賃貸アパートの相続手続きの流れ|遺産分割や相続登記、相続税の評価方法まで全解説
賃貸アパートを相続するうえで以下のような疑問が生じる方は多いでしょう。
「賃貸アパートの相続手続きはどんなことをするの?」
「賃貸アパートはどのように遺産分割すればよいの?」
「賃貸アパートを相続するときにどんなことに注意すればいい?」
この記事ではこのような疑問も踏まえ、相続手続きの流れに沿って説明をしていきます。
目次
賃貸アパートを相続したときの流れ
賃貸アパートを相続したときには、以下の流れで手続きを進めていきます。
以下から順に解説していきます。
賃貸アパートの管理会社や借主への連絡
金融機関が相続人からの連絡等によって口座名義人の死亡を把握すると口座が凍結されます。
アパートの借主が貸主の口座に入金することで家賃を支払っていた場合、口座が凍結されると家賃を入金することでできなくなってしまいます。
アパートの所有者が亡くなったら、速やかに管理会社や管理会社に連絡しましょう。
相続人が決まっていない間の家賃は誰のもの?
相続開始時から遺産分割協議終了までの間の家賃
賃貸アパートの相続人が決まっていない間の家賃は、誰が取得するのでしょうか。
平成17年の最高裁の判例では、相続開始から遺産分割協議終了までの間に生じた家賃は遺産には含まれず、各相続人が法定相続分に従って取得すること、としています。
そのため、この間に法定相続分に応じて各相続人が取得し、年間の収入が20万円以上であればそれぞれが「不動産所得」の確定申告をしなければなりません。
遺産分割終了後の家賃
遺産分割協議が成立し、賃貸アパートを相続する人が確定した時点からは、賃貸アパートの相続人がその家賃を受け取ることになります。
相続財産調査
相続する遺産はかならずしも預貯金などのプラスの財産だけではありません。借金やローンなどもマイナスの財産として相続財産に含まれますので、通帳やクレジットカードの取引明細など一つ一つを調べていきます。
相続財産調査を終わらせないと、後の相続手続きが進まないので相続においては最も大事な作業の一つです。
相続財産については「相続財産になるもの・ならないものを一覧でわかりやすく解説」で詳しく説明しています。
賃貸アパートの残債務を確認方法
賃貸アパートを相続する場合は、建てる際に融資を受けた可能性があるのでローンなどの残債務の有無を確認しましょう。
残債務は次のもので確認できます。
- 預金通帳:金融機関の口座からの約定弁済(ローンの返済)の引き落としの有無を確認できる。
- 金銭消費貸借契約書:ローン契約を確認できる。
- 登記簿謄本:賃貸アパートに抵当権が設定されているか確認できる。
これらを確認して、相続する総資産よりもローン残高の方が大きい場合は、相続放棄も検討しましょう。
相続放棄の方法の詳細は「相続放棄した方がいいケースしない方がいいケース、手続きの期間や流れをまとめて解説」を参照してください。
準確定申告
相続発生までに被相続人が得ていた所得について相続人が確定申告することを準確定申告といいます。
納税者が亡くなった場合は、自分で確定申告を行うことができないので、相続人が代わりに確定申告をおこなうのです。
準確定申告の期限は、亡くなってから4か月以内です。
賃貸アパートの遺産分割方法
相続人が数人いる場合は、通常、遺産分割協議によって誰がどの財産を取得するか決めることになります。
現金と違い不動産は分けにくい遺産です。
不動産である賃貸アパートの遺産分割は以下の4つの方法が考えられます。
現物分割
財産ごとに相続する人を決めていく分割方法です。1人が賃貸アパートを、もう1人が預貯金をといった具合です。
分かりやすい方法ですが、それぞれの評価額にばらつきがあるため不公平な相続になりやすいデメリットがあります。
代償分割
相続人の1人が賃貸アパートを相続し、他の相続人に賃貸アパートに見合う対価を金銭で支払う方法です。金額上では公平性が保たれます。ただし代償を支払う資金力が必要になります。
換価分割
賃貸アパートを売却し、その代金を分割する方法です。代償分割で見合う現金が支払えない場合などにおこなわれます。相続人全員が現金で受け取るので、より公平性が増しますが、不動産の売却には時間と手間がかかります。
共有分割
賃貸アパートを物理的に分割せずに、賃貸アパート全体を複数の相続人が遺産分割協議や法定相続分に応じて共有する方法です。共有分割は後々トラブルになりやすい相続方法です。
共有名義による相続はできるだけ避ける
共有名義にした後、相続した賃貸アパートの修繕や建て替え、抵当権の設定などをおこなう際には、都度共有者全員の合意が必要になります。意見がまとまらない場合、訴訟まで発展するケースもあります。
また、共有者の死亡とともに、その相続人が新たな共有者となるような相続が繰り返されていくと、権利関係はいっそう複雑になってしまいます。このようなリスクを回避したい場合は、共有名義による不動産相続は避けた方がいいでしょう。
不動産の遺産分割方法は、「【不動産の相続手続き】名義変更の相続登記や費用、相続税をわかりやすく解説」で詳しく説明しています。
賃貸アパートの相続登記
賃貸アパートなどの不動産を相続するには、被相続人から相続人に名義変更をして所有権を移転する必要があり、これを相続登記といいます。不動産の所在地を管轄する法務局に必要書類と登記申請書を提出しておこないます。
相続登記手続きの必要書類
法務局に提出する必要書類は主に以下のものを準備します。登記申請書は法務局で入手できますが、法務局のホームページからダウンロードすることもできます。
令和6年4月より相続登記は義務化されるので3年以内におこなわなくてはなりません。
相続登記の方法は「相続登記の手続きと必要書類、放置した場合のリスクまで徹底解説」で詳しく説明しています。
相続登記は司法書士に依頼できますし、もし安価に進めたい場合は、書類の収集だけを行政書士に依頼する、という方法もあります。
相続が発生するとすることが多く、期限のある手続きもありますから、専門家に依頼することも検討してみましょう。
相続税申告の際の賃貸アパートの評価
相続財産の分割方法が決まったら、相続税がかかるかどうかを計算します。相続税が課される場合は、死後10ヵ月以内に相続税の申告と納税をする必要があります。
賃貸アパート(貸家)の相続税評価額は、「自用家屋とした場合の相続税評価額−自用家屋とした場合の相続税評価額×借家権割合×賃貸割合」で計算することができます。
借家権割合は、現在のところ、全国一律30%です。賃貸割合とは、実際に賃貸している割合のことです。例えば、10室の中の9室が契約中で、1室が空室の場合は、賃貸割合は90%です(全室の床面積が同じ場合)
アパート等の貸家の相続税評価額は自分で使用する家屋(自用家屋)よりも最大30%低くなります。
「相続税対策にアパートを建てる」というのを聞いたことがある方も多いでしょう。
つまり、現金で相続するよりも、相続税の計算上の評価額(相続税評価額)が下がるので、相続税が安くなるのです。
相続税申告は税理士に依頼することができます。アパートの評価が難しい場合は、税理士に相談しましょう。相続税の申告と納税は10カ月以内と期限がありますから、早めに相談することをおすすめします。
賃貸アパート経営の注意点
賃貸アパートを相続したら、維持・管理をして、収益を出していく必要があります。空室リスクや家賃の下落、家賃の滞納、修繕、入居者間トラブルなど、さまざまな課題に対応しなくてはなりません。
管理会社と連携して継続的にアパートを経営していく覚悟が求められることを認識しておきましょう。
各種契約の確認・変更
相続した賃貸アパートにかけられている火災保険や地震保険などは、ほとんどの場合、故人名義で契約されています。契約内容を確認して契約し直す必要があります。
借り主への通知
大家が変わったことを借り主に知らせる法的義務はありませんが、今後の関係性を良好に保つために簡単な通知をしておくことをおすすめします。
なお、賃貸借契約書は作成しなおす必要はありませんが、権利関係を明確にしてトラブルを防ぎたい場合のみ、時期を見て契約しなおすといいでしょう。
管理が難しい場合は売却も視野に入れる
アパート経営にはリスクがつきものです。また、維持・管理する手間もかかります。修繕費等の費用がかさみ採算があわないケースも珍しくありません。遠隔地であったり、アパート経営が難しいと思われる場合には、売却という選択肢も視野に入れましょう。
まとめ
相続手続きは煩雑で専門的なので、全体の流れを把握して進めることが大事です。
特に相続登記は集める書類が多く準備に時間がかかるうえ、法務局に申請してからも完了するまでには最低でも1週間はかかります。手続きに時間がかかることは心しておきましょう。
いい相続では、相続に精通した専門家をご紹介しています。相談も初回面談も無料ですのでお気軽にお問い合わせください。
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▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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