされなかったとしても遺産分割協議自体が完了していればすでに相続関係はいったん確定したものとされるのです。
「最初から行われた遺産分割」と扱われる
この相談者のケースでは、「全財産を遺贈する」旨の遺言書によって相続関係は確定したようにも見えます。
しかし、この長男には「遺贈の放棄」をする権利があります。他の相続人とともに遺産分割協議をしたということは、長男は遺言書に基づく遺贈については放棄しているとみられます。
遺贈の放棄は相続放棄とは異なるため、相続人としての立場は維持されておりその権利や義務には影響しません。
長男は最初からこの遺贈を受けていないため、その時点で相続財産の帰属先はいまだ確定していなかったと扱われるのです。
よって、遺産分割協議に基づく相続財産の移転は、相続後の新たな贈与とはみなされない=贈与税の課税対象にはならないわけです。
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