【事例】代襲相続人がいる場合の遺産分割はどうすれば良い?(57歳男性 遺産3,600万円)【行政書士執筆】

「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、代襲相続がある場合の遺産分割について、57歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士FPしゅくわ事務所の行政書士・宿輪 德幸さんです。
目次
この記事を書いた人

〈行政書士・CFP〉
相続専門の事務所として2015年に開業。2017年からは、長崎県ではあまり知られていなかった民事信託の取り扱いを開始。既存の制度では対策困難な状況のご家族にも、民事信託の活用で解決策を提案しています。
▶ 行政書士 FP しゅくわ事務所
面識のない甥を遺産分割協議に呼ぶのが気まずい
相談内容
母が亡くなったので相続が発生しているのですが、兄が既に亡くなっているので兄の子(相談者から見た甥)が相続人になるかと思います。
甥とは関わりも少ないのですが、遺産分割協議にも参加してもらわないとダメですよね?
- プロフィール:57歳男性
- お住まい:群馬県
- 相続人:二男(相談者本人)、長女(相談者の妹)、長男の子(相談者の甥)の3名
- 被相続人:母
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) | 1,200万円 |
預貯金 | 1,200万円 | |
有価証券 | 600万円 | |
生命保険 | 600万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図

はじめに
人が亡くなると、その人が残した財産(遺産)は、遺言があれば遺言によって、遺言が無ければ相続人による遺産分割によって引き継がれます。
相続人には順位があり、子がある場合には配偶者と子が相続します。子が先に亡くなっている場合には、その子(被相続人の孫)が相続人となって遺産分割に参加しなければなりません。
アドバイス1 代襲相続と数次相続
人が亡くなったとき、誰が相続人になるかは法律で決められています。
このケースでは、子が相続人になります。三人の子がそれぞれ3分の1の相続分を持ちます。しかし、ご長男はすでに亡くなっていますので、その相続分はご長男の子が代わりに取得します。これが代襲相続です。
代襲相続と混同されがちなので数次相続と言われるものがあります。こちらは、相続手続き中に相続人が亡くなり、新たな相続が発生した場合です。数次相続では、新たな相続が発生していますので、もしこのケースで、母親の相続発生後、相続手続き完了前にご長男が亡くなったのであれば、ご長男の子と妻が相続人になります。
- ご長男が母親より先に亡くなっていた場合➢ご長男の子が代襲相続人になる。
- ご長男が母親より後に亡くなっていた場合➢ご長男の奥様と子が法定相続人に加わる。
相続発生後、手続きが長引いている間に数次相続が発生し関係が複雑になったり、相続人の認知症で手続きがストップするなど困難な状況になることもよくありますので、相続手続きは早めに進めることをおすすめします。
アドバイス2 代襲相続人が参加していない遺産分割協議は無効
代襲相続人は法定相続人ですので、相続人としての権利義務は他の相続人と同一であり、当然、遺産分割協議に参加する権利・義務を持ちます。
遺産分割協議は、共同相続人全員の自由な意志の合致によりなされなければならないので、戸籍上判明している相続人を除外してされた遺産分割協議は無効です。例えば、相談者様が、妹様と二人で遺産分割協議書を作成したとしても、
- 不動産の相続登記を申請しても受け付けてもらえません。
- 銀行で口座の相続による解約を申し出ても受け付けてもらえません。
- 有価証券の相続手続きもできません。
なお、生命保険の死亡保険金は遺産ではありませんので、保険金受取人のご長女が単独で手続きできます。
アドバイス3 法定相続分で分ければいいのか?
遺産分割協議は、相続人が遺産の分け方を決めるものですが、法定相続分通りにしなくてもかまいません。
全員が合意すれば、相続人の一人が全遺産を取得する遺産分割協議書は有効ですし、逆に法定相続分で分けようと提案しても、相続人の一人が拒否すれば遺産分割は成立しません。特に遺産に不動産があると、きっちり法定相続分で分割するのが困難な場合も多くあります。
このケースでは、相談者様と代襲相続人のこれまで付き合いがなかったということです。それでも上記の様に相続人としての権利は同じです。相続人全員が納得できる分割方法を考えなければ相続手続きが進まないことを理解したうえで、話し合いの席を設けるようにしてください。
どうしても相続人で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて、解決を目指すこともできます。調停では、法定相続分を基本に個別の事情を考慮して当事者の合意を図ります。
アドバイス4 相続手続きの先延ばしは百害あって一利なし
相続人の関係が良ければ遺産分割協議もスムーズに進みますが、そうでない場合にはつい先送りにしてしまいがちです。しかし、長引くほどと遺産分割協議の難易度は上がっていきます。
このケースでも、お母様一人暮らしだった場合は自宅が空き家になります。遺産分割協議により取得する相続人が決まるまでは、法定相続人全員の共有状態となりますので、賃貸に出すことや売却することは困難です。
空き家であっても管理費用や固定資産税など掛かりますし、空き家期間が長くなると老朽化が進み、遺産価値もどんどん低下していきます。
付き合いのない相続人と遺産分割協議をするのは気が重いかもしれませんが、なるべく早い解決を目指してください。
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