大切な家族を突然亡くしたとき、頭が真っ白になってしまうのは当然のことです。それでも、まず手元に用意しなければならないのが「死亡診断書」または「死体検案書」です。名前は似ていますが、どちらが発行されるかは、亡くなった状況によって変わります。
この記事では、「今まさにその状況にある人が、どちらの書類を、誰から、どうやって取得すればよいか」を、ケースごとに整理してご紹介します。取得した死亡診断書(死体検案書)は、「死亡届」に添えて役所に提出することになりますが、死亡届そのものの期限や提出先といった基本ルールについても簡単に説明します。
是非参考にしてください。
この記事はこんな方におすすめ:死亡届を出す際、死亡診断書・死体検案書のどちらが必要か知りたい方
- 死亡診断書か死体検案書か、必要な書類は「亡くなった状況」で決まる
- 自宅・孤独死・事故などでは、警察の検視を経て死体検案書になる
- どちらも、その後は死亡届を7日以内に提出するのが基本
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死亡届の提出から相続手続きが始まる
親族が亡くなった際にまず提出しなければならない死亡届とは、そこに記載された者が死亡したことを証明する書類です。死亡届を作成し提出することで自治体や銀行などとの相続手続きが始まります。
死亡届を提出しないと火葬などをはじめ、その後の相続手続きは行うことができません。死亡しているにもかかわらず火葬や葬儀、埋葬ができないだけではなく、年金受給や公共料金・税金の支払いなどの場面で混乱を生じてしまいます。
死亡届の基本
- 提出期限:国内で死亡した場合は死亡を知った日から7日以内、国外の場合は3ヵ月以内
- 提出先:死亡地・死亡者の本籍地・届出人の住所地のいずれかの市区町村役場
- 作成できる人:原則として同居の親族など戸籍法で定められた人に限られ、葬儀社などの代理人は「提出」はできても「作成」はできません
詳しく知りたい方は、「死亡届の書き方と必要書類、死亡に伴う各種手続をわかりやすく説明」を参照してください。
死亡診断書と死亡検案書は何が違う?

引用:法務省「死亡届の見本」
ここから先のケースでは、「警察」「検視」「死体検案書」という言葉が繰り返し出てきます。混乱しないよう、先に整理しておきましょう。
医師が診療していた病気の延長で死亡を確認できる場合に作成するのが「死亡診断書」です。
一方、病死や老衰ではない、あるいは死因がその場で判断できない死亡は「異状死」と呼ばれ、医師だけの判断では死亡を確認できません。この場合は警察に連絡し、警察医などによる検視・検案を経て「死体検案書」が作成されます。ニュースなどで耳にする「変死」という言葉も、この異状死とほぼ同じ意味で使われています。
死亡診断書と死体検案書は、実際には同じ用紙の中で使い分けられており、違うのは「誰が」「どのような調査を経て」作成するかという点だけです。
このあと紹介する自宅・事故・孤独死・災害などのケースは、いずれもこの「異状死」に当てはまるかどうかで対応が分かれます。
死亡診断書と死亡検案書に関する事例
死因やその状況には様々な事例が存在するので、ここでは、それに当てはまる死亡届や死亡診断書(検案書)などの提出方法について紹介していきます。
病院で亡くなった場合
老衰や持病の悪化など、病院で医師の管理下で亡くなった場合は、比較的手続きがスムーズです。
死亡を確認した医師がその場で死亡診断書を作成してくれるため、遺族側で準備する必要はありません。死亡届と死亡診断書が同じ用紙になっているので、死亡届に遺族側の記入欄(氏名・本籍・届出人情報など)を埋めて提出するだけです。
自宅で亡くなった場合
自宅療養中だった、あるいは自宅で突然倒れて亡くなっていた、というケースでは対応が分かれます。
かかりつけ医がいる場合
死亡者にかかりつけ医がいた場合には、まずかかりつけ医に連絡をしましょう。亡くなる直前まで診療を受けていた病気が死因と判断できれば、自宅に来てもらったうえで死亡診断書を作成してもらうことができます。
かかりつけ医がいない、または死因に心当たりがない場合
かかりつけ医がいない、または死因に心当たりがない場合には医師は死因を判断できないため、死亡診断書を発行できません。警察に連絡し、警察医などによる検視・検案を経て「死体検案書」を発行してもらう流れになります。
また、警察がはじめに自宅に来る際に同居者に対して事情聴取が行われます。これは事件性があるかどうかを判断するためのものであるので、素直に答えていただけば大丈夫です。
このとき特に注意したいこと
- すでに明らかに亡くなっている状態であれば、慌てて救急車を呼ばず、警察を呼びましょう。救急車は遺体を搬送できないので、結局は警察を呼ぶことになります。
- 遺体にはできるだけ触れないこと。警察は事件性の有無を慎重に確認するため、遺体に触れた形跡があると事情聴取が長引く原因になります。
同居していた家族への事情聴取が行われることもありますが、これは通常の確認作業ですので、落ち着いて事実をありのまま伝えれば問題ありません。
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事故で亡くなった場合
事故が原因で亡くなった場合は、自然死とは異なる扱いになります。
まず警察への連絡が必須です。現場はそのままの状態で保存し、警察の到着を待ちます。その後、事件性の有無を調べるための検視・検案(場合によっては行政解剖)が行われ、終了後に遺体が遺族へ引き渡されるとともに死体検案書が発行されます。
この死体検案書を死亡届と合わせて役所に提出することになります。解剖が必要なケースでは通常より数日ほど時間がかかることもありますが、多くの場合は死後7日以内という提出期限には間に合います。
孤独死だった場合
一人暮らしの方が誰にも気づかれないまま亡くなり、しばらく経ってから発見される、いわゆる「孤独死」のケースです。
発見までに時間が経っている場合、かかりつけ医がいたとしても死因をその場で断定することは難しく、通常は警察による検視・検案が行われ、死体検案書が作成されます。発見が遅れているため、死亡診断書・死体検案書に記載される死亡日時は、実際に息を引き取った瞬間ではなく、医学的な所見から推定された日時になることが多い点は知っておくとよいでしょう。この推定日時は、その後の相続税申告や保険金請求などで基準となる日付にも関わってきます。
届出人は、同居していた親族がいなければ、駆けつけた別居の親族や、物件の大家・管理人がなることもあります。大家や管理人は戸籍法上も届出をすることが認められている立場です。
なお、発見までの期間によっては特殊清掃など住居の原状回復が別途必要になりますが、これは死亡届の手続きそのものとは別の話ですので、まずは死亡届・死体検案書の対応を優先しましょう。
施設(老人ホーム・介護施設)で亡くなった場合
入所していた老人ホームや介護施設で亡くなった場合は、多くの施設で嘱託医(施設と契約している医師)が定期的に診察を行っているため、その医師が死亡を確認し、死亡診断書を作成してくれるケースが一般的です。
一方で、施設に嘱託医がいない場合や、直前の診察から時間が経ちすぎている場合には、自宅で亡くなった場合と同様に警察への連絡・検視が必要になることもあります。
施設側が死亡診断書の受け取りや葬儀社の手配について案内してくれることが多いですが、死亡届そのものの作成は、親族などの届出人が行う必要があり、施設のスタッフが代わりに作成することはできません。施設は提出の代理を引き受けてくれる場合はありますが、この点は事前に施設側と役割を確認しておくとスムーズです。
なお、施設で亡くなった場合は、死亡届の手続きと並行して、居室の明け渡しや入居契約の解除といった施設固有の手続きも発生します。
胎児が亡くなってしまった場合
死亡届が必要になるのは、生まれてきた人だけではありません。妊娠4ヵ月(12週)以降に胎児が死亡した場合も、死亡届に相当する届出が必要です。
この場合、死亡を確認した医師が助産師などに依頼し、「死産証明書」または「死胎検案書」を作成してもらいます。届出人となるのは父母で、提出期限は死産から7日以内です。
なお、出生後まもなく赤ちゃんが亡くなってしまった場合は、いったん出生届を提出したうえで、通常の死亡届と死亡診断書を提出することになります。この場合の届出人は、同居の親族など通常のケースと同じ人が担います。
成年被後見人(後見開始の審判を受けていた人)が亡くなった場合
生前、認知症や知的障害、精神障害などの理由で家庭裁判所によって後見・保佐・補助の審判を受けていた方が亡くなった場合、後見人・保佐人・補助人・任意後見人なども死亡届の届出人になることができます。
ただしこの場合は、自分がその立場にあることを証明する書類(登記事項証明書や、家庭裁判所の審判書謄本とその確定証明書など)を死亡届とあわせて提出する必要があります。なお、後見人などがいる場合でも、同居の親族が届出人になることは変わらず可能です。
海外で亡くなった場合
海外で亡くなった場合は、死亡届の提出期限が「死亡を知った日から3ヵ月以内」に延びます。提出先は、滞在していた国の日本大使館・総領事館、または日本国内にある死亡者の本籍地の市区町村役場のいずれかです。
現地の医療機関などで発行された死亡を証明する書類(現地語のものは日本語訳が必要になる場合があります)を添えて手続きを行います。手続きの詳細は、現地の在外公館に事前に確認してください。
災害など、一度に多くの方が亡くなった場合
地震や津波、水害、大規模な事故など、一度に多数の方が亡くなる災害時は、通常の手続きとは異なる対応になることがあります。
まず、身元の確認そのものに時間がかかることが少なくありません。多数のご遺体を扱う関係で、警察や関係機関による検視・身元確認(歯型やDNA型鑑定などを用いることもあります)に日数を要し、死体検案書の発行が通常より遅れる場合があります。
このように死亡届の通常の提出期限内に手続きが間に合わないことが想定される災害では、国や自治体が特例的な取り扱いを案内することがあります。過去の大規模災害でも、届出人の負担を軽減するための簡易な様式が用意されたり、被害状況を把握している自治体の判断で死亡の確認が進められたりした例があります。該当する災害が起きた場合は、まず自治体や避難所に設置される相談窓口で、その時点での取り扱いを確認するのが確実です。
なお、遺体が発見できないまま死亡が確実とみられる場合の扱いについては、後述の「認定死亡」の制度が関わってきます。
遺体そのものが確認ができない場合
水難事故や火災など、死亡したことはほぼ確実であっても遺体そのものが見つからないケースもあります。
水難や火災、その他の災害などによって死亡したことが確実視される場合に、死体の確認ができなくてもその調査をした行政機関によって、死亡地の市町村長に報告をすることで戸籍に死亡の記載をすることができます。これを認定死亡と呼びます。
このような場合、調査にあたった行政機関が死亡地の市区町村長に報告することで、戸籍に死亡の記載を行うことができる制度が認定死亡と呼ばれています。また、やむを得ない事情で死亡診断書や死体検案書を用意できない場合には、死亡の事実を証明できるほかの書面を添え、その理由を届出書に記載して提出する方法も認められています。
ただし、これらはあくまで例外的な取り扱いです。通常は医師による死亡診断書、または警察による死体検案書を添えて死亡届を提出することになります。
長期間行方不明で「失踪宣告」を受けた場合
長期間にわたって生死が分からない方については、亡くなったことを直接確認する死亡届とは別に、家庭裁判所の手続きを経て法律上死亡したものとみなす「失踪宣告」という制度があります(民法30条・31条)。
失踪宣告には、生死不明の状態が7年間続いた場合の「普通失踪」と、地震や事故など死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去ってから1年間生死が分からない場合の「危難失踪(特別失踪)」の2種類があります。家庭裁判所にこの審判を申し立て、審判が確定すると、法律上その方は死亡したものとみなされます。
この場合、通常の死亡届とは異なり、審判を申し立てた人が届出人となり、審判が確定した日から10日以内に、審判書の謄本を添付して市区町村役場に届け出ることが戸籍法で定められています。死亡したとみなされる時点も、普通失踪では生死不明から7年が経過した時点、危難失踪では危難が去った時点となり、実際に届け出る日とは異なります。
どのケースでも共通して気をつけたいこと
- 死亡診断書・死体検案書は提出前に必ずコピーを取っておく(遺族年金や保険金請求などで何度も必要になります)
- 手続きで判断に迷う点があれば、提出先の役所の窓口や、必要に応じて専門家(行政書士など)に相談する
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まとめ
ここまで死亡届と死亡診断書(死体検案書)についての基本知識や様々な事例について紹介してきました。
死亡届と死亡診断書(死体検案書)の作成及び提出は相続手続きの出発点と言えます。一般的なケースでは「死後7日以内(国外は3ヵ月以内)に、決められた場所へ、決められた人が作成した届出書を出す」ことが基本です。亡くなったばかりで心の整理がつかない状況であっても期限内に行うことが要求されます。
まずは自分たちのケースがどれに当てはまるのかを確認し、落ち着いて一つひとつ手続きを進めていきましょう。相続手続きの一部を専門家にサポートしてもらうのも検討してみてください。
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