遺言書の検認とは?遺言書を見つけたときに知っておきたい検認の全知識
自筆証書遺言もしくは秘密証書遺言が見つかったら、開封する前に家庭裁判所での検認が必要です。
この記事では、遺言書の手続きについてわかりやすく説明します。
目次
遺言書の検認とは?
遺言書の検認とは、相続人に対して、遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などを確認し、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
ただし、遺言が有効か無効かを判断する手続きではありません。公正証書遺言を除く、遺言書の保管者(もしくは遺言書を発見した相続人)は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。
公正証書遺言の場合は、検認は不要です。また、法務局に保管された自筆証書遺言も検認は不要です。
遺言書の検認をしないとどうなる?
遺言書の検認をしないと、名義変更等の遺言執行を進めることができません。
これは、遺言執行にあたっては、遺言書の検認後に裁判所から発行される遺言書検認済証明書や遺言書検認調書謄本を提出しなければ進められない手続きが多いからです。
なお、検認を経ないで遺言執行手続きを行うと5万円以下の過料が科される可能性があります。
遺言書の検認手続きにかかる期間
遺言書の検認は、申立てを行ってから裁判所で検認期日(検認を行う日であり、原則として1回の期日で手続きが終了します)が開かれるまで、1か月〜2か月程度かかります。
なお、後述するとおり、遺言書の検認を申し立てるためには、事前に戸籍謄本等の必要書類を収集する必要があります。相続人が誰であるかによって収集が必要となる戸籍謄本の種類が変わってきますが、多くの戸籍謄本が必要となる場合などには、その収集だけで1か月以上の期間がかかることもあります。
遺言書の検認の期限
前述の通り、遺言書の保管者や遺言書を発見した人は、遺言者の死亡を知った後(保管者がいない場合には遺言書を発見した後)、「遅滞なく」、その検認を請求しなければなりません。
「遅滞なく」ということしか定められておらず、具体的に何日以内といった明確な期限は定められていません。
しかし、前述の通り、検認が済まなければ相続手続きをすることができず、手続きによっては期限が設けられているものもあります。
例えば、相続放棄の判断は、原則として、相続開始を知った日から3か月以内に行わなければなりません。
また、相続税がかかる場合はその申告と納付を、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりませんが、相続税の申告・納付の前に、遺産分割協議を終えておくことが望ましいです。
前述の通り、検認手続きには1か月〜2か月程度かかり、また、戸籍謄本の収集にも時間がかかる場合があるので、遺言書を発見し次第、速やかに検認の申立てを行った方がよいでしょう。
遺言書の検認の申立手続き
遺言書の検認の申立手続きについて説明します。
申立てを行う人
遺言書の検認の申立てを行うのは、遺言者から遺言書を託されて保管している人がいる場合は、その保管者です。
遺言書の保管者がいない場合は、遺言者自身が保管していた遺言書を発見した相続人がいるはずですので、その発見した相続人が申立てを行います。
申立先
遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申立てます。
管轄裁判所は、裁判所ウェブサイトの「裁判所の管轄区域」のページから調べることができます。
費用
費用は、遺言書1通につき800円です。収入印紙を貼付して支払います。また、裁判所から申立人やその他の相続人に連絡するための郵便切手が必要です。
必要書類
申立書
遺言書の検認の申立書には、「家事審判申立書」という書式を利用します。
家事審判申立書に当事者目録という書類を添付して、提出します。
いずれの書類も、全国の家庭裁判所でもらえるほか、裁判所ホームページでもダウンロードすることができます。
戸籍謄本
必要な戸籍謄本は、ケースによって異なります。
まず、どのようなケースでも必要となる戸籍謄本は次の3つです。
- 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本(3か月以内のもの)
- 遺言者の子(および、その代襲者)で死亡している人がいる場合,その子(および、その代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
そして、相続人に遺言者の直系尊属(親や祖父母等)が含まれる場合には、次の戸籍謄本が必要です。
- 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母と祖父))で死亡している人がいる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
また、相続人が不存在の場合、遺言者の配偶者のみの場合、または、相続人に遺言者の兄弟姉妹やその代襲者である甥や姪が含まれる場合には、次の戸籍謄本が必要です。
- 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 遺言者の兄弟姉妹に死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 代襲者としての甥や姪に死亡している人がいる場合,その甥または姪の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
書類が重複する場合は1通のみの提出で構いません。
また、提出した戸籍謄本原本の還付を求める場合は、戸籍謄本のコピーを一緒に提出して、原本の還付を求める旨を裁判所に伝えます。
なお、登記所に対する原本還付申請は割印を押したり、多少複雑な手続きが必要なのですが、裁判所に対する原本還付申請においては、そのような手続きは不要です。
その他の必要書類
申立人が相続人や受遺者でない場合は、免許証やパスポートなどの身分証明書が必要となる場合があります。
検認期日通知書
検認の申立てを行ってからおよそ数週間から1か月程度が経った頃に、裁判所から申立人に対して検認期日の日程調整のための電話があります。
裁判所との日程調整(裁判所から連絡があった日から1か月後くらいを目安に日程調整されるのが一般的です)が済んだら、申立人と相続人に対して、裁判所から検認期日通知書と出欠回答書が送付されます。
検認期日
検認期日となったら申立人は必ず出席しなければなりません。相続人の出席は任意です。出席しなくても不利益はありません。
検認の結果については、後日、検認調書謄本が送られてくるので、それで知ることができます。検認当日の持ち物は以下の通りです。
- 開封前の遺言書(原本)
- 裁判所から送られてきた「検認期日通知書」など一式
- 身分証明書
- 印鑑(認印)
- 収入印紙150円分(「検認済証明書」を発行するための手数料)
所要時間は、通常10分〜15分ほどです。
裁判官が遺言書を開封し、筆跡や印の確認を行います。途中、裁判官から、筆跡が遺言者のものかどうかや、印が実印かどうか、保管場所や保管方法等について質問を受けますが、わからない場合はそう答えて構いません。
検認手続きを代理人に依頼するもできる
検認手続きの書類収集を代理人に依頼することもできます。相続人が多いと戸籍を集めるだけで大変ですし、申立書の記入でわからないこともあるでしょう。
行政書士や司法書士が検認手続きの代理人サービスを提供しています。
遺言書の検認後の流れ
検認が終わると、その日のうちに、裁判所に遺言書検認済証明書の交付を請求することができます。検認済証明書は相続手続きで必要になるので大切に保管しておきましょう。
検認期日に出席しなかった相続人や受遺者には、検認済通知書が送付されます。
期日に出席しなかった相続人や受遺者も、裁判所に対して検認済証明書の交付を申請することができます。また、検認が終わると、裁判所は検認調書を作成します。
遺言執行の際に、検認調書謄本が必要になった場合は、裁判所に対して、検認調書謄本の交付を申請してください。
なお、検認済証明書は検認期日に即日発行ができますが、検認調書謄本は交付までに数日かかります。
検認を受けた遺言書は有効?
検認が済んだからといって、遺言書が無効になる可能性はあります。検認は遺言書の有効か無効かを判断する手続きではないからです。遺言が無効であると考えている相続人は、「遺言無効確認調停」や「遺言無効確認訴訟」を起こさなければなりません。
遺言の無効が認められるケースには、遺言書が偽造された場合や、遺言書を遺言者が自署していない場合、遺言者が意思無能力だった場合(認知症の場合等)等があります。
この記事のポイントとまとめ
以上、遺言書の検認について解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 自筆証書遺言と秘密証書遺言は遺言書の開封前に家庭裁判所での検認が必要
- 検認の期限はないがその後の相続手続きで期限がある場合もあり、速やかにおこなう
- 検認後は遺言書の内容に沿って相続手続きを進める
検認を終えた後も、銀行預金の解約や、場合によっては相続税申告などの相続手続きが必要になるでしょう。手続きに不慣れな人は行政書士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
いい相続ではお近くの専門家との無料相談をご案内することが可能ですので、相続手続きでお困りの方はお気軽にご相談ください。
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