【事例】遺言執行者に指名されたが、やりたくない(57歳男性 遺産4,900万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、遺言書で遺言執行者に指定されてしまったがやりたくない、57歳男性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、堀江行政書士事務所の行政書士・堀江 寛寿さんです。
この記事を書いた人
〈行政書士〉
平成11年より東京都大田区で開業しています。わかりやすく丁寧な説明がモットーです。相続業務をはじめとして任意後見契約、金銭消費貸借契約などの契約書の作成や建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可などの許可申請業務を行っております。
▶堀江行政書士事務所
遺言執行者をやりたくない
相談内容
父が亡くなり公正証書遺言が出てきました。遺言書の内容は、実家と保険金は母、残りは兄弟で平等にとのことです。内容に不満はないのですが、遺言執行者に自分が指名されていました。ですが仕事が忙しく、遺言執行者をやりたくありません。どうすれば良いですか?
母は足が悪く、長女と次男もやりたくないと言っています。
- プロフィール:57歳男性
- お住まい:北海道
- 相続人:母、長男(相談者本人)・長女・次男の4名
- 被相続人:父
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
不動産 | 自宅戸建て(土地・家屋) 土地120㎡ |
3,200万円 |
預貯金 | 1,000万円 | |
有価証券 | 200万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:父 受取人:母 |
500万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 遺言執行者が行う業務
遺言執行者とは、遺言状に記載された内容を実現するために選任される者です。通常は、被相続人が遺言執行者になってほしい人の氏名を遺言状に記載して指定します。指定された人は、被相続人が亡くなった後に遺言執行者への就任を承諾することで選任手続きが完了します。
遺言執行者には、遺言の執行にあたって、たとえ相続人からの妨害があったとしても、それを排除できる強い権限が与えられています。この権限のもと、遺言執行者は被相続人の最後の意思が記載された遺言状の内容を実現することが求められているのです。
遺言執行者が行う業務には次の9つがあります。
- 相続財産の調査
- 法定相続人の調査
- 相続財産目録の作成
- 法定相続人への遺言執行者就任承諾の通知
- 法定相続人への遺言状の通知
- 法定相続人への相続財産目録の通知
- 遺言状に記載された事項の執行手続き
- 遺言執行業務完了の通知
いずれも時間と手間がかかるため、ご相談の事例のように遺言執行者への就任を断りたいという方はおられるかもしれません。
アドバイス2 遺言執行者をやめる方法
遺言執行者をやめることはできます。しかし、やめる方法は遺言執行者に就任する前か後かによって違ってきます。遺言執行者に就任する前であれば、何らの手続きをすることもなく就任を断るだけで話は済みます。相続人の了解を得る必要もありません。
一方、遺言執行者に就任した後にやめる場合には、家庭裁判所に対して申し立てを行う必要が出てきます。その際には遺言執行者をやめるための正当な理由がなければなりません。たとえば、病気による長期の入院や、長期の海外出張といったものです。単に面倒になったから、とか遺言執行手続きが煩雑だから、といった理由では認められないとされています。
また、家庭裁判所の許可がでた後も、相続人全員への通知や辞任の顛末の報告、さらには保管している遺言状や預金通帳などの相続人への返還といった事務作業を行わなければなりません。
そのため、遺言執行者への就任は、自身の状況をよく考えて慎重に行うことが必要です。ご相談のようにお仕事が忙しく、手続きを行う時間がとれないのであれば、どなたか信頼できる方にお願いすることを検討するのがよいでしょう。
アドバイス3 遺言執行は行政書士などにお願いできる
未成年者と自己破産者以外であれば、誰でも遺言執行者になることができます。たとえ、遺言状に遺言執行者の記載があってもその成り手がいない場合には、行政書士や弁護士といった専門職にお願いすることができるのです。
専門職に遺言執行者となってもらうことで、面倒な遺言執行手続きを行う必要がなくなります。費用はかかってしまいますが、自分で行うことが難しい場合には検討する価値はあるでしょう。
なお、この場合には家庭裁判所に対して専門職を遺言執行者とするための申し立てを行う必要があります。家庭裁判所の許可が下りた後に、選任された専門職が遺言執行の手続きに取り掛かることとなるのです。
関連事例
【事例】ギャンブルや不貞行為をしてきた夫に財産を渡したくない。何か対策はありますか?(68歳女性 資産830万円)【行政書士執筆】
【事例】遺言書で指定された財産の受取人が既に死亡しています。遺産分割はどうなる?|みんなの相続事例集(54歳男性 遺産3,130万円)【行政書士執筆】
相続についてのご相談は「いい相続」へ
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携しており、相続手続きや相続税申告、生前の相続相談に対応できる行政書士や税理士などの専門家をご紹介することができます。
専門オペレーターが丁寧にお話を伺いサポートしますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
〈行政書士〉
平成11年より東京都大田区で開業しています。わかりやすく丁寧な説明がモットーです。相続業務をはじめとして任意後見契約、金銭消費貸借契約などの契約書の作成や建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可などの許可申請業務を行っております。
▶堀江行政書士事務所
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。