相続で揉めるのはお金持ちだけ?遺産分割争いの特徴を裁判所のデータで見てみよう
相続争いについてどのような印象をお持ちでしょうか。
「相続で揉めるのは一部のお金持ちの話でしょ?」「相続人が多いから問題がおきるんじゃない?」「何か特別な家族の話じゃないの?」
このようなイメージが多いのはドラマなどの影響からでしょうか、なんとなく自分とは縁遠い、他人事のように感じている方が多いでしょう。
はたして、本当に相続のトラブルは一般的な家庭には関係ないのでしょうか?
この記事では、相続争いについて、家庭裁判所のデータを使ってわかりやすくご紹介します。
相続準備に取り掛かりたいけれど話を切り出しづらく困っていらっしゃる方は、話のきっかけとして是非この記事をご活用ください。
この記事を書いた人
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
相続で揉めるのは一部のお金持ちだけか?
「相続争い?うちには遺産なんて呼べるものないから大丈夫」
「うちの実家はお金なんてないし、相続するのは家だけ、問題なんて起きないよ」
遺産相続の揉め事はお金持ちだけで起こることで自分には関係ないと思っている方も多いでしょう。
ここで、以下の円グラフをご覧ください。
令和4年司法統計年報 第52表 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(「分割をしない」を除く)―遺産の内容別遺産の価額別―全家庭裁判所を加工して株式会社鎌倉新書作成
これは全国の裁判所が取り扱った事件をまとめた「令和4年司法統計年報」からデータを抜粋してグラフにしたものです。
遺産分割のトラブルの30%が遺産の価額が1,000万円以下、次いで5,000万円以下が43%です。1億円未満の遺産でのトラブルが全体の7割以上を占めていることがわかります。
家庭裁判所まで持ち込まれてしまう遺産分割の争いは、お金持ちとは限らず、金額の大小はあまり関係がないようです。
また、遺産が実家だけという方も、例えば、実家の土地が50㎡(約15坪)で相続税路線価が20万円であれば1,000万円と大きな評価額は大きな金額になります。遺産が少ないと思っていても、合算したらまとまったお金になることもあるようです。
どんな遺産があると揉めるのか?
では、揉めた人たちの遺産には何か特徴があるでしょうか。
以下のグラフでは、令和4年に全国の家庭裁判所で容認・調停成立した分割トラブルを、遺産額別に遺産の内容を「現金等の動産、不動産のみ、現金等の動産と不動産」の3つに分けてあらわしたものです。
令和4年司法統計年報 第52表 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(「分割をしない」を除く)―遺産の内容別遺産の価額別―全家庭裁判所を加工して株式会社鎌倉新書作成
遺産額が1000万円以下の場合は、現金等の動産、不動産のみ、現金等の動産と不動産の3種類ともトラブルになった件数はそんなには差がありません。しかし、遺産額が大きくなるにつれ、遺産の内容に不動産が含まれる割合が多くなる特徴があるようです。
実は、分けにくい遺産として代表的なものは不動産です。
不動産を売却して現金化してしまえば分けやすくなりますが、実際には買い手を探すのは簡単ではありませんし、売却したあとも手元に入金があるまでは時間がかかります。
節税対策で不動産を購入した場合には相続で揉めないための対策も検討しましょう。
不動産の相続に詳しく知りたい方は「不動産相続に必要な知識がわかりやすい不動産相続完璧ガイド」を参照してください。
相続人が多いと揉めやすいのか?
では、相続人が多いと相続は争いが起きやすくなるのでしょうか。
現代の一般的な家庭の家族構成といえば、父、母、子ども2人というイメージです。
近年の少子化で、父、母、子ども1人と考える方もいるかもしれません。いずれにしても多くはありませんね。
このような家庭で相続が発生したとき、相続人はだいたい2~3人程度と考えられます。
では、実際に、相続の揉めごとは何人くらいの相続人のあいだで起きているのでしょうか。
以下の円グラフをご覧ください。
令和4年司法統計年報 第2表 遺産分割事件数―終局区分別当事者の数別―全家庭裁判所 を加工して株式会社鎌倉新書作成
令和4年に取り扱った遺産分割事件の当時者(原則法定相続人)12,981人のうち、当時者数2人が29%、3人が27%です。当時者数2~3人で全体の半分を占めています。
この結果から、相続人の人数の大小は、相続争いについてはあまり関係がないことがわかります。
「親が亡くなっても、相続人になるのは子ども達2人だけだから大丈夫だろう。」
「父が亡くなっても、母と私と妹の3人だけが相続人。争いなんて起きるわけがない。」
相続人の人数が少ないから話がこじれることはないだろうと考えているなら要注意。やはり、相続準備はしておいた方がよさそうです。
どんな準備をすればよいか知りたい方は、「【相続手続きに関する調査結果】遺産相続は、「専門家への相談」と「生前の準備」がカギ!経験者に聞いた、大変だったこと・やっておけばよかったこと」を参照してください。
遺産争いは増えている!
残念ながら、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割に関する争いは年々増えています。
以下の表を見ると令和2年に一度少し減ったものの翌年からはまた増加傾向にあります。
令和4年司法統計年報 第2表 家事審判・調停事件の事件別新受件数-全家庭裁判所を加工して株式会社鎌倉新書作成
この表は家庭裁判所で受付された件数だけですから、トラブルが起きたものの家庭内で解決した数は実際にはもっと多いことでしょう。
超高齢化社会の現代、今後、遺産相続の話は増えていくでしょう。それに伴い、遺産分割で争う家庭も増えてしまうことが懸念されます。
相続対策については「少子高齢化で起こりやすい相続の問題点と事前の対策」で解説しています。
まとめ
以上、家庭裁判所のデータを使って、相続争いについて解説しました。
家庭裁判所に持ち込んだからといって、自分の主張通りの遺産分割になるとは限りません。相続人同士はこれからも縁があるでしょうから、争うことで修復できないような関係になるのは避けたいものです。
「自分たちは大丈夫」と過信しすぎることなく、事前にできる相続対策はしておきましょう。
いい相続では相続の専門家との無料相談をご案内しています。相続手続きでお困りの方はお気軽にご相談ください。
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