年間110万円までなら非課税で贈与できると聞きましたが、現金はともかく不動産などは毎年それをやっていたらキリがありません。うまい方法ありませんか?
質問者:S.N
暦年課税(暦年贈与)と相続時精算課税
基本的に、贈与を受ける人1人あたり年間110万円までは贈与税の申告義務はありません。(課税されません)よって、相続税対策の王道的な方法として、相続開始までに時間がある人の場合は子供数人に毎年少しずつの贈与をしていくという方法もあります。▶【2020年版】生前贈与とは?絶対失敗しない!基本の知識をわかりやすく徹底解説
相続時精算課税
ただ、これは時間的余裕があり、資産内容が現金等であるなどの場合に限られてくるため、不動産の場合は使い勝手が良い方法とはいえません。 不動産の持分を少しずつ渡すことになると、毎回登記費用などの「移転コスト」や手間がかかりますから無駄も多くなってしまうのです。そこで、不動産などの大きな財産を生前贈与したい人に浮上してくる選択肢が「相続時精算課税」です。 相続時精算課税とは、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫に対して2500万円までの財産を生前贈与した場合に無税で、2500万円を超える場合は一律20%で贈与を課税するという制度であり、大型贈与に向いています。
相続時精算課税を使った生前贈与は財産の種類を問わずにすることができ、何回に分けて贈与してもかまいません。 ただし、この制度で気をつけなければならないのは「被相続人が死亡した後、相続税の基礎となる財産を計算する際に相続時精算課税で贈与した財産の価額を含めて計算しなくてはならない(持ち戻す)」ことです。
▶相続時精算課税制度の選択|節税効果と注意点、暦年課税制度との比較
どのような場合に効果的なのか
いったん無税で贈与したが結局相続税の際に持ち戻されてしまうのであれば意味がないようにも思えますが、具体的にどのような場合に使えばよい制度なのでしょうか。まず、「もともと、生前贈与の財産を含めても相続税の課税財産が基礎控除『3000万円+(法定相続人の数×600万円)』に満たないことが明らか」である家庭です。 そのような場合は、本来、生前贈与すれば贈与税がかかってしまうはずですが、相続時精算課税を使って無税というメリットを最大限に受けられます。
もう一つ効果的な場面としては「生前贈与の時よりも相続の時にその財産が値上がりすることが明らかである」場合です。 相続の際に持ち戻す価額は、「贈与時の価額」であるとされているため、値上がりの幅が大きければ大きいほど、差額分について節税できることになります。
利用上の注意
相続時精算課税は、期限内に税務署に「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければなりませんので、これを忘れると大変な贈与税がかかってきてしまいます。この制度の対象とする贈与は少額であってもすべて申告の対象になります。 また、いったん相続時精算課税を選択するとその人が死亡するまでずっと適用され暦年課税に戻すことはできませんので、選択する時点で慎重に検討することが肝心です。▶【2020年版】土地・不動産の生前贈与と税金| 最新の節税・税金対策をわかりやすく
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