【事例】夫が亡くなったので義実家と縁を切るべく姻族関係終了届を提出しようと考えています。娘は祖父母の遺産を相続できますか?(58歳女性)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、姻族関係終了届を提出した場合の相続について、58歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、玉野事務所の行政書士・玉野由美さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、宅地建物取引士、相続診断士〉
山口県周南市、下松市、光市、防府市の4市で、相続(終活)を専門として日々活動しております。「笑顔相続」の案内人として一つ一つの案件に丁寧に対応させて頂いております。
▶玉野行政書士事務所
夫が亡くなったので、同居する義両親と縁を切りたい
相談内容
半年ほど前に夫が急が病気で亡くなり、今は義両親と娘の4人で暮らしています。これまでは我慢してきましたが、今後義両親の介護をするのも憂鬱で、姻族関係終了届を提出し家を出て縁を切りたいと思っています。ひとつ気がかりなのは、義両親が亡くなったときに娘に遺産が入るかどうかです。夫の弟に遺産を独占されないでしょうか。
- プロフィール:58歳女性
- お住まい:福岡県
- 相続人:義両親、長女の3名(夫には弟が1人)
- 被相続人:夫
相関図
アドバイス1 姻族関係終了届とは
まず、配偶者が死亡した場合、その配偶者との婚姻関係は終了します。ただし、死亡した配偶者の両親やその兄弟姉妹との法律的関係は終了しません。しかし、あえて、その法律的関係を終了させる手続きが「姻族関係終了届」を提出する事です。一般に、「死後離婚」と呼ばれています。
今回の相談者様のように、ご主人を突然亡くされた場合、今まで見えなかった問題が急に現実的に感じて、心理的に不安を感じることは当然だと思います。だからこそ、今一度立ち止まって、この手続きをすることが相談者様にとって良い選択肢になるのか一緒に考えてみましょう。
この届出の提出方法は、以下の通りです。
- 提出者 ・・・本人(生存配偶者)のみの自由意思(姻族の同意も家庭裁判所の許可も不要)
- 提出場所・・・本人(生存配偶者)の本籍地若しくは住居地
- 提出期限・・・配偶者の死亡後ならいつでも提出可能
- 必要書類・・・姻族関係終了届、戸籍謄本、認印、本人確認書類
*姻族とは、婚姻によってできた親族です。
アドバイス2 姻族関係終了届を提出しても代襲相続はできる
今回の相談者様が心配されている義両親に相続が発生した場合についてですが、亡きご主人の代わりにお嬢様が相続することになります。この事を代襲相続と言います。亡きご主人の弟様と対等な関係になりますので、ご安心ください。
*代襲相続とは、被相続人が亡くなるよりも前に相続人が他界している場合にその子供が相続することです。
また、例え相談者様が「姻族関係終了届」を提出されたとしても、お嬢様が相続人であることに変わりはありません。
その理由は、お嬢様と義両親は血族ですので、血縁関係は断ち切ることができないからです。
ここで、気を付けて頂きたいのは、相談者様は「姻族関係終了届」を提出することで、義両親の介護の不安をなくすことができ、同居を解消しやすくなりますが、お嬢様には、それらの選択肢はないということです。
お嬢様に「相続できる」という権利があれば、「義両親の扶養」という義務もあるのです。しかしそれらは相談者様お一人が考える必要はないのです。
アドバイス3 今後親族トラブルにならないよう慎重に検討
~玉野行政書士事務所にご相談に来られた場合の対応~
この「姻族関係終了届」は、一度提出してしまうと取り消すことはできません。すなわち、一時の感情で提出すると、後の親族トラブルを招く危険があるということです。
今回の相談者様は、ご主人が急死されるまで、義両親と同居されています。そして、その関係は、ご主人が亡くなって半年も続いています。
今、相談者様が抱えている義両親の介護の不安や将来の相続の事、亡きご主人の弟様との相続トラブルについて、「話合いの場」が必要なのではないでしょうか。
きっと、相談者様はいろいろとお悩みかと思います。
- 義両親に将来の介護のことを言いづらい
- 相続、持ち家は誰が相続するか言いづらい
- 仏壇やお墓は、将来どのようにしていこう
- 亡き夫の弟は、自身の両親の介護や相続のことをどのように考えているのだろう
- 義両親は、相談者様の今後の人生をどのように考えてくれているのだろう
- 娘は、これまで通り義両親との同居の生活を望んでいるのだろうか
- 相談者様自身、今後どのような人生を歩んでいこう
これらを、義両親や弟家族、そしてお嬢様、相談者様、皆で話し合う事をおすすめします。もちろん、必要であれば私も同席もさせて頂きます。
「姻族関係終了届」を提出する覚悟があるのであれば、「家族会議」を開く覚悟をもって欲しいと、私は思っています。
相続(終活)を専門としている私としては、書面の手続きだけではなく、感情の手続きもサポートすることができる専門家でありたいと思っております。
そして、相続(終活)を専門にしておられる士業の先生方は皆、私と同じ想いを持っておられると日々業務の中で感じております。
「今」できる事を家族で話し合って欲しいと・・・。
その想いを書面に記すことが、私共士業の使命であると日々精進しているのです。
「そうだ!行政書士の玉野さん相談しよう。」
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この記事を書いた人
〈行政書士、宅地建物取引士、相続診断士〉
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