【事例】弟が遺産分割協議を拒否。勝手に決めちゃって良いですか?(50歳女性 遺産9,000万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、遺産分割協議に出たくないという相続人について、50歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、柿澤行政書士事務所の行政書士、柿澤秀和さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士〉
行政書士業務全般に携わり、特には、相続手続き、遺言書作成文案作成、外国人の入国手続きから、皆様の土地活用のお手伝いとして、農地転用や土地利用申請などを行っています。
▶柿澤行政書士事務所
遺産分割協議を拒否する相続人はどうする?
相談内容
父が亡くなったので通夜と葬儀をしました。弟は「父の葬儀なんて出たくない」と言って通夜も葬儀も来ず、本当に腹が立ちました。
遺産分割協議も近々するのですが、弟から遺産分割協議にも出ないと言われています。私たちで勝手に決めちゃって良いですか?
- プロフィール:50歳女性
- お住まい:茨城県
- 相続人:母、長女(相談者本人)、二女、長男の4名
- 被相続人:父
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) | 4,300万円 |
預貯金 | 4,200万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:父 受取人:母 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 遺産分割協議は相続人全員でしなければならない
遺産分割協議は相続人全員で行います。
しかし遺産分割協議においては、相続人の数が多く、関係が複雑であるほどまとまらない可能性がでてきます(今回のケースはまさに関係がこじれているケースです)。
法定相続人は誰か
この法定相続人は親族なら誰でもなるわけではなく、法律でその範囲が定められています。
法律上、まずは被相続人の配偶者や子どもが相続人となりますが、兄弟や子どもが死亡し、孫が権利を引き継いでいたりすると、人数が多くなりがちです。
しかし相続が始まって初めて、被相続人(故人)に愛人の子どもがいることや、知らない人物と養子縁組をしていたことが発覚するケースがあります。
ほかの相続人にとっては寝耳に水であり、相続人の数が増えれば当然受け取る遺産の額が減るため、簡単には納得はできないでしょう。
また、相続人の中に連絡が取れない場合、相続に参加しない相続人がいることもあります。
遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しないため、会ったこともない相続人や所在不明の相続人にも連絡を取らなければなりません。
相続人ごとにそれぞれ抱えている事情や思惑が異なります。そのため人数が増えれば増えるほど、利害は対立しやすくなるものです。
法定相続人の確定
相続の場合には、遺言書がない場合には、故人(被相続人)の生まれてから死亡時までの戸籍(原戸籍)を市役所などで、集めて相続人を確定します。
相続人が判明し、相続人間で遺産分割協議を開始します。協議が整った時点で、遺産分割協議書を作成することが望ましいかたちです。
このような相続人調査や相続財産調査は行政書士などの専門家に依頼することが可能です。
アドバイス2 遺産分割協議をしないとどうなるか
遺産分割について、相続人同士の話し合いで解決し分割できれば良いですが、今回のように当事者間のみでは協議がまとまらないケースもあります。
直接顔を見たくない場合は、電話やメールで遺産分割のやり取りをすることもあります。遺産分割協議は全員出席して対面でおこなう必要はありません。
どうしても遺産分割協議が完了しない時は、家庭裁判所に申し立て、調停や審判によって遺産分割を行う方法があります。
相手方のうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所、または、当事者が合意して定める家庭裁判所に申立書をすみやかに提出します。
1 遺産分割調停
遺産分割調停では、相続人のうちの1人もしくは複数人が申立人となり、ほかの相続人全員を相手方として家庭裁判所に申立てます。
そして、家事審判員や調査委員の立ち会いをもとに、相続人が集まり、納得できる形での合意を目指して話し合います。調停はあくまでも話し合いの手続きなので、最終的には相続人全員の合意が必要です。
家事審判官や調査委員はアドバイスをしてくれますが、結論は当事者が決定することで調停が成立します。
なお、調停成立後、相手方が結論に従わないときは強制執行が可能です。
遺産分割調停の申立てと提出書類
調停の申し立てには、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に行います。その際の必要書類は次の通りです。
- 申立書(当事者等目録・遺産目録・相続関係図)
- 被相続人の除籍謄本・改製原戸籍謄本など(相続人によって異なる)
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票
- 遺産に関する書類(遺産目録・不動産登記事項証明書・限定資産評価証明書・預貯金の残高証明書等)
- 収入印紙(被相続人1名に対し1,200円)
- 郵便切手
誰が相続するのかによって必要となる戸籍の範囲が変わるので、事前に家庭裁判所に問い合わせるなどして確認してから申し立てましょう。
戸籍などの必要書類の収集が手間だという方は、行政書士などに依頼しても良いでしょう。
2 遺産分割審判
審判は家庭裁判所に判断を委ねられます。裁判所の裁判官と調停委員が調停委員会を構成して事実調べ・証拠調べを行い、事情をよく把握したうえで家事審判官によって分割が命じられます。
審判による分割方法が不服な場合は、2週間以内に高等裁判所に即時抗告をして争うこともできます。
いきなり審判を申し立てることもできますが、調停に回されることが多く、調停が不成立となった場合は自動的に審判に移行します。
遺産分割審判の申立てと必要書類
審判の申立ては、被相続人の住所地の家庭裁判所に行います。必要書類は次の通りです。
- 申立書(当事者等目録・遺産目録・相続関係図)
- 被相続人の除籍謄本・改製原戸籍謄本など(相続人によって異なる)
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票
- 遺産に関する書類(遺産目録・不動産登記事項証明書・限定資産評価証明書・預貯金の残高証明書等)
- 収入印紙(被相続人1名に対し1,200円)
- 郵便切手
原則は法定相続分に応じて分割
相続財産は法定相続分に応じて分割されるのが原則的な取り扱いです。
もちろん、当事者間の事情や実態を総合的に考慮して分割方法を調整することにはなりますが、調停や審判による遺産分割であっても、原則として法定相続分に応じての分割が一般的です。
アドバイス3 専門家に間に入ってもらうなどして早めに遺産分割協議をおこなう
相続人だけでは話し合いがまとまらない場合には、専門家に相談すれば解決できることがあります。法律相談・裁判・交渉・契約書作成などの法律事務は弁護士がおこないます。
相続に詳しい弁護士などであれば、財産の全容の把握から不動産の分割方法のアドバイス、遺留分や相続税の計算まで、手間と時間のかかる作業につきサポートをしてくれます。
争っていた相続人も、法律の専門家からのアドバイスであれば聞く耳を持ち、冷静に話し合いを進められるようになることが期待できます。
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