【事例】遺言書どおりに遺産分割すると不動産の問題が生じる?どのようにすればよい?(86歳女性 遺産4,400万円)
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、遺言執行を頼みたいが不動産の分割に困っているという、86歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、栂村事務所の行政書士・栂村 基文さんです。
目次
この記事を書いた人
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▶栂村(つがむら)行政書士事務所遺言書の通りに遺産分割しても大丈夫?
相談内容
夫が亡くなったので、遺言公正証書の執行を依頼したいです。遺言書には、「現在居住している土地建物と預貯金1500万円を全て私に相続させる」という内容でした。
また、その他の財産として「田畑15筆の土地を法定相続人に法定相続割合で相続させる」となっていました。
法定相続人の孫と話し、田畑はバイパス沿いや住宅地等に立地しており評価が高い不動産だから、法定相続人6人中4人で相続する意向となりました。
- プロフィール:86歳女性
- お住まい:群馬県
- 相続人:妻(相談者本人)、代襲相続人の孫5名
- 被相続人:夫
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 国税庁路線価・倍率方式評価 | 3,000万円 |
預貯金 | 1,500万円 | |
有価証券 | 100万円 | |
負債 | 葬儀費用、医療費、施設使用料等 | ▲200万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 遺言執行における課題
まずは、この遺言書通りに相続する場合、どのような課題があるかを考えてみます。
- 居住している土地建物と預貯金を全て妻が相続すると、遺留分侵害となること
- 田畑について法定相続人が法定相続割合で相続させると、それぞれの不動産について、相続人6人の共有状態となり、後の管理・処分が複雑化すること
アドバイス2 遺言執行者就任報告及び遺言書・相続関係資料の開示
この遺言書通りに相続をすると問題が生じますし、現実的ではありません。
次に、遺言執行を当事務所に依頼するにあたって、必要となる相続関係資料や相続人の意向について確認します。
- 遺言執行者は妻となっており、当事務所に執行を委任
- 執行者の就任報告及び執行に関する業務の委任者に関する報告
- 通知及び財産報告として、遺言公正証書の写しと財産目録及び不動産の公図及び現況写真を送付
- 遺産分割について、相続人全員の意見を聞くと共に、孫の相続人代表者の選定を依頼
アドバイス3 相続人の意見
相続人全員が同意すれば、遺言書の内容通りに遺産分割をしなくてもかまいません。そこで、改めて相続人の意見を確認しました。
- 田畑の相続に関して、法定相続人6人中2人は相続しない意思表示があった。
- その他の相続人4人は、田畑の共有状態での相続を避けたいことの意思表示があった。
- 遺留分に関しては、全員異議はなかった。
- 田畑の相続については、遺産分割方式で相続させることとなった。
- 田畑の公図、地図や現地写真などから、相続意向をとりまとめ、調整した結果、4人がそれぞれの田畑を単独相続することとなった。
- 田畑の法定相続に関しては、上記内容がまとまった結果を遺産分割協議書にとりまとめ、相続登記をすることとした。
ポイント
最後に解決のポイントをまとめました。
- 遺言に記載されている不動産の法定相続割合の共有分割について、相続人6人全員の要望をとりまとめ、遺産分割協議書方式による財産分割としたこと
- 田畑に関する評価額、立地条件、現況写真など判断材料となる詳細情報を提供したこと
- 相続人の取りまとめができる相続人代表者を設定して遺産分割を進めたこと
代襲相続人がいたり相続財産に田畑が含まれる場合、遺産分割が複雑になるため、一度は専門家に相談することをおすすめします。
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