【事例】おひとりさまの叔父が亡くなったが、相続手続きのやり方がわからない(58歳女性)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、おひとりさまの叔父の相続手続きについて、58歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、行政書士ときた事務所の行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、CFP®、不動産コンサルティングマスター・鴇田 誠治さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、CFP®、不動産コンサルティングマスター〉
相続・相続対策の専門家として、相続手続きの総合的なご支援はもちろん、遺言書の作成などの相続対策もお客様と共に考え、アドバイスをさせていただきます。また、後見や財産管理、民事(家族)信託などもお気軽にご相談ください。
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おひとりさまの叔父が亡くなった
相談内容
先日、役所から連絡があり、どうやら叔父(母の兄)が亡くなったと聞きました。私と弟しか血縁者がいないらしく、葬儀はしましたがこれからどうすれば良いかわかりません。財産もわからず、どのような手続きが必要でしょうか。
- プロフィール:58歳女性
- お住まい:佐賀県
- 相続人:姪(相談者本人)、甥(相談者の弟)の2名
- 被相続人:叔父
相関図
アドバイス1 相続手続きの大まかな流れ
まず、相続手続きの大まかな流れについてご説明します。
相続人調査
相続手続きでは、始めに誰が相続人になるのかを特定するために「相続人調査」をおこないます。相続人調査は被相続人(亡くなった人)の生まれたときに入籍した戸籍から、亡くなるまでの連続する戸籍一式を収集しておこないます。これにより、誰が相続人になるのか(法定相続人)を特定することができます。
法定相続人を特定することで、法定相続割合や遺留分権利者を確認することができるほか、相続税申告の基礎控除額を算定することも可能になります。
相続財産調査
「相続財産調査」とは、亡くなった人の財産を全て洗い出して、財産額を確定させることです。すべての財産を確定することで、相続放棄をするかしないかや、相続税申告が必要になるか否かの判断が可能になります。したがって相続をどのようにおこなうかの方針を決めるためのとても重要な作業になります。
また、相続人が複数いる場合には、誰がどの財産を相続するか(「遺産分割」といいます)を決めなければなりませんが、そのためには、どの財産がどれだけあるかを確定させておく必要があります。もし、遺産分割が終わった後に新たな財産が見つかった場合には遺産分割をやり直さなければならなくなるなど不都合が生じますので、事前の調査はとても大事です。
相続財産の種類
相続財産の調査といっても、何が相続財産になるのかわからないと何から手を付けてよいかわかりません。そこで、まずは何が相続財産になるのかを確認してみましょう。
具体的には、現預金や不動産などプラスの価値を持つ財産のほか、借入金や未払金などマイナスの価値を持つ財産も相続財産になります。
主なプラスの財産
- 現金、預貯金
- 有価証券(株式、債券、投資信託など)
- 不動産(土地、建物)
- 動産(自動車、貴金属、骨董品など)
主なマイナスの財産
- 借入金、ローン
- 税金、医療費で未払いのもの
プラスの財産・マイナスの財産を確認して財産を相続しても借金を返済しきれない場合など、マイナスの財産のほうが多ければ相続放棄を検討することになります(相続放棄は、相続があったことを知ったときから3カ月以内に家庭裁判所でおこないます)。相続放棄をすればプラスの財産を相続しない代わりに、借金も相続しないので、借金返済の義務がなくなります。
アドバイス2 相続財産の具体的調査方法
次に、相続財産調査の具体的な方法について解説していきます。
1.預貯金の確認
預貯金の調査は、通帳やキャッシュカード、金融機関からの郵便物などが残っている場合は、銀行の窓口や電話で確認してみましょう。この場合、ご自身が相続人であることを証明する必要があります。また、銀行等に死亡の事実を伝えると銀行口座はストップ(凍結)してしまいますのでご注意ください。
2.不動産の確認
不動産を確認する場合、不動産の所在地の市町村から送付されてくる固定資産税の納税通知書を確認します。
納税通知書には、固定資産税の課税明細が付いています。明細に記載される不動産が被相続人の所有不動産ですので、地番や家屋番号を確認して、法務局で引き続き調査をします。
ただし、課税明細に記載されている不動産は、基本的には、納付すべき税額が発生している不動産のみです。不動産を所有していても、固定資産税が発生しない場合は、課税明細に記載されていないこと多いので、このような不動産を所有している可能性がある場合(敷地に接する私道の持分を持っている場合など)は、被相続人名義の「固定資産評価証明書」を取得することで、非課税のものも含めた被相続人の所有不動産を確認できます。なお、複数の市町村に不動産を所有している場合は、それぞれの市町村で取得しなければなりません。
3.有価証券の確認方法
有価証券には、被相続人が経営していた会社の株式(自社株)や、証券会社が管理する上場株式などがあります。
自社株については、その会社の直近の決算書を確認します。法人税申告書の別表2「同族会社等の判定に関する明細書」の下段の表「判定基準となる株主等の株式数等の明細」を見ると所有株数を確認することができます。
上場株式や投資信託等、証券会社に預け入れのものについては、証券会社から毎年送られてくる取引残高報告書(一定期間内におこなわれた上場株式等の売買取引の内容や、銘柄ごとの残高を定期的に報告してくれる書類)で、確認することができます。
ただし、ネット証券会社を利用していて、取引残高報告書などがメールなどで電子交付されていた場合もありますので、可能であれば生前に利用していたパソコンやスマートフォンの履歴を確認することも重要です。
4.生命保険の調査
被相続人が保険契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無を確認する方法もあります。一般社団法人生命保険協会という組織で情報を管理しており、この会社に法定相続人や遺言執行者等が照会申請をすることにより、被相続人の保険契約に関する情報を入手できます。
ただし、調査対象となる契約は、照会受付日現在有効に継続している個人保険契約で、死亡保険金支払済、解約済、失効等であるものは含まれません。また、財形保険・財形年金保険、支払が開始した年金保険、保険金等が据置きとなっている保険も対象外となります。
この照会手続きによって生命保険契約の存在が明らかになった場合には、照会者から各生命保険会社のコールセンター宛に契約内容の照会や保険金請求の手続きをおこなうこととなります。
5.負債の確認方法
被相続人の負債の存在が疑われるような場合には、負債の有無についても確認しましょう。負債の確認は、信用情報機関に開示請求をおこなう方法によって異なります。
信用情報機関とは、加盟する金融会社から登録されるローンやクレジットに関する信用情報を管理・提供すること業務としている組織です。
信用情報機関に信用情報の開示請求をおこなうと、加盟社における取引情報がわかります。個人の信用情報を取り扱う、全国銀行個人信用情報センター、株式会社シー・アイ・シー、株式会社日本信用情報機構に対して、被相続人の信用情報を請求しましょう。郵送での手続きも可能ですので、まずは各団体のウェブサイトを確認してください。
なお、個人間の貸し借りなどは、借用書や貸付・借入のメモを探すほか、毎月一定額が銀行口座に振り込まれている、または振り込んでいるなどを確認することから始めましょう。
アドバイス3 叔父の戸籍をあつめるのは大変
叔父(伯父)や叔母(伯母)の相続をすることになったとき、手続きを進めるには、ご自身と叔父の相続関係を明らかにするために戸籍謄本を集める必要があります。
叔父の相続人になったということは、被相続人に子(第一順位の相続人)が居らず、被相続人の両親や祖父母(第二順位の相続人)も既に亡くなっていることになります。
相続人がご自身であることを証明するためには、第一順位と第二順位の相続人が居ないことなどを明らかにするために、以下の戸籍を集める必要があります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍
- 被相続人の兄弟姉妹(既に死亡の時は甥・姪)の戸籍
- 相続するご自身の戸籍
なお、「出生から死亡までの戸籍」とは、出生の届出によって戸籍に記載されて、死亡の届出によって戸籍から除かれるまでの間の一連の戸籍すべてをいいます。
一般的には、出生すると父母の戸籍に入り、本籍の市町村外への移転(転籍)や、婚姻の届出によって夫婦について新たに戸籍が編成されるなどして、いくつかの戸籍が作られることになりますが、これらすべての戸籍が該当します。戸籍の取得の仕方は、最初に「死亡の記載のある戸籍」を取得し、そこから順に、古い時代の戸籍をさかのぼって取得していきます。
アドバイス4 相続手続きは専門家に依頼してもよい
相続手続きに不慣れな一般の方は、戸籍の読み方がわからなかったり、戸籍の改製があった場合の対応や、次に取得すべき戸籍をどの役所に請求すればよいのか判断が難しい場合が多いので、予想以上の時間がかかってしまいます。また、すべて揃ったと思っていざ手続きに出向いたものの、戸籍の不足を指摘されることもあります。
このような時間や手間を省いて、確実でスピーディな手続きを希望される方は、行政書士等の相続の専門家に相談してみましょう。行政書士は職務上の請求権を持っていますので、必要な戸籍をあなたに代わって全て取得してくれるだけでなく、戸籍の取得には慣れていますので、スピーディに手続きを終えることも可能です。
甥や姪が相続人になる場合、手続きに必要な戸籍の範囲が非常に広く、戸籍の量も多くなるので、すべて集めるには相当の時間と手間が必要になります。
行政書士に依頼することで費用はかかりますが、手続きの確実性や時間の短縮、ご自分の手間の軽減など、メリットとデメリットを比較して、行政書士などの専門家の利用も検討してみてください。
相続についてのご相談は「いい相続」へ
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携しており、相続手続きや相続税申告、生前の相続相談に対応できる行政書士や税理士などの専門家をご紹介することができます。
専門オペレーターが丁寧にお話を伺いサポートしますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。
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