【事例】入院中でも公正証書遺言を作成できますか?(73歳男性 資産4,900万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、入院中でも公正証書遺言をしたいという、73歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士瀧原事務所/ホワット相続センターの行政書士・瀧原 至さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
愛知県東三河エリアで遺産相続に特化した法務事務所「ホワット相続センター」を運営。「親切、丁寧、迅速」を心がけながら年間100件以上の相談業務に従事している。
▶行政書士瀧原事務所/ホワット相続センター
入院して外に出られないけど、公正証書遺言を作成したい
相談内容
私は現在、がんで入院中です。もう命が永くないかもしれません。そこで自分の遺産の相続のために公正証書遺言を作成したいです。二男は親不孝者でしたので、財産を渡したくありません。公正証書遺言は入院中でも作成できますか?
- プロフィール:73歳男性
- お住まい:兵庫県
- 相続人:妻、長男、長女、二男の4名
- 被相続人:相談者本人
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅マンション 70㎡ |
2,500万円 |
預貯金 | 2,400万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 入院中でも公正証書遺言は作成できる
公正証書遺言を入院中又は施設入居時に作成したいという人が増えています。公正証書と聞くと難しそうで面倒なイメージが強く、公証役場まで行く元気もないから無理だと思うかもしれませんが、行政書士などの専門家に頼めば簡単に作成できます。
アドバイス2 入院している場合の公正証書遺言作成の流れ
公正証書作成の流れは、予約した日時に公証人・事務員が病室まで来てくれます。遺言者と証人2人以外は病室から出なければならず、他の患者さんと同室の場合は別室にて作成する事になります。
公証人が遺言者に質問をするのですが、「○番地○の不動産は誰に相続させたいですか?」との質問に対して「長女の○○です」と明確に答えられるようでなければなりません。たまに、薬などで意識がもうろうとしている中、公証人とのやりとりをはじめてしまうケースがありますが、当然、その日は遺言書作成に至りませんので注意が必要です。
経験談ですが、末期がんを患っていた方から遺言書作成のご依頼を受け、打合せの日は元気でしたが、それから3日後に作成のため病室に伺ったときには、口から食事もとれない状態まで悪化しており、結果的に遺言書作成に至らなかったことがあります。そのときは、もう一日早く伺っていればと後悔したものです。
ちなみに、公証人の費用は、日当(4時間以内)1万円及び交通費の実費が作成費用に加算されます。公証役場まで来られない理由が面倒だからなどの理由では、簡単に出張を承諾してくれないので注意して下さい。
アドバイス3 公正証書遺言を作成するときは遺留分に注意
民法では、遺言の内容にかかわらず、兄弟姉妹(甥姪)を除く相続人には絶対にもらえる分を残しています。それを「遺留分」といい、法定相続分に総対的遺留分をかけて計算します。総対的遺留分は、妻=2分の1、子や孫=2分の1、親や祖父母=3分の1です。
例えば、法定相続人が妻だけの場合は⇒法定相続分100%×総対的遺留分2分の1(50%)=遺留分は2分の1(50%)となります。
もうひとつ、妻及び子ども2人の場合は⇒妻の法定相続分2分の1×総対的遺留分2分の1=妻の遺留分は4分の1、子供1人の法定相続分4分の1×総体的遺留分2分の1=子1人の遺留分は8分の1、となります。なお、遺留分を請求する期間には制限があるので注意しましょう。
遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈のあったことを知ったとき(葬儀や遺言書を確認した時など)から1年間行使しないとき、時効によって消滅し、相続の開始(死亡)の時から10年を経過した時も消滅します。
解決のポイント
病室での遺言内容のヒアリング、各資料の取得、公証人との打合せ及び証人など、関係する手続きすべてのお手伝いを当事務所経由で行えたことが、遺言者様にとっての依頼ポイントとなりました。
相続についてのご相談は「いい相続」へ
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携しており、相続手続きや相続税申告、生前の相続相談に対応できる行政書士や税理士などの専門家をご紹介することができます。
専門オペレーターが丁寧にお話を伺いサポートしますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
〈行政書士〉
愛知県東三河エリアで遺産相続に特化した法務事務所「ホワット相続センター」を運営。「親切、丁寧、迅速」を心がけながら年間100件以上の相談業務に従事している。
▶行政書士瀧原事務所/ホワット相続センター
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。